じじぃの「科学・芸術_393_インスリン」

インスリン自己注射の使い方 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Ou4W6luV7zc
血糖値を下げたい人へ 効果最速の秘策SP : 「ためしてガッテン 2010年12月8日 NHK
12月8日のためしてガッテンでは糖尿病の新薬「インクレチン関連薬」の開発のきっかけとなった爬虫類について紹介していました。その爬虫類とは、アメリカのアリゾナ州の砂漠にすむ「アメリカドクトカゲ」です。名前の通り毒を持っていますが、インクレチン関連薬にはその毒は関係ありません。関係があるのは、アメリカドクトカゲの血糖値を一定に保つ身体の機能です。

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ジェネリック それは新薬と同じなのか』 ジェレミー・A・グリーン/著、野中香方子/訳 みすず書房 2017年発行
類似性の危機 より
20世紀半ばの低分子医薬品と違って、1980年代から90年代にかけて続々と登場したバイオテクノロジー企業が生み出した数多くの革新的な医薬品は、桁違いに分子量が多く複雑で、値段も高かった。相当する低分子の薬より、平均で22倍も高いのだ。インターフェロン、遺伝子組み換えヒート・インスリン、ヒト成長因子、エポエチン、コロニー特異的骨髄刺激薬、TNF-α遮断薬、単クローン性抗体、その他、遺伝子組み換え技術がもたらした薬の特許が、21世紀の最初の10年間に失効するので、目端の利く企業は、ジェネリック製造の新たなフロンティアが開けると期待した。しかし、高分子医薬品のコピーは、ジェネリック・バイオテクノロジーを志向する企業に新たな課題をもたらした。低分子医薬品と違って、これら高分子医薬品は、原子レベルでの解明や複製が不可能なのだ。低分子医薬品と違って、タンパク質の2つのバージョンを分子レベルで同一だと証明する方法はないのである。ジェネリック・バイオテクノロジーは、類似性の新たな危機を招こうとしている。
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インスリンの歴史は、高分子薬のコピーに伴う幅広い問題をよく示している。インスリンが最初に特許を得たのは1921年のことだったが、それから1世紀近くたった今でも、市場でインスリンジェネリックを見ることはほとんどない。これは一部には、インスリンの特許の歴史が特殊であることによる。それは、学術機関に与えられた最初の医薬品特許の1つだった。1920年代初期から41年まで北米で市販されたインスリンは、その特許保持者であるトロント大学によって1生産単位ごとに検査され、承認された。インスリンの特許がきわめて異例なのは、特許が失効するとトロント大学によるこうした管理がなされなくなり、公衆衛生に悪影響が出るのではないかと心配した米国議会が、1941年にインスリン改正法を成立させたことによる。その改正法は、米国薬局方協会に(インスリンの特許保持者であるイーライリリー社と共同して)インスリンの品質を管理する方法の開発を求める一方で、全インスリン製品を生産単位ごとに検査し、同一性、効力、品質、純度を保障する義務をFDAに課した。これらがインスリンを摸倣しようとする企業の市場参入を阻む障壁になり、1950年代には生物学的規準部門が設立され、障壁はさらに補強された。
インスリンを摸倣しようとするものは、治療薬としてのインスリンを取り囲む特許や規制の網の変化にも悩まされた。これらの法的保護措置は、分子レベルでそれが何からできているかということだけでなく、それがどのように作られるかということにも焦点を当てた。特許保持者であるイーライリリー社は、遅効型インスリン、速効型インスリン、中間型インスリンNPH)、レンテ、ウルトラレンテ形態、デポー製剤に基づく形態というように、インスリンが運ばれる形式に、早くから革新を加えた。インスリンがコピーしにくい薬になったのは、それが高分子であるだけでなく、時間の経過に応じて生じる網目状の構造をしているからなのだ。