じじぃの「科学・芸術_384_ヒトの秘密・性と出会いのメカニズム」

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” 第4回「性と出会いのメカニズム」 動画 Dailymotion
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コクホウジャク (Long-Tailed Widowbird)

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密 「4 性と出会いのメカニズム」 2018年1月26日 NHK Eテレ
第4回は性と出会いのメカニズムについて。
ヒトや動物は、異性と出会い、引きつける技能をどのように進化させたのか。また、より多くの子孫を残そうとして、選び取ってきたその仕組みは、ヒトと動物でどのように違うのか。ダイアモンド博士が、私たち人間の命をつないできた神秘のからくりを解き明かす。
ダーウィンは「自然淘汰」では説明が難しい特殊な例に対して、「性淘汰」という概念を考えました。
この性淘汰とはどんな進化なのでしょう。
性淘汰とは、異性の体の形や行動にひかれてパートナーとなり、子孫を残すうちにその形や行動が定着する進化です。
クジャクのオスは天敵に捕まってしまう可能性が高いにもかかわらず、大きな飾り羽が生き残っています。
性淘汰ではどのような特徴が好まれるのでしょうか。
1つ目は自然淘汰で有利な特徴が性淘汰でも好まれるという説。
自然界で生き残る能力が異性をひきつけます。
2つ目は性淘汰で好まれる特徴は自然淘汰と全く関係がないとする説です。
生き残る能力と関係ない特徴が異性をひきつけ遺伝して残っていくこともあります。
さらに、「ハンディキャップ理論」という説があります。
自然淘汰にとっては不利な特徴が、逆に性淘汰で好まれ広まっていくという考え方です。
クジャクの羽はこの説に当てはまります。
あんな羽を持っていたらすぐにトラに見つかってしまいますから、生き残るのに有利なことなど一つもありません。
コクホウジャクは、南アフリカに住む全長15cmほどの鳥です。
繁殖期にオスの尾が長く伸びることで知られています。
それでも長い尾が遺伝するのは生存には不利でも、その魅力でメスと出会い繁殖する力が勝っているためです。
クジャクは羽で、コクホウジャクは長い尾でメスをひきつけて繁殖に成功しています。
https://hh.pid.nhk.or.jp/pidh07/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20180126-31-13517
『若い読者のための第3のチンパンジー ジャレド・ダイアモンド/著、秋山勝/訳 草思社文庫 2017年発行
種の起源 より
人間の容貌は地理によって異なり、地理によって人種ごとの変化を生み出している。わけのわからない植物や動物について、科学者は高度で専門的などんな疑問についても答えてきた。それなら、私たち人間に関するもっとも明らかな疑問のひとつについても、その答えはすでに解明されているよ思われるかもしれない。その疑問とは、「どうして地域が異なれば、人の外見も違ってくるのか」というものだ。集団によって人間がどうやって外見上の違いを示すようになったのか、それに関して理解していかなければ、人間はどのようにしてほかの動物と違う者になったのかという理解も不完全なものになってしまう。
しかし、人種というテーマは扱いがなかなか難しい。イギリスの科学者チャールズ・ダーウインは、1859年に刊行した『種に起源』のなかで、このテーマについて触れるのを避けてきた。『種に起源』は現代生物学の基礎をなす考えをはじめて世の中に紹介した本である。今日においてさえ、人種の起源に関する研究を進んでやろうとする研究者がほとんどいないのは、このテーマに興味を示したというだけで、人種差別主義者だと後ろ指を指されてしまうのをおそれているからである。
そして、人種の多様性の意味について理解をはばむもうひとつの別の理由が存在している。それはこの問題が予想以上に難問であるからだ。ダーウインの説は、人種の起源は性をめぐる選択、つまり、人間がどのような配偶者を選んだのかを起源とするものだった。この理論は現在でも論争が続いている。現代の生物学者は、人種の起源は別の過程、つまり自然淘汰と呼ばれる過程を経てきたと普通は唱えている。しかし、人種の多様性として、一例をあげるなら、たとえば熱帯地方では、自然淘汰によってなぜ皮膚の色が黒くなるのか、それについては生物学者のあいだでさえ意見は一致していない。
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クジャクの雄の長い尾羽、雄ライオンのもじゃもじゃと生えた黒いたてがみなど、動物の多くが生存上、明らかに価値がない形質を備えていることにダーウインは気づいていた。しかし、こうした形質によって異性を引きつけたり、ライバルを威嚇したりできるので、交配する相手をえることにひと役買っている。その点では、クジャクとライオンの雄はとりわけ成功しているので、ほかの雄よりもたくさんの子どもを残していける。遺伝子は子どもに受け継がれ、こうした遺伝子は集団全体に広がっていくが、それは性淘汰、あるいは選択交配のためであって、自然淘汰のせいではない。雌の形質についても同じことが当てはまるだろう。
性淘汰が働くには、進化によって2つの進化が同時に起こる必要がある。一方の性が形質を進化させ、もう一方の性はその進化を好むように変わっていかなくてはならないのだ。雄のクジャクがあでやかに尾羽を広げても、雌がそれにそっぽを向き、雄を追い払ってしまうようなら、雄も羽を広げることをやめてしまうかもしれない。一方の性がある形質を得て、他方の性がそれを好むかぎり、そして、生存していくうえでその形質が過度の負担にならないようであれば、性淘汰によってそのような形質が現れてくるのだ。
肌の色に見られるヒトの多様性も、地域によって違ってくる性的なえり好みの結果現れてきたのではないだろうか。この問いにダーウインは「イエス」だと信じていた。世界では住む地域が異なれば美の基準も変わり、慣れ親しんだものを基準に美しさを決めてきたとダーウインは指摘している。