じじぃの「科学・芸術_319_スニップ(SNP)」

Single nucleotide polymorphism SNP 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=DE9b1dxy_pE
Beak Shape Among Finch Species

現代人の進化 2011年2月号 日経サイエンス
数千年前,人類が初めて海抜およそ4300mのチベット高原に移住したとき,高地の酸素の薄さが開拓者の身体に大きな負担をかけた。高山病が慢性化し,乳児の死亡率も高くなっただろう。
2010年初めに発表された一連の遺伝学的研究で,チベット族では一般的だが他集団ではまれな遺伝子変異が見つかった。赤血球生産を調節しているこの変異のおかげで,チベット族は酸素の薄い土地に適応できたのだろう。この発見は,私たち人類がおそらくかなり多くの生物学的適応を同じように果たしてきたという考えを支持するようにみえた。
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/1102/201102_068.html
『DNAの98%は謎 生命の鍵を握る「非コードDNA」とは何か』 小林武彦/著 ブルーバックス 2017年発行
個性を作るSNP(スニップ) より
19世紀に地質学者であったチャールズ・ダーウインは、測量船ビーグル号に乗り世界中を航海しました。帰国後、自身で見た生物や集めた標本の研究により、1859年に著書『種の起源』を出版し、その中で進化論を提唱しました。それまでは、ヒトを含む地球上の生物はすべて「神」の創造物であるという世界観が一般的だった時代なので、この説は革命的な影響を社会にもたらしました。
ダーウインの進化論を簡単に言うと、まず、それぞれの生物はいきなり現れたわけではなく、進化してできたということです。たとえば、サルとヒトは共通の祖先から進化したということになります。次にその原理としては、元々種内に存在する多様な個体の中で、その環境により適した個体がより多くの子孫を残し、その性質を持った個体がその種のメインになるというものです。専門用語を使うと、「変異」による個体間の「多様性」が、「適者生存の原理」により「自然淘汰」されて「進化」が起こる、ということになります。
たとえば、ダーウインの有名な観察のひとつに、ガラパゴス諸島に生息するフィンチという小鳥のくちばしの形の違いがあります(図.画像参照)。くちばしの形が生息する島の環境ごとに異なり、餌を食べるのに最適化した結果なのではないかと考えられました。
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まずは変異についてお話ししましょう。変異の多くはスニップ(SNP、Single Nucleotide Polymorphism 一塩基多型)と呼ばれる塩基配列の変化で、塩基対の置換、挿入、欠失などが起きています。DNAをよく見ると、同種でもごくわずかですが個体ごとに塩基配列が異なっているのです。たとえばヒトの場合、こうしたスニップはすでに数百万個見つかっており、血液型、肌の色、体型、体質などもろもろの形質に影響を与えています。
ヒトのゲノムは約30億塩基対からなるので、個人間での違いは、血縁関係がなければざっくり言って0.1%程度ということになります。これが多様性(ヒトの場合には個性といってもいいかもしれませんが)を作っています。遺伝子検査と言われる、体質などを調べる民間のサービスも、このスニップを利用しています。ただ、スニップが確定的になる体質はまだ少なく、他のスニップとの組み合わせの影響もよく分かっていません。そうした情報にはあまり翻弄されないように、しっかりとした知識が必要です。今後情報量が増えれば精度は上がると考えられます。