じじぃの「科学・芸術_348_日本のタブー・人工透析」

科学医療フロンティア (13)腎不全と透析治療 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=HALTnyaU4Ug
血液透析の様子 (astellas.com HPより)

〈記者の眼〉 負担が大きい人工透析 2012年9月4日 つなごう医療 中日メディカルサイト
人口10万人当たりの人工透析患者の数で日本は断トツの世界一。230人を超え、2位の米国のほぼ2倍だ。透析とは、血液を人工的にろ過して老廃物を排せつする療法。腎臓の機能が低下した腎不全患者の命綱ともいえる。それにしても、なぜこれほどまでに多いのか。
保存療法は、食事療法と薬品による治療が2本柱。徹底した患者の個別指導が必要で、時間も手間暇もかかり医療機関の負担は大きい。
だが、医療機関の患者1人当たりの年間収入は、保存療法では60万円程度。約500万円の透析と比べて、はるかに少ない。患者負担も、保存療法では3割程度が自己負担だが、透析では身体障害者福祉法の対象となり「ゼロ」。設備投資が必要とはいえ、透析は完成度の高い治療法で、医療機関は「保存療法で苦労するより、透析の方がいい」と判断しがちだ。
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20120905150115679
『言ってはならない 日本のタブー100』 西岡研介, 森功, 伊藤博敏, 鈴木智彦ほか 宝島社 2017年発行
日本のタブー 人工透析 【執筆者】窪田順生 より
フリーアナウンサーの長谷川豊氏が自身のブログに、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ! 無理だと泣くならそのまま殺せ! 今のシステムは日本を滅ぼすだけだ!!」と記載したことで、注目を集めた人工透析。長谷川氏には批判が殺到し、その後に謝罪に追い込まれたので、「暴論」という扱いになっているが、人工透析国民皆保険制度を崩壊に追い込むという点では本質を突いている。
透析患者の年間医療費は1人あたり約500万円。透析患者は33万人いるので、総費用は1兆6500万円。国の医療費は約4兆円なので、全国民の0.2%にあたる人々が全医療費の4%を使っている計算だ。
しかも、透析患者は毎年1万人ずつ増えており、人口10万人あたりの患者数も、増加するスピードも世界一。今のペースなら確実に日本の医療費は破たんする。もちろん、医療費を破たんさせる高額医療はほかにもあるが、それらと人工透析が根本的に異なるのは、これが「治療」ではなく、その患者が死ぬまで継続される「生命維持装置」に等しいからだ。
なぜそのような本質的な問題提起がなされないのかというと、そこに巨大利権があるからだ。日本が世界で人工透析患者が最も多いことを、長谷川氏は不摂生で自己管理ができない人が多いと指摘して批判を受けたが、実はそうではなく、安易に透析をすすめる医師側にこそ問題がある。
一般的な医師の診断基準では、腎機能が健康時から60%まで低下すると腎不全と診断され、7%まで落ちると透析が必要とされるのだが、このマイナス53%のプロセスを”眺めているだけ”の医師があまりにも多いのだ。人工透析覚せい剤と同じで、一度手を出すと二度とやめることはできない。
そのため、世界的には人工透析は最後の手段で、その状態になるまでに、食事療法や血圧管理などで腎機能を維持する「保存療法」を提案するのが一般的だ。だが、日本には「保存療法」を受けられる医療期間はわずか十数ヵ所しかない。なぜかというと、儲からないからだ。