じじぃの「科学・芸術_345_日本のタブー・寝たきり老人」

初めての胃ろう Q&A (1) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=hd-rLViM3Og
日野原重明さん死去】延命治療拒否…「望ましい人生の終え方を実践した」 聖路加・福井院長会見 2017.7.18 産経ニュース
「望ましい生き方と人生の終え方を提言した日野原先生が、それを実践した生を終えられた」。日野原重明さん(105)が名誉院長だった聖路加国際病院(東京都中央区)の福井次矢(つぐや)院長(66)は18日午後、記者会見で感慨深げにそう語った。
福井院長によると、日野原氏は3月下旬に消化機能の衰えにより食べることが難しくなったが、体に管を入れて栄養を取る経管栄養や胃ろうなどの延命治療を「やらない」と拒否。数日後に退院し、自宅で福井院長らの診察を受けながら療養していた。17日夜、福井院長が訪ねた際に「つらいところはありませんか」と聞くと、顔を左右に振って応えた。18日朝は次男夫婦ら家族が見守る中、徐々に呼吸機能が低下していったという。
http://www.sankei.com/life/news/170718/lif1707180050-n1.html
『言ってはならない 日本のタブー100』 西岡研介, 森功, 伊藤博敏, 鈴木智彦ほか 宝島社 2017年発行
日本のタブー 寝たきり老人 【執筆者】窪田順生 より
日本の終末期医療における最大のタブーのひとつが「鎮静」である。日本では、精神的にも肉体的にも苦痛から解放されるための「尊厳死」や「安楽死」が認められておらず、その是非の議論も、はばかれるような雰囲気がある。
しかし、その一方で痛みの激しい末期がん患者などに鎮静薬を投与することで、徐々に眠らせるようにして終末を迎えさせるという、いわゆる「終末期鎮静」が医療現場ではかなり普及している。即効性があるかないかの違いだけで、現象からすれば禁じられている「安楽死」とほぼ同じ対応が、医療現場では当たり前のように行われているのだ。
だが、そのように様々な「歪み」のある終末期医療のなかでも、もっともタブー視されているのが、「寝たきり老人」だろう。
自分でものを食べることができなくなった患者には、腹壁を切開して胃内に管を通してそこから直接、栄養分や水分、そして医薬品を流しこむ「胃瘻(いろう)」という処置が行われる。これは病院だけではなく、高齢者施設などでも求められており、入居時には「胃瘻」の処置を条件としている場合も少なくない。
こうした処置を施された患者や高齢者らが「寝たきり」となって終末期医療を受けるわけだが、実はこのパターンは世界的な観点から見れば、決して一般的ではないのだ。
アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなど先進国の多くは、患者も高齢者も、「リビングウイル」(終末期に受ける医療について希望を書いた書類)という自らの意思を表明するのが常識であり、本人や家族にも大きな負担と苦しみを生み出しやすい「胃瘻」や、人工呼吸器などの延命措置を選ぶケースは少ない。
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1999年度の「厚生白書」によると、寝たきり老人の数は93年の90万人から2000年には120万人に増加しており、15年には200万人、25年には230万人に達すると予想されている、このような深刻な事態にもかかわらず、なぜか「寝たきり老人」に対する包括的な調査は行なわれていない。まるで、世界的にも「異常」で強引な延命措置を、あえて無視しているようにも見える。
終末期を迎えたら「胃瘻」や「鎮静」という処置漬けにされる日本では、「自然に死ぬかことができない」ことが実は一番のタブーなのだ。