じじぃの「科学・芸術_325_インド・カーストと織工集団」

www.le4esll.com - indian weavers poem by Sarojini Naidu 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=3EqtkrurWfE
Indian Weaver

Varanasi, India, Indian Weaver At Work Shutterstock
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英国の植民地支配はインド織物産業を崩壊させたのか 2014/08/26 pracya
インドではカースト制度の影響で、消費者の階層によって着る衣料品が異なり、一口にインド織物と言っても階層によって選ばれるものは品質・デザインは異なります。
実際、イギリスから輸入されてきた綿織物の多くは高級品に類するものであり、競合していたインド産織物は、都市部の中上流階層の男性が着ていた細布のドーティ(腰布)であり、農村地域に住んでいた多くの品高階級は太糸を利用したインド産の粗布を使っていたのです。
http://pracya.info/history/colony-influence.html
カーストから現代インドを知るための30章』 金基淑/編著 赤石書店 2012年発行
南インドの伝統的な織工カースト より
アバター」すなわち「化身」という英単語は、2009年に公開された3D映画で一躍有名になったとはいえ、日本ではあまりなじみがないかもしれない。しかし、「化身」という言葉は、インドの人びとにはとても身近で親しみのある言葉である。なぜなら、ヒンドゥー教の神々は、さまざまな姿に化身して現れるからである。シヴァ神が乞食や女性の姿をとって現れる物語は、神話としてだけでなく、各地の寺院にまつわる物語としても数多く語られている。インドでは、仏陀もまたヴィシュヌ神の化身と考えられている。アバターという言葉が喚起するイメージは、女神としてのバービー(着せ替え)である。バービーが着ている民族衣装、とりわけその代表であるサリーは、まさにインドそのものを象徴する女神のドレスなのである。
美しいシルク・サリーをつくるパドマ・サーリヤルは、サーリと総称される職工の一グループである。タミルナードゥ州でよく知られている職工カーストは、パドマ・サーリヤル、サウラーシュトラ、デーヴァンガ、カイコーラルの4つである。サウラーシュトラはグジャラートを故地として、サウラーシュトラ語を母語とする。パドマ・サーリヤルとデーヴァンガは、アーンドラブエアデーシュを故地とし、テルグ語母語とする。カイコーラルはタミルナードゥの地付きの織工で、タミル語母語とする。サウラーシュトラとパドマ・サーリヤルは絹織工、デーヴァンガとカイコーラルはおもに絹織物を織っている。織工のなかにこうしたカースト分業があるのは、素材によって織りの技術も織機の種類も違うからである。また、織工のなかに故地や母語が違うさまざまなカーストがいるのは、インドの織工が王権と深く結びついてきた歴史があるからである。
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パドマ・サーリヤルをはじめとする南インドの織工たちは、伝統的に、地面を掘り下げ腰掛けた状態で踏み木を踏んで綜絖(そうこう)を上下させるピット・ルーム形式の水平織機を使ってきた。絹糸は乾燥すると切れやすいが、織機の位置を地面に近づけることによって、糸の乾燥を防ぐことができる。20世紀に入ると飛び杼(ひ)が普及し、織り速度が増して生産が向上した。最近は、椅子に腰かけて織る高機も増えている。織機は本来1台1台、織工の体に合わせてつくられる。織機は織工の身体の延長なのである。
パドマ・サーリヤルのカースト・コミュニティーの調査研究を行ったアールティ・カウルラは、彼らが織機を身体になぞらえていると報告している。たとえば、織機の手前の布巻はタライ(頭)である。布巻の両側を支える支持具はカーットゥ(耳)、杼口はヴァーイ(口)、筬(おさ)はパッル(歯)、綜絖はマーブ(胸)、千切りははイドゥップー(尻)、千切りを固定する紐はカール(足)である。織工たちは、「Thai pola pillai, Nulai pola selai (母は子どもを育て、糸はサリーを育てる)」という、緯糸(よこいと)は食物で、入ってきた緯糸経糸(たていと)が消化していく。パドマ・サーリヤルにとって布を織るということは、織機の身体に糸という食物を与えて命を吹き込んでいくことなのである。こうした布との親密な関係は、パドマ・サーリヤル・カースト出身の布商人にも継承されていくようである。彼らは、ただ布を取引するのではなく、染織技術について深い知識をもち、自分たちが扱うシルク・サリーの品質に強い誇りをもっている。