じじぃの「科学・芸術_299_世界を変えた10冊の本・『資本論』」

「聞け万国の労働者(メーデー歌)」 動画 Youtube
https://www.youtube.com/watch?v=F0d8G35La-I
習近平毛沢東

中国国有企業、止まらぬ巨大化 習氏主導で合併相次ぐ  2017/8/25 日本経済新聞
 中国で国有企業の合併が相次いでいる。仕掛ける共産党が掲げるスローガンは「より強く、より優れ、より大きく」。世界で戦える巨大な国有企業をつくる構想は、権力集中を進める習近平総書記(国家主席)の政権戦略と密接に絡む。
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO20369260V20C17A8SHA000/
『世界を変えた10冊の本』 池上彰/著 文藝春秋 2011年発行
資本論 1867年 カール・マルクス より
マルクスの理論は、「労働価値説」と呼ばれます。人間の労働が、あらゆる富の源泉であるという考え方です。簡単に内容をまとめると、次のようになります。
資本家は、労働者を雇って働かせることで新しい価値を生み出す。価値は蓄積されて資本となり、資本の奴隷になった資本家は、利益を上げるために無秩序な競争に突入して、恐慌を引き起こす。貧富の格差が拡大し、困窮した労働者は団結して、革命を起こし、資本主義を転覆させる。
労働者を団結させ、共産主義革命を起こすのが共産党の任務ですが、『資本論』自体は、革命について論じているわけではありません。あくまで資本主義の原理を解き明かす経済学の本なのです。
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資本主義が発展すると、過剰労働人口も増大します。マルクスは、この人たちを「産業予備軍」と呼んでいます。
  産業予備軍の相対的大きさは、富の力とともに拡大する。(中洛)労働者階級の最下層と産業予備軍が大きくなればなるほど、公認の救護貧民もまた増大する。これが資本主義的蓄積の絶対的一般的な法則である。(中洛)一方の極における富の蓄積は、同時にその対極、すなわち自分自身の生産物を資本として生産する階級の側における窮乏、労働苦、奴隷状態、無知、残忍化と道徳的退廃の蓄積である。
ここでいう「公認の救護貧民」とは、いまでいう生活保護を受けている人たちです。生活苦から犯罪に走ったり、無差別殺人をしてしまったり。「残忍化と道徳的退廃の蓄積」になるのです。この文章を読んで、リーマン・ショック後に一段と進んだ格差社会を思い出した人もいることでしょう。
資本主義の矛盾は、やがて労働者の抵抗を引き起こし、革命に発展します。この過程を、マルクスは文学的に表現します。
  少数の資本家による多数の資本家の財産収奪と並行して、労働プロセスにおける協同作業の形態が、たえず進んだ段階へと発展していく。(中洛)巨大資本家は、こうしてその数を減らしながら、この変容過程がもたらすいっさいの利益を奪い去り、独占していくのだが、それとともに巨大な貧困が、抑圧が、そして隷従と堕落と搾取がはげしくなる。だがまた、資本制的生産過程のメカニズムを通じて訓練され、統合され、組織化され、増加する一方の労働者階級の憤激も激しくなる。(中略)資本制的私的所有の終わりを告げる鐘が鳴る。収奪者たちの私有財産が剥奪される。
これぞまさに、キリスト教的な「最後の審判」です。資本主義が発展すると、大規模な工場が作られ、労働者たちは、組織的な行動を通じて鍛えられ、団結し、資本かを打倒するだけの能力が鍛えられていく、というわけです。
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私有財産がいけないとして、農民から土地や農機具を取り上げて共同所有にしたところ、農民たちの労働意欲は減退し、慢性的な食料不足に悩まされます。
資本家の復活を阻むためとして、言論の自由は抑圧されました。ロシア革命で誕生したソ連ソビエト社会主義共和国連邦)も、東欧諸国も、毛沢東時代の中国も、悲惨な経済状態に苦しめられました。
結局、ソ連は崩壊。資本主義のロシアに生まれ変わりました。中国も、改革開放政策により、まるで資本主義そのものの社会が誕生しています。
マルクス主義理論によれば、封建社会から資本主義社会を経て社会主義に到達するはずだったのですが、実際には、封建社会から社会主義を経由して資本主義に至ったのです。