じじぃの「科学・芸術_283_小説『ドラキュラ』」

神の血 God's blood 予告編(バンパイア映画) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=NDDLPrtD3KA
Dracula Theme

『いっしょにいると疲れる人―「くされ縁」の人間関係の研究』 バーバラ・E. ホルト/著、鏡リュウジ/訳  講談社 2001年発行
カリスマ的ヴァンパイアはどこにでもいる より
もちろん、世の中には、ヴァンパイアとは無縁なまま、超人的な才能を発揮する人間も存在する。しかし、いかに超人的な人間であっても、ヴァンパイアの元型が働かないまま、長期にわたって超人的なパワーを発揮しつづけるのは非常に難しい。カリスマ的な人間は生命力の消費も激しいのだ。失われた生命力を取り戻すには、心にひそむヴァンパイアを活性化させるのが最も手っ取り早い。
犠牲者の側にも問題を悪化させている部分がある。というのは、私たちは往々にしてヴァンパイアに理解を示したり、場合によっては崇拝してしまったりするからだ。私たちはドラキュラ公爵レクター博士のようなヴァンパイアを崇拝し、みずから言い寄って、その超人的なパワーの恩恵にあずかろうとするのである。
興味深いのは、ヴァンパイアを崇拝し、その恩恵をあずかろうとする犠牲者自身も、相当な能力の持ち主である場合が多いことだ。人並み以上の能力を持つ人間にしてみれば、超人的な能力をもつヴァンパイアこそ、自分に釣り合う人物に思えるかもしれない。

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『世界文学大図鑑』 ジェイムズ・キャントンほか/著、沼野充義/監修 三省堂 2017年発行
古かろうと新しかろうと、目を向けてはいけないものがある 『ドラキュラ』(1897年)ブラム・ストーカー より
古城や荒涼とした風景を背景に超自然や怪奇的な題材を描くことが、18世紀後半から19世紀初頭にかけて流行したゴシック小説の特徴だった。その後に登場した怪奇小説では、恐怖の舞台が都市部へと移り、道徳観の低下など、当時の社会に漂う不安を掻き立てる内容へと変わっていった。
アイルランドの小説家アブラハム(ブラム)・ストーカー(1847年〜1912年)作の『ドラキュラ』は、読者をヴィクトリア朝のロンドンのただなかへと誘う。そこでは、異国からきたヴァンパイアの伯爵が中産階級の社会を脅かしている。周囲にはほぼ気づかれることなく生きてきた伯爵は、犠牲となる物を思うままに選んでいく。
『ドラキュラ』は東西の対決を表した物語である。伯爵は東欧(トランシルヴァニア)からやってきて、イギリスの東岸におり立ち、ロンドン東部のパーフリートに住みつく。当時のヴィクトリアの読者がこうした描写で想起するのは、外国人や暴力や犯罪である。
この時代に最新であったもの――ガス灯、科学、技術、警官など――は、古の侵略者を前にまったくの無力である。ドラキュラ伯爵の不死の呪いがひろがることを人々が恐れたように、伝染病や性の表出や堕落が都市生活の汚点と見なされ、同時に特徴となっていった。