じじぃの「科学・芸術_83_無知の発見(微生物)」

Simple Science - The Micro-Organisms Song 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9c0Ui9bv9Jk
微生物の発見

サピエンス全史(下) 文明の構造と人類の幸福 ユヴァル・ノア・ハラリ 2016 amazon
なぜ我々はこのような世界に生きているのか?
ホモ・サピエンスの歴史を俯瞰することで、現代世界を鋭く抉る世界的ベストセラー!
「歴史と現代世界の最大の問題に取り組んだ書」 ──ジャレド・ダイアモンド
第12章 宗教という超人間的秩序
神々の台頭と人類の地位/偶像崇拝の恩恵/神は一つ/善と悪の戦い/自然の法則/人間の崇拝
第13章 歴史の必然と謎めいた選択
1 後知恵の誤謬/2 盲目のクレイオ
第4部 科学革命
第14章 無知の発見と近代科学の成立
無知な人/科学界の教義/知は力/進歩の理想/ギルガメシュ・プロジェクト/
科学を気前良く援助する人々

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『サピエンス全史(下) 文明の構造と人類の幸福』 ユヴァル・ノア・ハラリ/著、柴田裕之/翻訳 河出書房新社 2016年発行
無知の発見と近代科学の成立 (一部抜粋しています)
16世紀になるまでは、地球を一周した人間は一人もいなかった。だが、1522年、マゼランの遠征艦隊が7万2000キロメートルの旅を終えてスペインに帰り着いたとき、歴史は変わった。この旅には3年かかり、マゼランを含め、ほぼ全員が命を落とした。1873年ジュール・ヴェルヌは、裕福なイギリスの冒険家ファリアス・フォッグが80日間で世界を一周しうるかもしれないと想像できた。今日では、中産階級ほどの収入のある人なら誰もが、わずか48時間で安全かつ手軽に地球を一周できる。
1500年には人類は地表に閉じ込められていた。塔を建てたり、山に登ったりすることはできたが、空や鳥や天使や神々の領域だった。1969年7月10日、人類は月に降り立った。これは歴史的偉業であるばかりでなく、進化上の偉業、さらには宇宙の偉業でさえあった。それ以前の40億年という進化の歴史で、地球の大気圏すら脱しえた生き物はなかった。まして、月面に足跡(あるいは触手の跡)を残したものなど皆無だった。
歴史の大半を通じて、人類は地上の生き物のおよそ99.9パーセント、すなわち微生物について何も知らなかった。それは、微生物が私たちと未関係だったからではない。私たちの一人ひとりが何十憶という単細胞生物を体内や体表に抱えており、それもたんにただ乗りさせているわけではない。彼らは私たちの最高の友であり、また最も致命的な敵でもある。私たちが食べた物を消化し、消化管を掃除してくれる微生物もいれば、病気や感染症を引き起こすものもいる。それにもかかわらず、人間の目が初めて微生物を捉えたのは、ようやく1674年になってからだった。この年、アントーニ・ファン・レーウェンフックが手製の顕微鏡を覗き、水滴の中に、ごく小さな生き物たちが動き回る世界をまるごと一つ発見して肝を潰した。その後の300年間に、人類は膨大な数の微小な種を知るようになった。微生物が引き起こすとりわけ危険な致命的感染症のほとんどをなんとか克服するとともに、微生物を利用して医学や産業に役立ててきた。今日、私たちは細菌に手を加えて医薬品を生み出したり、生物(バイオ)燃料を製造したり、寄生体を殺したりする。