じじぃの「科学・芸術_261_小説『ドリアン・グレイの肖像』」

Top 10 Notes: The Picture of Dorian Gray 動画 Youtube
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ドリアン・グレイの肖像 感想 オスカー ワイルド 読書メーター
その美貌ゆえに破滅的な人生行路を辿るドリアンの悲劇は、シニシズムの典型だろうか。画家バジルを魅了した美貌は、芸術至上主義的官能でさほど罪つくりだとは思えなかったが、ハリーによる享楽的、官能的幸福感への誘いと陶酔は自らの傲慢を過剰に刺激したのだろうか。
思えば序盤のシビル・ヴェインとの恋が演技ゆえの興ざめだと裏返るプロットに、既に悪魔的な展開が内包されていたのだと知ります。芸術や恋、自意識について多くの問題性を提起した、恐ろしい名作です。
三島由紀夫の「禁色」に似ている…かも。男色や滅びの美学に通じる。
https://bookmeter.com/books/564804
『世界文学大図鑑』 ジェイムズ・キャントンほか/著、沼野充義/監修 三省堂 2017年発行
誘惑を捨て去る方法はただひとつ、誘惑に屈することだけだ 『ドリアン・グレイの肖像』(1891年) オスカー・ワイルド より
オスカー・ワイルドによる『ドリアン・グレイの肖像』で、主人公ドリアンを趣味人ヘンリー卿が放埓な生活へ導こうとしたとき、誘惑に身をまかせろと助言したが、そこに耽美主義の基本的な考え方が凝縮されている。耽美主義の運動は19世紀後半のヨーロッパ諸国、特にイギリスで進展し、社会的、政治的、人道的な価値よりも「芸術のための芸術」を重んじた。
美貌の青年ドリアンは耽美主義者が理想とする生活を送り、あらゆる種類の享楽にふける。放埓で堕落した生活にのめりこむほどに、家にある不思議な肖像画に彼の罪のおぞましさが秘められるようになり、絵のなかのドリアンが年老いて醜く変化するが、ドリアン自身は若く穢(けが)れのない肉体を保ちつづける。
この物語は、官能的な快楽だけを追い求める人生の信条や、芸術を楽しむうえでの心得を表した典型的な作品とされているが、ドリアンの過剰な生活は破滅的であるため、多数の犠牲者を出すことになる。この作品での耽美主義の描写は、芸術と道徳を切り離して考えるべきと暗示し、当時の世間の考えを批判している。ワイルだは中産階級の価値観が道徳を重んじすぎて芸術の発展を阻んでいると見なし、善悪を越えて官能や破滅の美を称揚することがこうした価値観の批判につながると考えていた。
表向きは栄華を誇るドリアンが、肖像画のなかではしだいに朽ちていくさまと重なるように、耽美主義という仮面に覆い隠されながら、衰退しつつある大英帝国中産階級の社会の秩序が失われていく。衰退を象徴するかのように、人々を誘惑するものが過剰にまでにはびこる。美は大きな力を与えてくれるが、代償は計り知れない。ドリアンが捧げた究極の犠牲は、みずからの魂だった。