じじぃの「科学・芸術_243_デンマーク人気質」

The Jante law 動画 Youtube
https://www.youtube.com/watch?v=lOxYS7TKFQk
デンマークの高齢者向け施設と「パロ」

『経済成長という呪い 欲望と進歩の人類史』 ダニエル・コーエン/著、林昌宏/訳 東洋経済新報社 2017年発行
どのようにすればデンマーク人のようになれるのか――ポスト工業社会への移行 より
今日でも、人々の社会的な暮らしは、世界中どこでも同じというわけではない。デンマークは、ポスト工場社会へうまく移行した例として、しばしば紹介される。国際的な調査によると、デンマークは世界で最も幸せな国の1つだという。デンマーク人に自身の幸福感を10点満点で評価してもらうと、彼らは平均して8点をつける。これは高得点だ。デンマークと並んで最も幸せな5ヵ国は、フィンランドノルウェー、オランダ、カナダ、そしてなんとコスタリカだ。最も不幸な5ヵ国は、トーゴベナン中央アフリカ共和国シエラレオネブルンジコモロだ。
幸福度の高低差を説明する要素は多すぎて選択に困るほどだ。たとえば、最も幸せな国は最も不幸な国に比べて、収入は40倍、平均寿命は28年も長く、親しい友人の数は2倍、自由と感じる割合は高く(94%対63%)、自国の政府の誠実さをあまり疑わない傾向にある(33%対85%)。

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ロボットが家庭に普及するには何が必要?セラピー用ロボ『パロ』開発者・柴田崇徳氏に聞く 2015/07/07 エンジニアtype
国内外の医療福祉の現場で活躍しているアザラシ型ロボット『パロ』は現在、世界30カ国以上の主に公的機関で約3500体が利用されており、導入が相次いでいる。
その努力の甲斐あって、デンマークでは約80%の地方自治体でパロが公的導入されているという。同国では、認知症ケアにおいて暴力・暴言、徘徊といった問題行動が低減することにより、年間30万円以上かかっていた抗精神病薬が不要(30万円が0円に)になり、介護者の介護負担も大幅に低減された。
パロには副作用がないので、めまいや徘徊による転倒のリスクも低減され、高齢者に喜ばれている。
http://type.jp/et/log/article/paro-shibata
デンマーク人のまっかなホント』 ヘレン・ディルビーその他/著、浅野百子/訳 マクミランランゲージハウス 2000年発行
高くのぼるサルほど尻がまる見えになる より
デンマーク人の寄るところ、必ずついてまわるのが集団への順応を強いるプレッシャーだ。仕事場でもスポーツクラブでも、ガス抜きをしているとおぼしき状況でも、プレッシャーの存在ははっきりと見て取ることができる。拍手するときでも、デンマーク人は全員が呼吸を合わせる。
「まわりの人間がやっているとおりにやる」という右へならえ意識を初めて言葉で表現したのはアクセル・サンデモーゼというデンマーク人だ。ユトランド半島に住んでいた彼は、地元の人間の画一的な振る舞いにうんざりして、とうとうノルウェーに引っ越してしまった。そこで彼は、とんでもない法律が支配する架空の町ヤンテの物語を書く。その法律は、ユトランド人の因習的行動様式をそのまま条文にしたような内容で、サンデモーゼの体験が下敷きになっている。
「ヤンテの掟」の神髄は、「出る杭は打たれる」である。掟は10項目からなり、「自分はいっぱしの人間だなどと思い上がってはならない」「人様より自分の方が上だなどとみずからを偽るべからず」「自分は人様になにかを教えることができるなどと考えてはならない」といった内容の文言が十戒のごとくずらりと並ぶ。
あまりにも自然に身についているので、たいていのデンマーク人はこの暗黙の掟を遠く中世にまでさかのぼる考え方だと思っている。実際に中世から続き手いるかどうかはともかく。この「目立つなかれ」の精神がデンマーク人の行動を無意識のうちに支配しているのはまちがいない。サンデモーゼはただそれを文章で表現した(1833年)にすぎない。彼が禁止条項という形で否定的に捉えていた「ヤンテの掟」は、いまでは、以前の「べからず」集に比べて、はるかに前向きなものに変わっている。ただし右にならえ精神はあいかわらず強い。新たなる世紀の新たなる「ヤンテの掟」は、さしずめこんなところだろう。
 1、すべての人間はひとかどの人物であると考えるべし。
 2、誰もがほかの誰もと同じだけ偉いと考えるべし。
 3、他人よりも賢くても、その分、人間として上等なことにはならない。
 4、誰もが自分と同じだけ善良であると考えるべし。
 5、誰もが知るに値する何かを知っていると考えるべし。
 6、すべての人間を自分と同等であると考えるべし。
 7、誰にでもそれぞれなにかしら得意なことがあると考えるべし。
 8、他人を笑うべからず。
 9、配慮するに値するという点において、すべての人間は同等であると考えるべし。
 10、誰からでも何事かを学べることができると考えるべし。
メディアが時折り、「ヤンテの掟はまだ健在?」といったテーマで特集を組む。多くのデンマーク人がノーと答えるが、彼らの振る舞いを見るかぎり、掟は健在どころかぴんぴん跳ね回っていることがはっきりわかる。

あなたたちのことまで構っていられないの より
高齢者は自立していて、思うように生きている。よぼよぼカード(ミムレコー)と呼ばれる高齢者バスのおかげで、公共交通機関や劇場、映画館、カルチャースクールなど、なんでも安く利用できるし、デイケアセンターやホームヘルプ・サービスも充実しているから、健康で気力さえあれば、高齢者人生も結構オツなものになる。
ところで、子供が病気で学校へいけないときなど、ちょっと面倒を見てくれるおばあちゃんがいたらワーキング・マザーは大助かりだ。いくつかの幼稚園が宣伝している「おばあちゃん作戦」はそういう発想からきている。この有料プログラムにわが子を登録しておけば、困ったときにやさしい老婦人がおばあちゃんの代役を引き受けてくれる。
年とってひとり暮らしが無理になってくると、おじいちゃんおばあちゃんはさったと高齢者専用ホームへ送り込まれる。住宅は原則として核家族を念頭に設計されているから同居はまず不可能だ。結婚・離婚を繰り返すたびに家族の顔ぶれが変わるなかで、義理の母親の2番目の夫とか、そのまた3番目の妻とかの面倒を見る責任がどこにあるというのだろうか。新しい配偶者の連れ子の枕カバーを、どれがどの子のものか覚えるだけでも大変なのに、その子たちのおじいちゃんおばあちゃんのことまで構っている余裕はないのだ。