じじぃの「人の生きざま_751_アモツ・ザハヴィ(進化生物学者)」

羽を広げたクジャク広島県安佐動物公園 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=FYQN5v6nGxc
ザハヴィ夫妻

アモツ・ザハヴィ ウィキペディアWikipedia) より
アモツ・ザハヴィ(英: Amotz Zahavi、1928年1月1日 - 2017年5月12日)は、イスラエルの進化生物学者
テルアビブ大学動物学部の名誉教授。イスラエル環境保護協会の創立者のひとり。専門はアラビアヤブチメドリの生態。
1970年にテルアビブ大学で博士号を取得した。彼の業績で最もよく知られるのは、動物が自分自身を危険にさらし、適応度を低下させるような振る舞い、特徴、機構の進化についての説明で、ハンディキャップ理論と呼ばれる(1975)。これは性選択に適用されていたがさらに発展して、動物の発する信号に関する理論の中心的な概念となっている。1980年、イスラエル賞受賞。
アモツは生物学者アヴィシャグ・カドマンと結婚した。

                        • -

『すごい進化 「一見すると不合理」の謎を解く』 鈴木紀之/著 中公新書 2017年発行
適応の進化――非効率の不完全な進化 (一部抜粋しています)
進化は派手で無駄に満ちた生物も創り出してきました。派手な生物の定番としてはクジャクが挙げられます。ダーウインが考察して以来、クジャクは生物の求愛行動を研究する者にとってシンボリックな存在となっています。
本来、鳥の羽は効率よく飛び回るために機能しているはずです。季節の変わり目に何千キロメートルも飛ぶ渡り鳥と、花の蜜を吸うためにホバリングするハチドリとでは、羽に求められる性能は違うでしょうが、いずれにせよ飛ぶことを目的に羽を使っているのは違いありません。ところが、クジャクのオスのあまりにも長い羽は、飛ぶのにかえって邪魔になっています。また、メタリックに輝く目玉模様は、むしろ捕食者に狙われるリスクが高まってしまいそうです。
      ・
生存力の高いオスと交尾したいのであれば、なぜメスは体の大きさや運動能力といった生存力を反映する形質でオスの価値を評価しないのでしょうか。オスにしたがって、なぜ生存力そのものをアピールしないのでしょうか。あえて無駄に満ちたアピール手段に頼る必然性はどこにあるのでしょうか。生き物たちの派手な模様は私たちに楽しみを与えてくれますが、自然界の原則である効率性という観点からすると、はなはだ不思議な現象なのです。なぜ生きる力とは無関係なところでモテ/非モテが決まるのかという問いが、アモツ・ザハヴィの「ハンディキャップ理論」以前には謎として残っていました。
アモツ・ザハヴィの提唱したアイデアは、無駄こそ信頼の証になる、というものです。
あらゆるコミュニケーションでは、情報を発信する側から受け取る側に何なかのメッセージが伝わります。
      ・
ザハヴィの仮説で重要なポイントは、メッセージを正しく伝えるシグナルにはコストがかかっているということです。ここでいうコストとは、成長や生存のために何らかの犠牲を払っているという意味です。つまり、メスにモテるからといって、すべてのオスが派手な姿になれるわけではなく、他のオスよりうまく成長する能力のあるオスだけが、派手に着飾る余裕をもてるのであり、だからこそメスは安心して派手なオスを選べるというわけです。もしコストがかからないシグナルなら、誰もが発信できてしまいます。そのような安価なシグナルは信頼に欠けるため、コミュニケーションでは採用されません。実用的な側面では無駄にあふれたシグナルだからこそ、信頼が担保されているのです。
こうした実力に応じた差を設けている仕組みがスポーツにおけるハンデに似ていることから、ザハヴィの仮説はハンディキャップ理論と呼ばれるようになりました。また、ここで使われるシグナルは嘘いつわりのないメッセージを伝えることから、正直シグナル(honest signal)と呼ばれています。