助けを求めて叫ぶスウェーデン人(日本語字幕) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=shUAIJRZI9M
IMMIGRATION TO SWEDEN IN 2014
『日本はスウェーデンになるべきか』 高岡望/著 PHP新書 2011年発行
スウェーデンの本質 より
スウェーデン人の国民性として、清潔、能率的であり、決まりを守り、勤勉であるという点がよく指摘される。いずれも経済的豊かさを実現するためには有益な資質であり、先進国では教育上美徳とされるものである。
そうは言っても読者の中には、「いやいや。スウェーデンが勤勉、能率的だといっても、日本人ほとではないだろう」と思っている人がいるかもしれない。そういう人は、一度ご自分で車を車検場に持っていけば、疑いは晴れるだろう。
日本の陸運局の受付時間は、だいたい午前8時45分から午後4時が一般的、民間の車検場でも、せいぜい午前8時から午後7時といったところか。これに対し、ストックホルムの車検場は午前6時から午後9時まで受け付けている。
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スウェーデン人の内気な性格は、ヨーロッパの中でも際立っているようだ。彼らが親密な関係を結ぶのは、家族や親友といったごくわずかの人に限られるのが一般的だといわれる。従って、外国人がこのような輪に入るのは難しい。先の文化人類学者の論文には、ドイツに生まれ育ったスウェーデン人が故国に帰って、人々があまりに内気に、用心深いため、感情のこもった交流が乏しいことをつらく思ったとの話も紹介されている。ストックホルムに着任したばかりの筆者にある南欧の国の外交官が、「スウェーデンは暮らしづらい国だ。妻が語学学校に通っているがスウェーデン人と友達になるのが非常に難しいと嘆いている」と愚痴を言っていた。筆者はその話を聞きながら、そのようなことは日本でもありそうだなと感じていた。
日本人の内気な国民性は、本音をさらすのは身内の間にとどめ、よそ者との関係は建前に終始するとの心性と結びついていると理解できる。スウェーデン人の場合も、gora bort sig(自らをさらけ出すとの意)をするのは、仲間内の間に限られるそうだ。酒に酔った場合は他人との間でも陽気になって本音をさらけ出してもいいという文化まで、両国の間で共有されている。12月のクリスマス休暇前、日本でいえば忘年会の季節にレストランに行くと、時々、職場の同僚と思(おぼ)しき男女が1つのテーブルを賑やかに囲んで、「フラ! フラ! フラ!」と掛け声をかけながらアルコール度40度のアクアヴィットで何回も乾杯したり、宴もたけなわになると皆で歌い出すといった光景に出会うが、日本の職場の宴会を彷彿(ほうふつ)とさせるものがある。
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『スウェーデン人のまっかなホント』 ペーテル ベルリン/著、幾島幸子/訳 マクミランランゲージハウス 1999年発行
憂鬱 より
スウェーデン人に共通する性格的な特徴といえば「スヴォームード」、つまり長い冬と高い税金、そして地政学的にも社会経済学的にも孤立無援の状態に取り残されているという思いから生まれる深い憂鬱感である。彼らは、人生の意味とは何かとひとり鬱々と考え込み、けっして満足のいく答えにたどり着くことがない。イングマール・ベイルマンの映画に見られるような荒涼としたイメージと結末のはっきりしないストーリーは、スウェーデン人の心理を的確に映し出している。
こうした気質から、スウェーデン人は非常に自意識が強く、人づきあいも下手だ。2人のスウェーデン人が初めて出会ったとき、実はそこには4人の人間がいる。目に見える2人の人間のほかに、目に見えないそれぞれの分身が2人いて、互いの言動のあら探しをしているのだ。この分身は2人が互いによく知りあうにいたって――まだ首を傾けながらではあるが――ようやく脇へ引っ込むのである。
そんなわけで、初対面のスウェーデン人がとっつきにくく、ときに冷たい人間に見えるのは当然のことなのだ。彼らは自分の分身と議論するのが手一杯で、目の前にいる相手に気持ちを集中することができない。しかし、ひとたび心の中の葛藤から脱すれば、彼らは十分気さくで親切な人間になる素養はもっている。いや、それどころか温かい人間に近づくことだってできるのだ。
移民の功罪 より
かつては移民といえば海外への移住者ばかりだったスウェーデンも、この百年の間に外国からの移民を受け入れる国へと様変わりした。どこを見ても同じように憂鬱そうな顔しかなかった社会に、地球の裏側からやってきたさまざまな民族が交じりあい、複雑な人種構成をなすにいたっている。現在では、移住者の8人に1人はスウェーデンに帰化した外国人、または亡命者である。
外国からの移民が割のいい仕事や良い住宅を横取りしているといった類のお定まりの文句も聞かれるものの、多くのスウェーデン市民はそれらの新参者にある程度の寛容さを示している。その理由のひとつは、移民が増えたおかげでスーパーやレストランが、オートミールと発酵ニシン以外のさまざまな食品やメニューを提供するようになったこと。そしてもうひとつは、これまでは高いお金を出して外国に出かけなければ見られなかったさまざまな国の民族文化が、居ながらにして楽しめるようになったことだ。
移民たちは、こぞってスウェーデンの悪口――気候は厳しい、税金は高い、人びとは愛想がない――を言っては早くこんな国とはおさらばしたいとぼやき、これを聞いたスウェーデン人は失礼じゃないかと憤る。けれども同じことをスウェーデン人が言えば、誰もがそのとおりとばかりにうなずくのである。