じじぃの「科学・芸術_169_トルコ人のヨーロッパ」

Bosna,Turkey & Arabic [Islamic-Brother]Rap (Deutsch) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=JhW3pOI9Z2Q&list=RDJhW3pOI9Z2Q#t=42
ドネル・ケバル (Doner kebab)

ドイツのトルコ人移民からアイデンティティ問題を考える 2015-10-23 by Ayumi Saito
ドイツには、あからさまな人種差別はないと思います。私もベルリンに住み始めて、差別を感じたことはありません。それでも、トルコ人移民は、ドイツ人との間に「ガラスの壁」があると感じているようです。トルコ人移民の方が抱える問題ってどんなものがあるのでしょう。
http://www.tabinotebook.com/turkishimmigrants/
『トルコを知るための53章』 大村幸弘、永田雄三、内藤正典/編著 赤石書店 2012年発行
ヨーロッパで出会うトルコ人 (一部抜粋しています)
ヨーロッパでトルコ人と出会うことはじつに多い。よく知られているように、ドイツには200万人以上のトルコ出身者がいる。いまでは、ドイツ国籍を取った人も多く、彼らは外国人としてカウントされないから、実際には、250万人を超えるかもしれない。ドイツだけではない。オーストリア、オランダ、デンマークスウェーデン、ベルギー、フランスなどの国でもトルコ人は多い。全体でおよそ300万人のトルコ出身者がヨーロッパ各国に暮らしている。彼らのほとんどは、1960年代からはじまった労働移民とその子孫である。
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いま、ヨーロッパにいるトルコ出身者のほとんどが、当時はじまった出稼ぎ移民が定住した人たちである。スペイン、ポルトガルギリシャ、イタリアは、1960年代には、まだ発展の遅れと労働力の過剰に悩んでいたから、ドイツなどの先進国に労働者を送り出したが、後に、自国の経済発展が進むと、彼らは帰国していった。現在、これらの国はEUに加盟しているので、域内の労働力移動は自由化されている。したがって、どこの国にいても、外国人の移民労働者に含まれない。トルコは、いまだEU加盟が達成されていないので、移民労働者としてカウントされるし、外国人として扱われる。
この扱いは、最初は同じように出稼ぎ労働者としてドイツなどに向ったヨーロッパ諸国の労働者との間に格差を生んだ。母国がEUに入れば、労働ビザを取る必要もなくなるし、そもそも国境を越える移動にも制約がない。しかし、トルコからの移民は、帰化しないかぎり、ヨーロッパでは隣の国に、ビザなしで移る自由はない。仕事を探すにも、EU加盟国の市民を優先することが多いから、トルコ人たちは後回しにされる。
さらに、2001年以降、宗教文化の違いによる差別がトルコ出身者の身に降りかかった。9・11の同時多発テロ事件は、ヨーロッパ社会の中で隣人として暮らしていたムスリムへの偏見と嫌悪を強めた。フランスの北アフリカアルジェリアチュニジア、モロッコなど)出身者、イギリスのパキスタンバングラデシュ、インド出身者、そしてドイツやオランダのトルコ人。彼らは、ヨーロッパで高まった反イスラム感情をもろに浴びてしまった。
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過去10年の間、トルコ本国政府は、EU加盟をめざして、イスラムが危険な宗教でもなく、ムスリムが西欧社会を破壊しようとしているわけでもないことを訴え続けた。しかし、9・11や相次ぐテロの衝撃は、トルコのEU加盟にも大きな障害となってしまった。
その一方で、多くのトルコ系移民は社会の底辺から這い上がり、事業を起こして雇用主にもなっていった。今日、ヨーロッパじゅうの国でトルコ料理のレストランを目にする。ベルリンでは、もはやソーセージ屋の屋台より、ドネル・ケバル屋のほうが目に付くくらいである。スーパーマーケット、ハラール食品の製造・販売、旅行代理店、ムスリム用の結婚式場などを経営するトルコ人もいる。たんに、トルコ出身者のためでなく、ハラール食品を売る店には、他のムスリムも買い物に来るからビジネスとして成立したのである。1960年代には鉱工業の労働者が主流だったが、現在は、サービス産業に従事するトルコ人が急増している。
経済的な上昇は、子弟の学歴の上昇をもたらす。第2世代以降は、ヨーロッパ社会の中で育っているし、一定の学歴を持つようになっているが、彼らがドイツ社会の中で、正当な職と待遇を得られるなら問題はない。しかし、大学を卒業してもなお、熟練を要しないような仕事しか得られないと、急速にホスト社会への嫌悪感が増幅される。9・11以降、トルコ人に対する侮辱的な態度は日常化していることは、大きな懸念材料なのである。第1世代は、ドイツ語もできなかったが、世代交替で言葉の問題は徐々に小さくなっている。ドイツ語を流暢に話せるようになるにつれて、彼らは自分たちのイスラム的な価値についても、はっきりとモノをいうようになった。そうなると、ドイツやオランダの社会は、いっそう、彼らへの敵意を強めてしまう。イスラムと西欧社会との間には、いまだに越えがたい溝が横たわっている。