じじぃの「科学・芸術_155_シンガポール・マレー人」

Singaporean National Anthem - "Majulah Singapura" (MS/EN) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Fdb_O91d92M

未来への提言 2015.04.22 資産経営相談所株式会社
Lee Kuan Yew 著
久しぶりに手に取った瞬間から、イッキに読破しました!
20代の頃に、シンガポールへは何回か行ったことがあり、最も好きな国の一つです。
首相在任の約60年間で、面積が淡路島くらいの小さな国に、
アジアでナンバーワンの成長をもたらしました。
「ルックイースト政策」といい、日本に学べという政策を取っていました。
しかし、今では日本がシンガポールから学ぶことが多いのではないでしょうか。
http://shisankeiei.com/blog/knowhow/411.html
シンガポールを知るための65章【第4版】』 田村慶子/編著 赤石書店 2016年発行
マレー人 近代国家のムスリム・マイノリティ (一部抜粋しています)
シンガポールの話をすると、「中国系の人が多い国ですよね」と返す人が多い。確かに華人は74.3パーセント(2015年、以下同じ)と多数派だ。しかし、19世紀に中国・インドから大量の移民が来る前から東南アジア島嶼部に住んでいたのはマレー人で、憲法はマレー人を「先住民族」と認めている。現在、マレー人は人口の13.3パーセントを占める。公用語は英語、中国語、マレー語、タミル語の4つだが、マレー語が「国語」だ。国歌は「進めシンガポール」を意味するマレー語の歌「マジュラ・シンガプーラ」だ。紙幣に肖像が使われている初代大統領のユソフ・イシャクはマレー人だ。
マレー人は近代以前は東南アジアの歴史の主役だったが、現在、大きな岐路に立たされている。ここでは、社会的格差の問題と彼らの宗教であるイスラームをめぐる問題の2つについて紹介したい。
まず社会的格差について見ると、マレー人は教育・所得・社会的地位のいずれの面でも他の民族に大きな後れを取っている。大学卒業者の比率は、華人の22.6パーセント、インド人の35.0パーセントに対してマレー人は5.1パーセントに過ぎず、また、平均世帯月収では、マレー人と華人・インド人との間には約1.6倍もの格差がある。職業分布では、行政・管理職と専門・技術職を合わせた比率は、華人、インド人は50パーセントを超えるが、マレー人は30パーセントに満たない。シンガポールは経済発展を遂げ、国民所得で日本を上回る近代国家となったが、マレー人社会は発展の恩恵を享受できずにいる。
格差が生じた理由としては、植民地政府の政策の下でマレー人の多くが下級役人、軍人や警察官となり、あるいは、農業に重視するなど近代的な経済セクターの外に追いやられたことや、独立後のマレーシア、インドネシアとの対立のなかで、政府が国防や治安維持をマレー人にゆだねることをさけ、マレー人の軍人や警察官の多くを解雇したことなどが指摘される。また、マレー人のステレオタイプ(偏見)に基づく雇用・昇進面での差別があるとの声もたびたび聞かれる。
教育の要因も大きい。シンガポールは極端な学歴社会であり、教育格差が所得や社会的地位の格差に直結する。政府は、誰もが学業で成果を挙げれば高い社会的地位・収入が得られる。「メリトクラシー(業績主義)の原則を標榜し、機会の平等は保証されていると言う。しかし、現実には経済力のある家庭の子供が学業面で優位に立つ傾向が強く、親の低所得が子供の低学歴、低所得につながる「負のサイクル」が存在する。政府は「マレー人の大学進学率や所得額は上がり、マレー人の生活は改善している」と、格差の問題に触れようとしない。しかし、マレー人たちの間からは、「私たちは、もともと自分たちの土地だった場所で、社会の中心的な地位を占めることができない」という不満の声が聞かれる。
次にイスラームを巡る問題について見てみよう。マレー人はそのほとんどがムスリムイスラーム教徒)だ。ムスリムはインド人の一部やアラブ人も含め居住者の14.0パーセントを占めるが、その大半はマレー人だ。金曜日の午後には、盛装したマレー人が友人や家族と連れ立ってモスクを訪れる。ラマダン(イスラーム断食月)の日没後、マレー人街ゲイラン・セライの屋台村では、日の出から食べ物も水も断っていた』マレー人たちがいっせいに夕食を口に運び始める。こうした光景は、シンガポールムスリムが暮らす国なのだと思い起こさせてくれる。