じじぃの「科学・芸術_98_イソップ寓話・アリとキリギリス」

Noah's Ark Replica, Kentucky - virtual tour 2016 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=gvUVWAa_sYI
The Ant & the Grasshopper - Aesop Fables 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=6Pxqy-xRDzo
The Ant and the Grasshopper

日曜ビッグ 池上彰トランプ大統領でニッポンはどうなるSP 2017年1月22日 テレビ東京
【MC】池上彰、SHELLY、相内優香 【ゲスト】峰竜太宮崎美子、パックン、小島瑠璃子
ノアの方舟を信じるアメリカ人? 不思議なテーマパークで見つけた不思議な国アメリカ、その知られざる素顔が明らかに!
米国・ケンタッキー州にあるテーマパーク「アークエンカウンター」(方舟との遭遇)。
旧約聖書の『創世記』に登場する大洪水にまつわる「ノアの方舟」を実物大で再現している。
高さ16m、幅26m、全長155m。総工費は100億円。
内装はほとんど木でできていて、恐竜も人間と共存している。
ここを訪れる人たちは、6000年前に神がすべての生物を創った「創造論」を信じる人たちで、「進化論」は信じていない。
http://www.tv-tokyo.co.jp/smp/program/detail/24313_201701221954.html
『日本とは何か』 堺屋太一/著 講談社 1991年発行
学び上手の「気風」 (一部抜粋しています)
ノアは、神の言葉を守ると約束(契約)して、モルモン山の麓で方舟をつくる。周囲の人々は、こんなカンカン照りの砂漠のなかに舟をつくるとは気が狂ったのではないか、とノアをあざ笑った。
ところが、やがて神の言葉通りの大雨がつづき、大洪水が起こってすべてが水没してしまう。そのとき、ノアは神の言葉通りに家族と万物の1つがいをずつを方舟に入れて水に浮かぶ。やがて49日の後に水が引いたときには、他のものはみな死に絶えていたが、方舟に乗って生き残った1つがいから万物がまた、繁栄したというのだ。
何とも恐ろしい物語だ。大洪水が起こったとき、ノア一族はどうしただろう。そこにはノアの友人もいれば親類もいたはずだ。その人たちは「ノアよ、オレもその舟に乗せてくれ」といったに違いない。
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なぜこんな冷酷な物語が神の名で創られ、語り継がれてきたのか。そこには厳しい風土と激しい異民族闘争に生きてきた人々の倫理観が示されている。それは、「非常事態に備えた者は助かる権利がある、備えていなかった者は亡ぶ義務がある」という考え方である。
これは日本人の倫理観とは著しく違う。日本では非常時に備えていなかった者にも分け与えるべきだということになっている。
そのことは、イソップ物語の「アリとキリギリス」の話の書き方にもよく示されている。日本で発行されている絵本や子供用の書物では、この話は「親切なアリは、キリギリスに食べ物を分けてやりました」とハッピーな終わり方になっている。だが、イソップの原作はもちろん、欧米で出ている数々の本には、そんな甘いことは書いていない。「アリはキリギリスが飢えて死ぬのを待って、その死体をも食べ尽くした」のである。イソップ研究を専門とする某教授が新聞に書いていたところによると、欧米で発行されている148種類の書物を調べたが、日本式のハッピーエンドはたった1つ、スペインの絵本にあるだけだそうだ。
「非常事態に備えた者は生きる権利がある」というだけでも日本では通用し難いが、「非常時に備えていなかった者は死ぬ義務がある」というに至っては、日本人の神経にはほとんど耐えられない。しかし、砂漠の厳しい風土のなかで異民族との戦争が絶えない土地で生きてきた人々は、全員が非常事態に備える習慣を持たねばならなかった。
方舟をつくっても洪水にならなかったら無駄である。食糧を蓄えておいても飢饉が起こらなかったら、まる損だ。非常事態への備えというのは10年に1回か100年に1回しか起こらない危険に備えるために、現在の消費量を犠牲にすることを意味している。けっして豊ではなかった太古の人類がそれを実行するためには、強い恐怖感と自制心が必要であった。もし、非常事態に誰かが助けてくれるというのなら、1人としてそれに備える者はいなくなるだろう。そればかりではない。非常事態に備えていない「キリギリス型」人間は、他人の蓄えを襲う可能性さえある。彼らに「死ぬ義務」を課さなければ、集団全体の滅亡につながるわけだ。そのことを、ノアの方舟は神の言葉として、イソップ物語は子供への教訓として、語っているのである。