じじぃの「科学・芸術_72_利益相反・新薬とエビデンス」

ノバルティスの不正

くすりの話 184 製薬会社の不正 2015年11月30日 全日本民医連
Q:利益相反とは?
A:医師、研究者は患者の利益を守り医学を発展させるためにも医薬品の公正、中立な評価をしなければなりません。しかし、その医師や研究者が金品を提供されたり、製薬会社からの研究者厚遇などで公正さを欠き、製薬会社に有利な研究結果を出す時、「利益相反」行為があったとされます。
医学論文では著者は製薬メーカーとの利益相反関係(研究助成、謝礼、雇用、顧問関係など)の透明化、開示が求められています。
このような医学研究に対する不正な製薬メーカーの介入は、真剣に患者の治療をおこなっている医師、薬剤師を裏切るものです。
患者は不正の最大の被害者です。民医連は再発を防ぐ断固とした措置を国、製薬業界に求めています。
http://www.min-iren.gr.jp/?p=25425
『新薬の罠 子宮頸がん、認知症…10兆円の闇』 鳥集徹/著 文藝春秋 2015年発行
癒着を引き剥がす処方箋 (一部抜粋しています)
ここまで書いてきたように、利益相反はあるべき医学や医療の姿を大きく歪め、深刻な悪影響を我々に及ぼしている。
ほんらい、薬はリスクとベネフィットを勘案して必要最小限の量で使われるべきなのに、使わなくてもいい人に大量の薬が処方されている。その代表的な例が、高血圧薬やコレステロール低下薬だろう。(ノバルティスの不正事件)
本書で、コレステロールの診断基準や治療方針をつくるガイドライン作成委員の大半が、関連する製薬会社から資金提供を受け、学界のセミナー運営まで製薬会社丸抱えになっている事態を示した。こうした利益相反が製薬会社に都合のいいガイドラインを生み出す要因となり、それが薬の過剰な処方につながってきたことは、かねてから指摘されてきたとおりだ。
また、製薬会社の疾患啓発キャンペーンによって病人が大量につくられ、不必要な薬の大量処方につながっている例も示した。その代表的な例が、抗うつ剤や抗認知症薬だ。患者が自然に増えたことで薬の処方が増えたのではなく、製薬会社のキャンペーンによって受診する人が増え、患者がつくり出されて、薬の売り上げが伸びたと考えざるを得ない実態があった。そして、そうした疾患啓発キャンペーンに、学界で指導的立場にある多くの専門家たちが力を貸していた。
さらに、薬の科学的なエビデンスをつくるのが目的であるはずの臨床試験が、薬のプロモーションのために利用されていた。製薬会社は多額のカネだけでなく手や口まで出し、自分たちに不都合な結果を隠したり、自分たちに都合のいいようにスピンをかけたりしていた。そして、ねじ曲げられた非科学的なエビデンスが、薬の販促に最大限に利用され、製薬会社に莫大な利益をもたらす源の1つとなっていた。
より深刻なのが、利益相反が「薬害」を生む温床となってきたことだ。新薬の開発の膨大な労力とお金をかけてきた製薬会社は、副作用のリスクを隠したい欲望にかられる。また、製薬会社と深い利害関係を持つ研究者も、薬のリスクを過小評価する傾向がある。そのことが、副作用のリスクの周知を妨げ、健康被害を拡大させる要因になっていた。第1章であげた子宮頸がんワクチンの問題にも同様の利益相反の構図があり、薬害と言ってもおかしくないような実態があった。
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医師側は、製薬会社から提供される資金がなければ、まともな研究活動はできないと主張するだろう。製薬会社も医師と協力しなければ、新薬の開発はできないと言うはずだ。だが、そうした面があったとしても、利益相反が医学や医療に及ぼしてきた悪影響は無視できず、あまりにも大きい。こうした状況は洋の東西を問わず、欧米でも大きな問題となってきた。そして、その反省から、医学、医療の利益相反に対して、真剣な取り組みがなされるようになってきた。