じじぃの「人の生きざま_701_バリー・マーシャル(微生物学者・ピロリ菌)」

  ピロリ菌

バリー・マーシャル ウィキペディアWikipedia)より
リー・マーシャル(Barry James Marshall、1951年9月30日 - )はオーストラリアの微生物学者。
ストレスや辛い食べ物、胃酸の分泌過剰が原因と考えられてきた胃潰瘍の原因がヘリコバクター・ピロリであることを発見し、2005年に共同研究者のロビン・ウォレンと共にノーベル生理学・医学賞を受賞。現在も西オーストラリア大学分子生物学研究室でヘリコバクター・ピロリに関連する研究を続けている。

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『封印された科学実験』 科学の謎検証委員会/編 彩図社 2016年発行
胃炎の原因を解明しようと決死の覚悟で臨んだ実験 ピロリ菌を飲んだ科学者 (一部抜粋しています)
1984年7月10日、33歳の医師バリー・マーシャルは、生肉の臭いがする「あるもの」を静かに飲みほした。それは、66歳の男性の胃袋から採った約10億個のピロリ菌を少量の水に溶かしたものであった。
正気の沙汰とは思えない行為だが、これには当然理由がある。マーシャルは、胃炎とある細菌の関係について調べていたのである。
当時、胃炎の主な原因はストレスだと考えられていたが、マーシャルは「胃炎は細菌による感染症」という大胆な仮説を立てていた。
きっかけは1979年、オーストラリアの王立パース病院で研修医として勤務していたときのこと。研修の研究テーマを探していたマーシャルは、同じ病院に勤めていた病理学者のロビン・ウォレンが、慢性胃炎に悩むロシア人患者の胃の粘膜から、らせん系の細菌を発見したことを耳にする。この話に興味を抱いたマーシャルは、ウォレンと協力してその関連性を追求することにしたのである。
まず、マーシャルはロシア人患者の承諾を得て、細菌へ抗生物質を2週間分投与してみた。すると驚くことに、長年悩んでいた患者の胃炎が簡単に治ったのである。微生物の活動を抑える抗生物質が利いたことで、マーシャルとウォレンは「胃炎の原因はらせん系の細菌である」という説に確信を得たのである。
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マーシャルとウォレンが発見したピロリ菌と胃炎の仕組みは、次の通りだ。
ピロリ菌は「ウレアーゼ」と呼ばれる酵素を発生させる。これが胃粘膜に悪影響を及ぼし胃炎の原因となる。さらにウレアーゼは胃粘膜にある尿素を、アンモニア二酸化炭素に分解する。このアンモニアで胃酸を中和しているため、胃液の中でも生き続けられるのである。
こうして胃炎の原因が科学的に解明され、医療研究に大きく寄与することになったが、一方で関心を全く示さなかったのが製薬会社だ。
それまで胃炎を治すには、制酸剤(胃液の酸度を調整する薬)を長期間服用する必要があり、製薬会社はそれで利益を上げていた。にもかかわらず、「胃炎は抗生物質で、しかも数週間で治る」となれば、当然収益は下がる。簡単に治されて面白くないわけだ。
しかし、マーシャルの説を支持する専門家たちの研究も進み、10年以上の歳月をかけてピロリ菌除去による胃炎治療は医師に浸透していった。そして2005年、マーシャルとウォレンはノーベル生理学・医学賞を受賞する。
病気の原因をつきとめるためとはいえ、かなりクレイジーといえるマーシャルの実験だが、それによって胃炎の治療に大きく貢献したのも事実である。