ペルム紀大絶滅の原因は微生物? 2014年04月02日 AFPBB News
2億5200万年前に地球上のほぼ全ての生物が死滅した原因は、火山や小惑星とされることもあるが、真犯人はそれらよりはるかに小さい微生物だったことを示唆する研究論文が先月31日、米科学誌「米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)」に発表された。
http://www.afpbb.com/articles/-/3011533
ペルム紀末大量絶滅時の硫化水素大量放出事変 2008年年9月17日 日本有機地球化学会
海洋中の,低酸素水塊が表層水まで広がると,海洋生物の大量絶滅につながる(Wignall andTwitchett, 1996)。さらに進んで,深層水中層水に硫化水素が蓄積され,海洋表層と大気中に放出されるようになると,地球全体の生物に危機が及ぶかもしれない(Kump et al., 2005)。
地球温暖化が低酸素水塊の拡大と硫化水素の蓄積を起こす(Meyer and Kump, 2008)。
私たちは,特に海洋中の溶存酸素に着目して,生物の大量絶滅や極端温暖化などの地球環境の激変の実体解明を行ない,微化石,炭素・酸素・硫黄同位体比,バイオマーカー,元素を用いて,海洋の溶存酸素と温度に関する情報を得ている。中でも,硫黄同位体比とバイオマーカーの研究は,ペルム紀末の大量絶滅時の地球環境変動の謎解きに貢献した。
http://www.ogeochem.jp/pdf/ROG_BN/vol23_24/v23_24_pp5_11.pdf
6度目の大絶滅 エリザベス・コルバート, 鍛原 多惠子 Amazon
地球ではこれまで5度の大量絶滅が起きている。
隕石衝突、火山活動、氷河期到来など、いずれも突然の大規模な自然災害で多くの種が消滅した。そして現在、サンゴ類の1/3、淡水産貝類の1/3、サメやエイの1/3、哺乳類の1/4、爬虫類の1/5、鳥類の1/6、植物の1/2がこの世から姿を消そうとしている。恐竜時代には1000年に1種だった絶滅が、いま、毎年推定4万種のペースで人知れず進行しているのだ。
このままでは、2050年には種の半分が消えてしまうかもしれない。世界各地でいったい何が起きているのか?そして原因は何なのか?絶滅の最前線で、歯止めをかけようとする研究者たちの時間との闘いが熱く繰り広げられている。
『ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー』2014年ベストブック10冊に選ばれた話題作。
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『6度目の大絶滅』 エリザベス・コルバート/著、鍛原多惠子/訳 NHK出版 2015年発行
大量絶滅に統一理論はあるのか (一部抜粋しています)
4億4400万年前、コノドント、腕足動物、棘皮(きょくび)動物、三葉虫はもちろんのこと、フデイシをほぼ絶滅に追いやった出来事はなんだったのだろう?
アルヴァレズ(天文物理学者)の仮説が発表された直後の数年間は、少なくとも仮説を「たわごと」と決めつけなかった人びとのあいだでは、大量絶滅にかかわる統一理論が存在した。1個の隕石が化石記録に1つの「分断」をもたらすのなら、隕石の衝突がすべての絶滅を引き起こしたと考えてもいいように思われた。このアイデアは1984年に勢いに乗った。この年、シカゴ大学の2人の古生物学者が、海洋生物の化石記録の包括的分析を発表した。この研究は、5度にわたる大量絶滅に加え、より小規模の絶滅が何度も起きたことを解明していた。すべての絶滅を考慮すると、あるパターンが見えてきた。大量絶滅はおよそ2600万年ごとに起きるらしい。言い換えれば、絶滅は土中から這いでてくるセミのごとく周期的に起きるのだ。
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一方、地球外天体の衝突を示すイリジウムその他の徴候の探求も、一時の勢いを失ってきた。多くの仲間と一緒に、ルイス・アルヴァレズはこの証拠探しに身を投じていた。中国の科学者と共同化学研究が事実上前例のない時代にあって、彼は中国南部からペルム紀と三畳紀の境界に対応する岩石資料を入手した。ペルム紀末、あるいはペルム紀ー三畳紀(P-T)境界の大量絶滅はビッグファイブのなかで最大であり、多細胞生物をすべて死滅に追い込む一歩手前という恐ろしい出来事だった。
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ペルム紀末の絶滅も気候変動のせいかもしれない。しかし、この場合には、変化は逆方向に進んだ。ちょうど絶滅が起きた2億5200万年前ごろ、大量の炭素が大気中に排出された。その量はあまりにも多いため、地質学者はこれほどの炭素がどのように生成されたのか想像すらできない。気温が急上昇し、海水温も10℃上がった。海水の化学組成が乱れ、海は制御が不能な水族館のようになった。海水が酸性化し、溶存酸素量が極端に低下したため、多くの生物は事実上窒息したと考えられる。礁が崩壊した。ペルム紀末の絶滅は、人の一生ほどの時間内に起きたわけではないといえ、地質学的に言えば突然の現象だったと言える。中国とアメリカの科学者による最新の共同研究によれば、この現象は全体でも20万年とかかっておらず、10万年以下の可能性もある。絶滅が終るころには、地上の生物種すべての約90パーセントが姿を消していた。これほど大規模な損失は極端な地球温暖化と海洋酸性化を想定しても説明しきれず、別のメカニズムの検証が進められている。一説によると、海が温かくなり、おおかたの生物にとって毒となる硫化水素を生成する細菌(硫酸塩還元菌)が増殖したとされる。このシナリオでは、水中に蓄積した硫化水素が海洋生物を死に追いやり、さらに大気中にも放出されて残りの生物の大半を殺してしまう。硫酸塩還元菌が海の色を、硫化水素が空の色を変える。サイエンスライターのカール・ジンマーは、ペルム紀末の世界を「真におぞましい世界」と形容し、どんよりした紫色の海が毒気に満ちた泡を放出し、その毒が「淡い緑色の空」に昇っていったと述べた。
25年前、すべての大量絶滅が同じ原因にたどれるように思えたとすれば、現在はそれと正反対のことが正しく思える。トルストイが『アンナ・カレーニナ』で不幸な家庭について述べたように、どの絶滅もそれぞれに異なった意味で不幸な出来事であり、しかもそれは生命にかかわる不幸だったのだ。実際のところ、これらの出来事がここまで危険であるのはその気まぐれゆえかもしれない。なにしろ生物は、進化上まったく対処できない条件に突如として遭遇するのだから。
「白亜紀末の隕石衝突を示す証拠がかなり強力になると、私たち研究者はフィールドに出ていけば、ほかの絶滅についても隕石衝突の証拠が見つかると愚かにも思ってしまいました」とウォルター・アルヴァレズは私に語った。「ところが、ことは私たちが考えていたよりはるかに複雑でした。現在、大量絶滅は人間が起こすこともあるとわかりはじめています。つまり、大量絶滅に統一理論がないことは明白なのです」