じじぃの「脳内パターンの辞書を作る・他人の脳をハッキングできるか?時空を超えて」

モーガン・フリーマン 時空を超えて 「他人の脳をハッキングできるか?」 動画 ANI88
http://www.ani88.com/video/72839/
Vision Reconstruction 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=6FsH7RK1S2E
脳の動きで見ているものを当てる、脳解析で劇的な進歩 米研究報告 2008年3月7日 AFPBB News
米カリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)のジャック・ギャラント(Jack Gallant)氏率いる神経科学者チームは、見た画像を識別する脳の領域の信号の解読に成功したという。
http://www.afpbb.com/articles/-/2360405
NHKドキュメンタリー 時空を超えて 「他人の脳をハッキングできるか?」  2016年9月2日 NHK Eテレ
【語り】モーガン・フリーマン
コンピューターに侵入するように、他人の脳をハッキングすることはできるのか?脳をのぞき見したり、書き換えたりすることは可能なのか?多角的・論理的に考察していく。

他人の心を読んだり、脳をコントロールしたりできるのか?読心術によると、全ての人間の思考に関して、体から何らかのシグナルが発せられているという。脳波の動きを測定するだけでコミュニケーションを可能にする技術が開発されているが、何を考えているかを読み取ることもできるという。また催眠術で他人の記憶を書き換えられるのか、光やにおいで刺激を与えて行動を大きく変化させられるかなど、脳のハッキングの可能性を探る。
http://www4.nhk.or.jp/P3452/x/2016-09-02/31/7004/1988008/
9月2日 NHK Eテレ 時空を超えて 「他人の脳をハッキングできるか?」 より
カリフォルニア大学の研究所で、人間の思考を直接画像や言葉に変換する研究が進んでいます。
人には誰しも秘密にしておきたいことがあります。
コンピューターのデータなら秘密にしたい場合は暗号化します。しかし、どんな暗号もやがて解読されてしまうでしょう。
脳内のニューロン間で生じる電気活動もいずれ解読されることになりそうです。
脳内の情報を言語化しようと試みている神経科学者たちが既に存在しています。
カリフォルニア大学の神経科学者のジャック・ギャラント博士は脳内の活動を日常的な言葉に翻訳する研究に取り組んでいます。
それはいわば辞典を作るような作業です。
外界と脳内の活動とをつなぐために脳の各部位は一種の翻訳作業を行っています。翻訳には言語に当たるものが使われます。
それを全てリスト化できれば「脳の辞典」を作ることができるはずです。
ギャラントが最初にリスト化しようとしたのは視覚にまつわる言語です。
脳内で視覚に関わる領域は50から70。1つの領域につき1つの辞典が必要ですから50から70の辞典を作らなくてはなりません。
大変な分量になるでしょう。
何しろ「目に見えるもの」はこの世にいくらでもあるわけですから。
ギャラントの研究チームは脳の辞典を作るためのデータを収集しました。
被験者にMRI装置に入ってもらい、そこでさまざまな映像を見せ脳がどのような反応を示すのかを調べたのです。
これは映像を見ている間の血流を示したものです。青は血流が少なく赤は多いところです。
見ている映像によって血流が劇的に変化しているのが分かるでしょう。
しかし、反応を示した領域と映像の内容にどんな相関関係があるのかを突き止めモデル化するのは大変な作業です。
研究チームは数多くの映像に反応する脳を何千回もスキャンするうちに特定のものが特定の血流パターンを誘発することを発見しました。
そして脳内の血流パターンを調べることで外界のものが何かを突き止める脳の辞典を作り始めました。
あるものを見ると特定の血流パターンが起きることを利用して脳の辞典を作るんです。
その辞典を試す実験が行われました。
いつもどおり、被験者にMRI装置の中でさまざまな映像を見てもらいます。
ギャラントたちは映像の内容を知りません。データを解析することで被験者が何の映像を見ていたのか推測するのです。
脳には視覚活動に関わる部分がおよそ1万ポイントあります。それぞれが1つの活動を担当し映像が入ってくると活動を起こします。
それらの情報を全て集め、最も妥当と思える答えを導き出すのです。
これは被験者が見た映像です。こちらは脳の辞典でコンピューターが選んだ映像です。
それらを合成して平均化するとこのようなイメージになります。
被験者が何を見てもある程度のコピーを作り出せます。
この辞典は被験者が見ているものを映像的なイメージとしてだけでなく名詞や動詞などの単語でも示すことができます。
左は被験者が見た映像です。そして、右には名詞や動詞が2000個並んでいます。
それぞれの文字の大きさは映像を見て連想する確率の高さを示しています。
たとえば、この映像なら「話す」「顔」「男性」「手」「部屋」といった単語が目立ちます。
これは複雑なシーンですが、海のシーンに変わると「空」「雲」「ワイキキ」「水辺」「建物」「歩いている人」などが出てきます。
どの映像でも正確な解読がなされています。
研究チームは用意した映像を見た人々が思いつきそうな単語2000語から成る辞書を完成させました。
今後はより個人的な解釈ができるようにしたり、詳細に脳をスキャンできるようにするなど精度を上げていく予定です。
脳から集められる情報量の多さには驚くばかりです。まだ初歩的な段階なのに、これほど膨大なんですから。
やっかいな問題もはらんでいます。
脳の解読という研究を進めていけば、予想以上に早い段階でプライバシーの保護という倫理的な問題に突き当たるからです。

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『フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する』 ミチオ・カク/著、 斉藤隆央/訳 NHK出版 2015年発行
テレパシー より
カリフォルニア大学の神経科学者のジャック・ギャラント博士の説明によれば、まず被験者をストレッチャーに寝かせ、そのままゆっくりと、300万ドル以上もする巨大な最新型のMRI装置に頭から入れる。それから被験者に映画クリップを複数見せる(ユーチューブに上がっている映画の予告編など)十分なデータを蓄積するために、被験者はじっとしたままそうした動画を何時間も見なければならないが、これは実につらい仕事だ。私はポストドクのひとりである西本伸志博士に、何時間もじっと横になったまま断片的なビデオだけ見て過ごすなどという実験に志願する人を、どうやって見つけたのかと訊いた。彼は、この部屋の院生やポストドクが志願して自分たちの研究のモルモットになったのだと答えた。
被験者が映画を見ているあいだ、MRIは脳内の血流の3D画像を形成する。MRI画像は、3万個もの莫大な数のドットすなわちボクセルからなる集合体に見える。個々のボクセルは神経エネルギーの一点を表し、ドットの色はシグナルの強度つまり血流の量に対応する。赤いドットは神経活動が高い点で、青いドットはその活動が低い点だ。
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こうしたプロセス全体の目標は、現実世界のものと、MRIで取得した脳内のパターンとを、すばやく照合できるようにする正確な「辞書(ディクショナリー)」を作成することだ。一般に、細かい照合は非常に困難で、やれば何年もかかるが、一部のカテゴリーは、いくつかの写真を調べるだけで簡単に読み取れる。パリにあるコレージュ・ド・フランスのスタニスラス・ドゥアンヌ博士は、数を認識する頭頂葉MRIでスキャンしたデータを調べていた。すると教え子のポストドクのひとりが、MRIのパターンをさっと見るだけで、被験者の見ている数が自分にはわかる、となにげなく言った。事実、数はそれぞれ、特有のMRIのパターンを生み出していた。ドゥアンヌはこう述べている。「この領域を200ボクセルに分けて、どのボクセルが活性化して、どのボクセルが不活性かを見れば、どの数を思い浮かべているのかを読み取る機械学習装置が作られる」
それでもまだ、思考を写真画質のビデオで見られるのはいつかという疑問は残る。