じじぃの「人の生きざま_662_神谷・之康(神経情報学者).」

脳活動を解析して再現させた画像

「夢に見たもの」を脳画像からつきとめる:神谷之康 2014年9月号 日経サイエンス
●神谷之康(かみたに・ゆきやす)
国際電気通信基礎技術研究所(ATR)脳情報研究所神経情報学研究室長 1970年奈良県生まれ。
93年東京大学教養学部卒。2001年米カリフォルニア工科大学博士課程修了。米ハーバード大学プリンストン大学を経て04 年国際電気通信基礎技術研究所研究員。08年から現職。奈良先端科学技術大学院大学客員教授を兼務。2013年にブレインサイエンス振興財団「塚原仲晃記念賞」、14年に日本学術振興会賞を受賞。最近は7歳と5歳になる娘2人と妻と一緒に、しばしばキャンプに出かけている。「子供を外で遊ばせ、僕は昼からビール」。
http://www.nikkei-science.com/201409_008.html
サイエンスZERO 「心の中がまる見えに!? 脳内イメージ研究最前線」 2014年2月9日 NHK Eテレ
【司会】南沢奈央竹内薫中村慶子 【ゲスト】神谷之康(ATR脳情報研究所・神経情報学研究室 室長)
人の心の中をのぞき見ることができる!?
そんな超能力のような技術が最新の脳科学によって現実のものになろうとしている。鍵となるのが、脳の活動を血流の変化で画像化するfMRI技術。その飛躍的な進歩によって、脳の血流パターンの分析から、その人が頭に浮かべているイメージや、眠っている時の夢の中身まで読み取れるようになってきたのだ。あなたの心の中も丸見えに??世界に先駆ける日本の脳内イメージ研究の最前線に迫る。
https://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp455.html
NHKドキュメンタリー 時空を超えて 「“私”は何者なのか?」  2016年7月8日 NHK Eテレ
【語り】モーガン・フリーマン
私たちはすぐそばにありながら、決して手にすることができない何か、を生涯探し続けます。
それを「自我」と呼ぶ人もいれば「魂」と呼ぶ人もいます。
現代の科学は思考記憶「夢」を探り、ある深遠な問題を解き明かそうとしています。
「私」は何者なのか?
「本当の自分」が姿を見せる時が1つだけあります。夢を見ている時です。
もし、夢の中を覗き込むことができればその人の本当の姿を深く理解できるのではないでしょうか。
平均寿命で考えた場合、人間が夢を見ている時間はおよそ6年分に相当します。
京都大学・神経情報学者の神谷之康はいつの日にか夢を録画できるようになると考えています。
そうなれば、私たちはもっと深いレベルで「自分」というものに向き合えるようになるかもしれません。
夢の内容を後で再生できれば、自分のアイデンティティーをより明らかにできると思います。
目覚めた後の夢の記憶は、多くの場合感情的なイメージの連続です。
夢を見ている時は脳の「視覚野」が活発になることが分かっています。電気的な活動パターンが視覚野に集中するのです。
神谷はそのパターンを読み取り、コンピューター上で夢のイメージを再現できないものかと考えました。
脳の活動は視覚的な出来事が変換されたもの、または暗号化されたメッセージだと捉えることができます。
私たちが脳内で作るイメージはかなりゆがんでいて、レンズが割れたメガネでものを見た時のようです。
しかし、割れたレンズを通して見えるイメージを注意深く再構成すれば元の形に近いものが再現できるはずです。
高性能なコンピューターを使えば、バラバラのイメージからきちんとしたイメージを再現できるかもしれません。
神谷は視覚野に入力されたイメージが脳の活動パターンに変換される仕組みを解き明かそうとしました。
人間を被験者にして、脳の活動を計測しました。
まず被験者に脳をスキャンできる機械に入ってもらいます。その状態で1回の実験につき数百から数千のイメージを見せます。
見せるイメージは白と黒の単純な形。四角形十字直線などです。
コンピューターを使って視覚野における脳の活動パターンを記録します。
同じ被験者で何度か実験を行うとコンピューターはそれぞれのイメージを見せた時の脳の活動パターンを識別できるようになります。
つまり、脳の活動から逆算して被験者の見ているイメージが分かるわけです。次に、全く新しいイメージを被験者に見せます。
そしてコンピューターに被験者の脳の活動パターンからどんなイメージを見ているのかを推測させます。
これはコンピューターが脳の活動パターンから推測したイメージです。
脳の活動パターンを見ただけで、おおまかな形を再現することに成功しています。
神谷、「脳の活動パターンを調べることで人が見ているイメージを再現することに成功しました」
この方法を応用して、睡眠中に見ている夢を再現することに取り組んでいます。
これまでのところ、白黒の単純なイメージしか再現できていませんが、さらに技術が進歩すればフルカラーの鮮明な映像が見られるようになるかもしれません。
それは私たちの魂を覗く窓となるでしょう。
人間の心の無意識の部分こそ「私たちは何者か」を明確にするものです。
私たちは他人の目を意識せずに夢を見ています。
その内容を明らかにできれば、自分の心の奥深くに潜んでいるものを理解できるかもしれません。
http://www4.nhk.or.jp/P3452/