じじぃの「人の生きざま_626_シシリー・ソンダース(医師・看護師)」

Cicely Saunders - Total Pain and Modern Hospice Movement 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=mAU2p5bN4II
Cicely Saunders

20世紀の3人の偉大な女性 VOL.11 (2006.9.15) - 倉敷中央病院
質問: 死にゆく人たちのケアにたずさわった20世紀の3人の偉大な女性とは?
答え: ノーベル平和賞、テンプルトン賞 (宗教界のノーベル賞)を受賞した皆さまよくご存知のマザー・テレサ(1910 - 97年)。「死の瞬間」という本を著してテイヤール・ド・シャルダン賞を受賞したエリザベス・キュブラー・ロス博士(1926年 - 2004年)。テンプルトン賞と国家に功労のあった人に贈られるデイム(男爵夫人)の称号を受けたシシリー・ソンダース先生(1918年 - 2005年)です。今回は、現代ホスピスの創設者、シシリー・ソンダース先生の話をします。
参考文献:シシリー・ソンダース(シャーリー・ドウブレイ著、若林一美訳、日本看護協会出版会、1989年)
http://www.kchnet.or.jp/for_medicalstaff/carenews/carenews11.pdf
『医療の歴史 穿孔開頭術から幹細胞治療までの1万2千年史』 スティーブ・パーカー/著、千葉喜久枝/訳 創元社 2016年発行
高齢者のための医療と介護 (一部抜粋しています)
慢性疾患の入院治療は何世紀もの間、たいていはホスピタル騎士団などの修道会により施されてきた。比較的最近ではフランスが先頭に立ち、1800年代に専門施設を創設し、1879年にはアイルランドのダブリンに聖母ホスピスが開設され、重病の末期患者――その多くは結核をわずっていた――のための新たな治療の哲学と水準をもたらした。
およそ1世紀後の1967年、革新的なホスピスがロンドンに開設された。セント・クリストファー・ホスピスは、新たなホスピス運動を始めた。看護婦でソーシャル・ワーカーの改革家シシリー・ソンダースによって設立された。当時多くの末期患者が、病棟で死ぬまで置き去りにされるか、自宅で家族に世話されるかであった。ひとたびこうした患者が治る見込みがないとされると、彼らの要求や快適さにはほとんど注意が払われなかった。特に痛め止めは不適当とされた。ソンダースはある臨床背景で痛みの管理を研究しており、少量のモルヒネオピオイドを定期的に経口投与することで痛みを軽減でき、副作用もそれほどひどくないことを示した。瀕死の患者にできることはもはやないことを認めるどころが、常に「やらなければいけないことはもっとたくさんある」と主張した。
セント・クリストファーでソンダースは、顧問医師と研究者から薬理学者と看護師まで、さまざまな分野の専門家を集めた熟練したチームを招集した。彼女の目標は、全体観的な治療法にのっとった最高水準の医療を重症の末期患者の心のこもった看護にもたらすことであった。セント・クリストファーにおける初期の疼痛寛解計画のひとつに、痛め止めに使うジアモルフィンなどのオピオイドの効果の比較が含まれていた――スタッフの大半はどれが管理しやすく、眠気や吐気などの副作用が少ないかについて独自の意見を持っていた。小規模な予備的研究のあとに700人の患者を対象とした2年間の試験が行われ、将来の利用に備えた臨床的根拠を与えた。さらにソンダースは痛みの概念を「全人的痛み」にまで広げ、肉体的、感覚的な痛みばかりでなく、感情的、心理的、精神的痛みを加えた。
セント・クリストファーは現代のホスピス運動の模範となった。ソンダースは精力的に各地をまわって講演をし、執筆活動をおこなった。さらに彼女は、合衆国でホスピスケアを創始したイェール看護学校の学部長フローレンス・ウォールドなどに影響を与えた。1950年代に医師の資格を取ったソンダースは25以上もの名誉学位と英国医師会の金メダルを授与された。彼女は英国の3つの王立協会(看護、内科医、外科医)の会員で、1979年には大英帝国勲位の敬称デイムが授けられた。2005年にセント・クリストファーでその生涯を終えた。