じじぃの「人の生きざま_615_ビル・エモット(ジャーナリスト)」


ビル・エモットの「世界からの警鐘」 2014年8月6日 日経ビジネスオンライン
ジャーナリスト、作家。英エコノミスト誌・元編集長。
1956年生まれ。英エコノミスト誌の元編集長。東京支局長を経験した知日派。最近ではイタリア人ジャーナリストで映画監督のアナリサ・ピラス氏とNPO(非営利団体)「The Wake Up Foundation」を設立。同NPOの会長として、西欧社会の衰退に警鐘を鳴らす。昨年、このNPOの活動の一環として、イタリアを題材にした欧州危機のドキュメンタリー映画「Girlfriend in a Coma」を公開した。
●2050年の日本の活力は? 高齢化の影響は最低限に抑えられるかもしれない
作業はまだ途上だが、日本の「2050年」を少し考察してみよう。まず人口統計である。日本が世界で最も高齢化が進んでいるのは周知の事実だ。今後、劇的な出生率の改善、あるいは移民政策が実現しない限り、2050年に日本の人口の約4割は65歳以上となる。
経済協力開発機構OECD)は、65歳以上の世代を「年配者」「他人の援助が必要」と表現し、ややネガティブに捉えている。しかし、日本の現実を見ればやや認識が古く、ミスリーディングと言わざるを得ない。少なくとも現在の日本の65歳から75歳に当たる世代の環境は急激な変化を遂げている。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20140117/258374/
『戦後70年 にっぽんの記憶』 橋本五郎/編、読売新聞取材班/著 中央公論新社 2015年発行
日本企業 また昇る 英エコノミスト誌元編集長 ビル・エモット (一部抜粋しています)
第二次世界大戦後、日本は世界2位の経済大国になるまで成長した。要因はいくつかあるが、第1に世界全体の状況が良かった。「ブレトンウッズ体制」の下、安定した経済環境が維持されていた。2つ目は、労働力を、農業など生産性の低い産業から、工業に移行させることに成功した。
欧州でも、第二次世界大戦後の時代のことを「栄光の30年」と呼んでいる。韓国やイタリアも成長したが、日本が最も高度成長を実現した。
私が注目しているのは、日本社会のまとまりの良さだ。1960年以降、良好な労使関係などを背景に、日本企業の生産性は飛躍的に高まった。西ドイツの2倍にあたる約1億人の人口を抱えていたことも大きい。
日本は今、少子高齢化が進み、労働力人口の減少局面を迎えている。私は2005年、小泉内閣末期に「日はまた昇る」という本を書いた。当時、私は日本が市場の自由化と構造改革を進める局面に入ったと信じたが、振り返れば時期尚早だった。小泉内閣後、日本政府は不安定で、短命政権が続いた。
安倍首相が掲げる「アベノミクス」で、ようやくその路線が再開されることになったが、現状の評価はネガティブ(否定的)だ。家計部門の所得は上がっておらず、この状況ではデフレからの脱却は難しい。
有効なのは、女性と高齢者の活用だ。日本の場合、75歳になっても働いている人がおり、高齢者の活用という点では先進的と言える。
女性が子育てしやすい環境を作らなくてはいけない。スウェーデンのように、真の意味で、男性も女性と同様に育児休暇を取れるようにする。女性が家庭生活を送りながら、責任ある仕事をこなせる環境を整えていく。女性の労働参加率を高め、同時に出生率を上げる。これこそが、日本が実行すべきことだ。
      ・
日本の強みは、「おもてなし」の精神に代表される丁寧なサービスだ。それなのに、多くの日本人のメンタリティー(考え方)は70年代、80年代のままで、製造業におだわりがちだ。日本経済の約7割はサービス産業。きめ細やかなサービスが得意という日本の強みを、もっと有効活用すべきだろう。