じじぃの「人の死にざま_1657_アルフレッド・アドラー(精神科医・心理学者)」

アドラー 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=AgYIjXTyLyY
【紹介】アドラー『人生の意味の心理学』 2016年2月 100分 de 名著 (岸見 一郎) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=OFvfFv4DK1k
「嫌われる勇気をもて」アドラーの人生論を易しく学ぶ・・・シンプルで実践的な心理学 J-CASTテレビウォッチ
心理学者アルフレッド・アドラー(1870〜1937)は、「嫌われる勇気をもて」など常識を覆す幸福論を掲げ、悩める人々の人生の指針として現代でも読まれている。独自の実践的な「個人心理学」を打ち立て、教育、人材育成、カウンセリングといった領域に影響を与えている。その主著「人生の意味の心理学」を解説する。
オーストリア生まれのアドラーは、第一次世界大戦の悲惨な体験を通じ、人間の心理の本質を探究した。その思想は、過去の原因ではなく未来の目的を重視し、「いつでも『この瞬間』から、自分自身で人生を変えられる」というポジティブな人間観に貫かれている。
http://www.j-cast.com/tv/2016/02/01257081.html
『Voice ボイス』 2016年4月号
老親介護と「嫌われる勇気」 【執筆者】岸見一郎(哲学者) (一部抜粋しています)
心理学の巨頭、アルフレッド・アドラーの思想を取り上げ、対人関係の処方箋を明快に提示したミリオンセラー『嫌われる勇気をもて』(ダイヤモンド社)。著者(原案を担当)の岸見氏は脳梗塞で母親を亡くされたのち、晩年にアルツハイマー病の認知症を患った父親の介護に携わる。「アドラー心理学を学んだことで、幼いころからうまくいかなかった父親との関係を修復し、介護をスムーズにした」という。アドラーは「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と説く。介護に携わる人が抱える人間関係の悩みは、アドラーの教えによってどのようにして解決されるのだろうか。岸見氏から介護体験を基にした親との関係の築き方、生きる姿勢を教わった。
――親の介護は避けては通れない問題です。「自分の親は大丈夫」と安心していても、いつ直面するかわかりません。岸見先生は、お父様の介護に携わる前に何か準備をされていましたか。
岸見 認知症について基本的な知識はもっていても、介護に関わることはほとんど把握していませんでした。不思議なもので、これだけ本やインターネットで認知症に関する情報が溢れていても、身近にいる人が病気にならないと、病気の症状や介護について調べようとは思わないものです。 その意味では、まだ親が元気なうちに介護の現実をすることが非常に有用です。
――テレビ等での報道を見ると、「介護=大変」というイメージを抱きがちです。
岸見 実際に経験してきた立場からすれば、介護は誰にも等しく辛いわけではありません。それは介護者自身が「介護をどう意味付けるか」に深く関係しています。 これから介護に関わる人や、いま介護の渦中にいる人に私が伝えたいのは、介護は必ずしも苦痛ばかりではなく、新しい親子関係を築くチャンスだということです。 私は幼いころから、父との関係がうまくいっていませんでした。「小さいときに殴られた」「自分の生き方を親が認めてくれなかった」という過去の記憶に縛られて、最初のあいだは、介護はただ辛い仕事でしかありませんでした。 しかし、私はあるときに気が付きました。「私は父との関係を改善させたくないので、殴られた過去の記憶を自ら持ち出しているのだ」と。「あのとき殴られたから関係が悪くなった」というのは、フロイト的な原因論の発想です。対してアドラー的な目的論の立場から見ると、父との関係悪化は自分の人生がうまくいかないことを父のせいにしたい、という「目的」によるものだった。 このことに気付いてから、私は介護を含めた親との接し方が変りました。理想の親を頭に描かず、目の前で生きている現実の親に「一人の人間」として向き合うことを出発点に、介護を受け入れるようになったのです。 心理的な距離が近い親といえども、自分以外の人間を変えることはできません。介護の対象を変えることができない以上、介護をする人が、親についての見方を変えるしかありません。アドラーが指摘するように、人は他者を変えることができず、自分を変えることしかできないのです。
 親は年を重ね、少しずつ老いていきます。認知証であれば、親が子供である自分のことを誰かわからなくなるということも起こりえます。それなのに介護する側が、親自身が忘れてしまった記憶にいつまでも固執しても何も変わりません。介護者がいま自分と親の置かれている現実を受け入れ、自分に何ができ、何ができないか」をきちんと認識することが重要です。どうにもならないことはきっぱり諦めて受け入れる。それだけで、何年続くかわからない介護の不安も軽減されます。
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――なるほど。その一方で、認知症の親が「自分に価値があると思えない」場合は、どうすればいいのでしょうか。
岸見 自分の価値を生産性にしか置いてこなかった人にとって、老いは苦しいものになります。また、老いの現実を受け入れられなくなった人が、認知症という症状に逃げていることもあります。たとえば若いころから「先生」と呼ばれて尊敬される人生を送ってきた人が、退職した途端、誰からも「先生」と呼ばれなくなると、現実を受け入れられずにショックを受け、認知症になるケースがあります。 その場合では、人生の早い段階から自分の価値を生産性や肩書で測らないことが、認知症の予防にもつながります。 認知症の親を援助する側も、過去との比較や現在の生産性で親の価値を判断しないようにすべきです。いまここにいる親の存在に価値を置き、毎日「ありがとう」と言葉を掛ける。介護で疲れてつい感情的になることがあっても、「今日、一緒に生きられてよかったな」と思ったら「お父さん、ありがとう」と一言伝えればいいのです。すぐに自分の言葉が忘れてしまっても、「自分が生きていることが家族のためになっている」という貢献感を親が自覚すれば、少なくともその瞬間は自身につながります。
 アドラーも「人は、自分に価値があると思えたときにだけ、勇気をもてる」と述べています。家族の対応の仕方によって、認知症の症状をなくすことは不可能だとしても、親の性格はずいぶん穏やかになるはずです。