ひとり暮らしこそ老後の理想型です?
“高齢おひとりさま” のほうが気楽!「ひとり暮らしこそ老後の理想です」
週刊女性 2018年3月27日号
少子高齢化の日本でいま急激な勢いで増えつつある単身世帯。2040年には国民の4割がひとり暮らしになると予測されている。
女性は男性より平均寿命が7年も長く、子どもがいても、やがては巣立つ。いつかはやってくる「おひとりさま」状態に不安を感じている読者は決して少なくないだろう。
「いえいえ。ひとり暮らしこそ老後の理想型です」
https://www.jprime.jp/articles/-/11906
『文藝春秋 2019年6月号』
「在宅ひとり死」のススメ 第3回 認知症で自己決定できなくなったら 【執筆者】社会学者 上野千鶴子 より
「2025年問題」のもうひとつの側面は、団塊世代がすべて後期高齢者になることに加えて、「認知症700万人時代」、高齢者の5人に1人が認知症になる時代だということだが、誰がなるかは確率論の問題のような気がする。認知症者の疫学的研究では、糖尿病のひとはなりやすいとか、社会参加のネットワークのあるひとはなりにくいとか、難聴になると認知症になりやすくなるとか、いろいろなデータが取り沙汰されている。
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最近、多職種連携チームのなかに、薬剤師さんが参加することの重要性が言われているが、もしわたしが要介護者になったら、投薬管理などやめてほしいものだ。
だから、講演ではこんなふうに話すことにしている。このなかの5人に1人が認知症になるとしたら、どなたでしょうかね。その方を待っている運命が、拘束か薬漬けか、ふたつにひとつだとしたら、どちらがお好き?……と。5人に1人の高齢者を待ち受ける近未来が、物理的か生理的、そのいずれかの行動抑制という名の虐待だとしたら……あんまりである。
独居の在宅認知症患者
施設入居者の大半が家族の意思決定によるものであることには、理由がある。入居者のほとんどに認知症があり、意思決定能力を欠いているからである。騙されて連れてこられた認知症高齢者が「出してくれ」「家に帰りたい」というのは当然の要求で、これは「帰る妄想」でも「暴言」でもない。なら独居だったら?
薬を使わない精神科医として有名な認知症ケアの専門家、高橋幸男医師の「からくり理論」によれば、問題行動と呼ばれる症状にはすべて「からくり」があり、その原因をつくる誰かが周辺にいるという(『認知症はこわくない 正しい知識と理解から生まれるケア』NHK出版 2014)。それなら独居の認知症患者は、「からくり」が発動しない環境にいることになる。疫学的調査ができるほど事例数は多くないが、高橋医師の経験的な臨床例によれば、「ひとり暮らしの認知症の人は、BPSD(行動・心理症状)は軽い印象があります。興奮や暴力は明らかに少ないですし、介護拒否や『帰る』妄想、人物誤認妄想、物盗られ妄想や嫉妬妄想なども多くはありません」と指摘し、「家族と暮らす場合とは異なります」と指摘し、「家族と暮らす場合とは異なり……日々叱られ続けるストレスはきわめて少ない」とあって、やったね! と思った。高橋医師に限らず、認知症対応に関わる複数の医者から聞いた話でも、独居の認知症患者さんの方が周辺症状が穏やかで機嫌よく暮らしているということだった(もちろん個人差はあるが)。