じじぃの「人の生きざま_174_田辺・鶴瑛」

田辺鶴瑛プロフィール
http://www.tanabekakuei.net/akabi/kakuei_04.htm
ふらっと 講談師 田辺鶴瑛さん
http://www.jinken.ne.jp/aged/tanabe/index.html
NHK いっと6けん 「体験語る“介護”講談」 2011年1月26日 より
【キャスター】石井麻由子 【ゲスト】講談師 田辺鶴瑛
講談師・田辺鶴瑛さん(54歳)。自らの介護経験をもとにした"介護講談"を全国各地で披露しています。
講演会場で介護講談をしている田辺の映像が流れる。
田辺さん、「金出さない、手も出さないなら、一切口も出さない。これが介護のルール鉄則でございます」
(会場、笑い)
自宅のベッドで義父を介護している田辺さんの映像が流れる。
田辺さん、「おじいちゃん。お水、飲むよ」
現在、夫の父を在宅で介護中の鶴瑛さん。苦労を笑いに変える介護について、講談とともにお話を伺います。
石井 田辺さんは実のお母さま、そして夫のお母さまを介護した経験をお持ちで、現在は夫のお父さまを在宅で介護されていらっしゃいます。その経験を全国各地で"介護講談"を全国各地で披露していらっしゃるということですが、講談というと歴史上のイメージが強いのですが、なぜ介護を講談しようと思われたのですか。
田辺 義母が亡くなったとき、田辺一鶴と出会いまして、前座修業をし、二つ目になった時、池袋の男女平等推進センターエポック10というのがありまして、そこの副館長さんに「あなたの体験を講談にしてください」と、仕事を依頼されたのが介護だったのです。
山梨県甲府市。この日は介護用品を扱う会社が主催した講演会。介護している人たちも招待されました。
田辺さん、「私は自分の親を介護しました。今長男の嫁です。介護しますということでおばあちゃんの介護をすることになりました。私は介護の仕事が本当に好きだったら、きっと、介護職とか看護婦さんになっていたと思うんですが、あんまり好きじゃないけど。なぜやったかというと、良い嫁にみられたい。車イスに義母を乗せて散歩する嫁。美しいでしょ。いいお嫁さんでしょ。だから世間の人が誉めてくれるんじゃないかと思ってたんですが、誰も誉めてくれない
講演会場で介護講談をしている田辺の映像が同時に流れる。
石井 義父さんは、今どんなお方なんですか。
田辺 認知症の寝たきりなので、歩ける認知症は目が離せないですが、目を離しても、どこにも行かないので楽です。
講演会場で。
田辺さん、「認知症なので、夜中に助けてくれ、助けてくれ〜。どうしたの。水を飲ませると、またグーと寝る、また30分経つと、助けてくれ〜。もう朝まで寝たんだか、寝てないんだか分からない。翌日、なんだか頭の中が壊れたレコードのようになっていまして。こりゃあマズいなと思ったので、どうしたかというと、耳栓を買ってきたんです。でも聞こえるんです。すぐに行かないでいると、なぜ来ないんだバカ。バカと言われてカッとなった私は、バカに介護されるあんたは何なんだ。大バカだあ。これはいいなあ。私は気が強いから。気の弱いというか、やさしい人はグッと我慢してしまって、うつになってしまうから。ぜひ、相手にお返ししましょう。バカと言われたら、バカと言うのがいいですね。長く続く介護の場合、ええ格好しても続かないので、泣き叫びながらやったらいいんじゃないですか」
石井 自分の経験を本当に赤裸々に、本音(ほんね)で語っていらっしゃいますね。
田辺 さらけ出してやるので、お客さんもすっきりするのと、こんなバカにでも出来んじゃないかと、ホッとするんじゃないですか。
石井 介護を在宅で、というのはどうしてですか?
田辺 実母も義母も病院で看取ったんですね。病院というところは先生が立派な方で一生懸命やってくれるんですが、本人はちっとも嬉しそうじゃない。なんか痛々しい。それだったら畳の上で看取ったら、人間らしく死ねるんじゃないか。ちょうど、おじいちゃんが実験材料になったのです。
石井 いろいろ、ご苦労もあることでしょうね。
田辺 最初は慣れないので、こっちも頑張りましてね。何やっているんだバカと。認知症の場合、同じことを何回も繰り返すんですね。家族にとって同じことを聞くというのは耐えられないんです。友だちの看護婦さんがこんなに頑張っていて、倒れたら誰が面倒見るのって。共存共栄するように、長続きするような介護をしないと。と言われてホッしました」
石井 3人の介護をなされて、心情とされることは何ですか?
田辺 嫌いなことは無理してやらない。私は料理が苦手で無理して作ったんですが、(おいしくないのに)おじいちゃんがおいしいよ。と言ってくれたんです。おじいちゃんは大人だなあと。
石井 頑張ると見返りを期待してしまいますものね。介護とはどういうものでしょうか。
田辺 最初は嫌いで、天敵だと思っていたおじいちゃんから、「ありがとう。あかみは天使だね」と言われて。おじいちゃんが私に老い方、死に方を教えてくれて。私も間のあたりにして、私自身死ぬのが恐くない。老いるのも恐くないと思えるようになりました。

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『徹子 ザ・ベスト 』 黒柳徹子/著 講談社 2011年発行
私は、「好奇心」で出来ています (一部抜粋しています)
テレビで、田辺鶴瑛(かくえい)さんという講談師のかたが、講談介護というのをやっているのを観ました。田辺さんは、若いときは自分の母の介護をして、それから義母の介護、最近になって、義父の介護もするようになった、介護のエキスパートです。でも、介護って真面目にやるとつらいから、彼女は、すべてを講談風の、お笑いにしていくんです。その、義理の父のことも、名前じゃなくてキムタクさんだったか、イチローさんだったか、何かとても素敵な名前で読んであげて、「はい、顔をタオルで拭きまーす!」なんて、自分のするべき行為を颯爽(さっそう)と口にしたり、その義理の父に、「早稲田の校歌、お願いしまーす!」なんて頼んだり、そうやって、義務的な行為も講談に置き換えると、疲れないんですって、そして、されるほうも、すごく楽しそうなの。
誰にとっても日常は、そんなにラクなものじゃない。だから、扮したり、演じたり、ちょっとした非日常を自分で演出することが、元気ややる気に繋がっていくのかもしれません。

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