じじぃの「人の生きざま_562_鵜高・重三(応用微生物学)」

名古屋大学名誉教授の鵜高重三さん死去 2015年4月12日 朝日新聞デジタル
 鵜高重三さん(うだか・しげぞう=名古屋大名誉教授・応用微生物学)が11日、肺炎で死去、84歳。
細菌の研究を続け、1966年に日本学士院賞を受賞、2008年に瑞宝中綬章を受けた。
http://www.asahi.com/articles/ASH4D4TMSH4DOIPE00N.html
グルタミン酸の構造式

鵜高重三(うだか しげぞう) コトバンク
1930−2015 昭和後期-平成時代の応用微生物学者。
昭和5年8月17日生まれ。協和発酵研究員、理化学研究所所員などをへて、昭和46年名大教授となる。退官後、東京農大教授。
アミノ酸やタンパク質の微生物による生産法の研究で知られる。41年学士院賞(木下祝郎らとの共同研究)。平成27年4月11日死去。84歳。東京出身。東大卒。

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『薬学教室へようこそ いのちを守るクスリを知る旅』 二井將光/著 ブルーバックス 2015年発行
微生物から受ける恩恵 (一部抜粋しています)
抗生物質が発見される遥か前から、生物の多様性はヒトに恵みをもたらしてきました。ワインや酒(エタノール)、ヨーグルト、味噌、醤油、納豆を例に挙げるまでもなく、酵母、枯草菌、乳酸菌などによる発酵食品は古くから私たちの生活に役立っています。現代ではアセトン、ブタノール、酢酸、クエン酸グルタミン酸など多くの有用な物質を微生物が提供しています。
グルタミン酸(図参照)はタンパクを構成する20のアミノ酸の1つで、1908年に池田菊苗(東京大学)によって昆布の旨み成分として同定されました。グルタミン酸は昆布のほかトウモロコシからも取ることができますが、精製するのは大変でした。そこで考えられたのが微生物の活用です。グルタミン酸はタンパクを構成している必須の成分ですから、微生物が細胞の外で大量生産することはあり得ないと考えられていたのですが、この常識を打ち破り、1956年に鵜高重三協和発酵名古屋大学)がグルタミクム菌によるグルタミン酸の生産法を開発しました。
菌を何十トンという大きなタンクで2〜3日ほど培養し、菌を除いた後で培地を酸性にすればグルタミン酸が沈殿します。このようにして、年間に数百トンにもおよぶグルタミン酸が生産され、安価な調味料として使えるようになりました。これだけのグルタミン酸を昆布やトウモロコシから取り出すのが不可能なのは想像できますね。日本では味の素、外国ではグルタミン酸ナトリウム塩の意味からMSG(MonoSodium Glutamate)と呼ばれる調味料になり、食生活に変化をもたらしました。
この成果によって、微生物がアミノ酸を作るという新しい概念ができあがりました。その結果、リジン、メチオニンアスパラギン酸フェニルアラニンなど10種以上におよぶアミノ酸も微生物から生産できるようになり、栄養強化剤、調味料、飼料などに用いられています。アスパラギン酸フェニルアラニン人工甘味料の原料になっています。