じじぃの「人の生きざま_506_ジョン・ヴェイン(アスピリン)」

アスピリン

アセチルサリチル酸 通信用語の基礎知識
アスピリンの名で知られる非ステロイド系解熱鎮痛剤、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、抗血小板製剤。アセチル化されたサリチル酸アスピリンと呼ばれるが、ピリン系ではなく非ピリン系である。
風邪薬の代表的成分で、ドイツのバイエル(Bayer)社のFelix Hoffmann(フェリックス・ホフマン)博士(当時29歳)によりリウマチの薬として1897(明治30)年8月10日に開発された。アスピリン(ASPIRIN)はバイエル社登録商標である。
【作用機序の解明】
ちなみにアセチルサリチル酸は発明後70年以上、作用機序が不明だった。理由は分からないが効くので使われ続けたわけである。
1971(昭和46)年になりイギリスのジョン・ヴェインにより、プロスタグランジン(PG)合成抑制作用が確認され、もって身体の痛みの伝達の阻害に作用することが判明した。ジョン・ヴェインは1982(昭和57)年にノーベル医学賞を受賞している。
http://www.wdic.org/w/SCI/%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%AB%E9%85%B8
ジョン・ベーン ウィキペディアWikipedia)より
ジョン・ロバート・ベーン(Sir John Robert Vane、1927年3月29日 - 2004年11月19日)は、イギリスの薬理学者。輔仁大学名誉博士
彼は18年間、イギリス王立外科学会の中にあるロンドン大学基礎医学研究所に勤めた。この間に彼は重要な科学的な発見に結びつきいくつかの生物学的検定の技術を開発した。これがプロスタグランジンの生合成を阻害することを発見したため、1977年にラスカー賞、1982年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。

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『 医と人間』 井村裕夫/著 岩波新書 2015年発行
薬というもの――その歴史と現状 (一部抜粋しています)
そもそも薬というものは、多くは植物の成分の経験的使用で出発したものです。だから薬という字は草冠に楽と書くでしょう。私が学生時代、40年ぐらい前でしょうか。その時代にすでに今の70%ぐらいの薬はあったと思います。それらはほとんどが、このような経験的に使用した植物からの抽出成分とそれに由来する合成化合物で成り立っていました。しかし、薬について書かれた当時の教科書には、それらの薬がどのような生体内分子に働いて、その結果どういう作用を起こすから薬として働くのかということは、ほとんど記載がなかったですね。ところが、今の薬理学の教科書には、記載されている薬のほとんどで作用メカニズムの記述があります。
例えば、アスピリンという薬があります。このもとになったのはサリチル酸ですが、これが同定される前に、1000年も2000年もの間、これを含む柳の樹皮は解熱や鎮痛作用があることで使われてきたのです。その成分のサリチル酸が抽出されたのは19世紀に入ってからです。それが改良されてアセチルサリチル酸(薬の名前がアスピリン)が合成され、世界中に広まったのです。しかし、なぜ鎮痛や解熱作用があるのかわからないまま使われてきました。薬にはそういうものが多かったのです。イギリスのジョン・ヴェインがアスピリンは、プロスタグランジンの生合成を抑えて鎮痛効果や解熱、抗炎症作用を起こすことが明らかにしたのが1971年です。その後、私たちの研究でプロスタグランジンの受容体が明らかにされ、プロスタグランジンが発熱を起こすメカニズムや痛みを促進するメカニズムが解明されました。アスピリンという薬が化学合成され使われだしてからでも、ほぼ100年も経って、やっとこの薬物がどうして効くのかがわかったのです。