じじぃの「人の死にざま_1480_ジェラール・フィリップ(俳優)」

GERARD PHILIPE "Le diable au corps" 1947 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=THKrjYV1Jlk
GERARD PHILIPE 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=5RE84LdKcOg
ジェラール・フィリップ

ジェラール・フィリップ ウィキペディアWikipedia)より
ジェラール・フィリップ(Gerard Philipe, 1922年12月4日 - 1959年11月25日、本名はGerard Albert Philip)はフランス・カンヌ出身の俳優。1940年代後半から1950年代のフランス映画界で、二枚目スターとして活躍、1950年代のフランスの美としてその人気を不動のものとした(ちなみに1940年代の美はジャン・マレーであり、1960年代の美はアラン・ドロンである。またその持ち味も、マレーが感性、ジェラールは知性、ドロンは野心の美とそれぞれ違う)。愛称はファンファン(Fanfan)。また、フランスのジェームズ・ディーンとも呼ばれている。
肉体の悪魔 (あらすじ) ウィキペディアWikipedia)より
1917年、第一次世界大戦の最中、「僕」は年上の女性マルトと恋に落ちた。マルトには出征中のジャックという婚約者がいて、間もなく二人は結婚したが、その時にはマルトのジャックに対する愛は冷めていた。夫が前線で戦っている間、「僕」とマルトは毎晩のように愛し合った。そんなある日、マルトが「僕」に打ち明けた。妊娠したことを……。

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『人は道草を食って生きる』 赤瀬川隼/著 主婦の友社 2001年発行
ジェラール・フィリップ、気品あふれる美神の寵児 (一部抜粋しています)
神の特別な寵愛を一身に受けて生まれ、人並外れた才能を発揮し、その神の寵愛の深さゆえに夭逝する。そのシナリオには、神のねじれた分身としての悪魔の影もつきまとう。
例えば音楽では35歳で死んだW・A・モーツァルト、文学では『ドルジェル伯の舞踏会』や『肉体の悪魔』のレイモン・ラディゲ、彼の享年はわずか20年だった。
画家にもこと欠かない。その1人は36歳で命尽きたアメデオ・モジリアニである。そのシナリオにふさわしい俳優を1人挙げよといわれれば、僕はためらいなく、ジェラール・フィリップの名を挙げる。モーツァルトの天才は音楽という美に捧げられ、ラディゲの天才は文学という美に捧げられ、モジリアニの天才は絵画という美に捧げられて尽きた。それでは俳優の天才は何に捧げられるのか。それは、例えば上記に挙げた天才たちを含むあらゆる人間存在な中に創造し再現することに捧げられる。平たく言えば、彼は誰にでも成り代わり、観客の前にその「誰」を生き直してみせるのだ。こうしてジェラール・フィリップは、ラディゲの分身を演じ、モジリアニを演じ、36歳で死んだ。
ジェラール・フィリップを僕が初めてスクリーンで見たのは、ラディゲ原作によるクロード・オータン・ララ監督『肉体の悪魔』(1947年)。日本で公開されたのは52年、僕は20歳だった。第一次大戦下、婚約者を戦場に取られた女を恋う17歳の高校生を演じるフィリップが、実際は24歳だったと後で聞いたが、たいした違和感はなかった。早熟で繊細な高校生の、天空に巣立とうとする鳥のおののきと豪胆さ、薄いガラスのような危うさと大人の支配する世の中へのシニシズム、その10代の感性がみずみずしく表現されていた。
やんちゃな光を放つ大きな瞳、その下を支えるやや高い頬骨、くぼみ気味の頬から小さく優雅な顎にかけての線、引き締まった薄い唇、その繊細で不遜な美貌を支えるのが、いかにもはかなげで細い首筋である。体全体もやせぎすで、それを形のいい長い脚が支える。そのシルエットのすべてに、僕は貪欲な神の寵愛を一身に受けて生まれた男のはかない運命を感じる。もちろんこれは僕の20歳のときの感想ではなく、『肉体の悪魔』をビデオで再見して改めて感じるものである。
驚くべきことに上記に挙げた彼の容貌とシルエットは、36歳で死ぬまで寸分も変わらなかった、というのが僕の印象である。