じじぃの「人の死にざま_1272_W・ドジッター」

宇宙膨張 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=gPvuRRHa2zQ
The Expanding Universe /Nova HD 1080p 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=CcJ2u1BAL4I
ウィレム・ド・ジッター

ド・ジッターの加速する宇宙

科学の回廊 「宇宙論赤方偏移ドップラー効果である」
1929年、ウィルソン山天文台で観測を続けていたハッブルは、銀河のスペクトルが示す赤方偏移(z=Δλ/λ)が、太陽からの距離にほぼ比例するという「ハッブルの法則」を発表した。1910年代にスライファーが渦巻星雲(後に銀河と同定される)のスペクトルについての系統的な観測を始めた頃は、赤方偏移を星雲の運動に起因するドップラー効果によるものと解釈するのが一般的だったが、この解釈をそのまま当てはめると、「ハッブルの法則」は、天の川銀河を中心として、全ての銀河が距離に比例する速度で遠ざかっていることを意味する。ハッブルは、こうした“不自然な”解釈を採らず、おそらく理論家からのアイデア提供に基づくのだろう、論文で次の2つの見方を提出した。
1.ドジッター模型に現れる相対論的効果 : 遠方ほど時間の経過が遅くなるように見えるため、振動数が小さくなって赤方偏移が起きる。
2.光子の消耗 : 光子のエネルギーは、アインシュタインの関係式 E=hνによって振動数νと結びついている。従って、宇宙空間を伝播する過程で未知の理由によりエネルギーが減衰するならば、距離に比例する赤方偏移が生じる。
このうち、第2の解釈はデータに基づいて否定された。第1の解釈は、ドジッター模型の曖昧さ(物質を含まない真空だけの宇宙模型なので、何が起きているか捉えにくい)によってわかりにくくなっているが、実際には、宇宙全体が膨張する効果と同等である。歴史的には、エディントンが、アインシュタインの宇宙模型が動的に変化する場合を考えれば「ハッブルの法則」を説明できると気づき、「宇宙は風船のように膨らんでいる」という印象的なイメージをアピールしたこともあって、1930年代初頭に宇宙膨張モデルに基づく解釈が一般的になる。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/kairo36.htm
ウィレム・ド・ジッター ウィキペディアWikipedia)より
ウィレム・ド・ジッター(Willem de Sitter, 1872年5月6日 - 1934年11月20日 、デ・シッテルとも)は、オランダの天文学者。フリースラント州・Sneek 生まれ。ライデン天文台の台長をつとめた。
1917年に、アインシュタインの重力方程式の解のひとつとしてド・ジッター宇宙モデル(密度と圧力がゼロ、しかし宇宙項は正の値をとる)を発表した。

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宇宙論大全 相対性理論から、ビッグバン、インフレーション、マルチバースへ』 ジョン・D・バロウ/著、林一、林大/訳 青土社 2013年発行
第二の宇宙:デシッテルの、物質のない運動の宇宙 (一部抜粋しています)
アインシュタインの宇宙方程式を探った次の科学者は、傑出したオランダの天文学者ウィレム・ド・ジッター(デシッテル)だった。デシッテルは、戦争中オランダが中立を保っていたことの恩恵を受け、アインシュタインと手紙のやりとりをした。また、イギリスの天文学者たちと緊密な接触を保った。そのうちの特筆すべき一人アーサー・エディントンは、月に一度ピカデリーで開かれる王立天文学の集まりの1917年の講演者のプログラムを組んだ。天文学会に向けておこなわれた3番目の発表の中でデシッテルはアインシュタインの方程式の新たな解を明らかにした。
デシッテルはアインシュタインの新しい斥力を受け入れたが、宇宙の物質密度はゼロと見なすことにした。もちろん現実の宇宙は空っぽではない。だが、密度は低いので、物質が引力として及ぼす重力の効果は、アインシュタインの斥力である「Λ(ラムダ)」とくらべれば完全に無視できるとデシッテルは見なしていたのだ。アインシュタインの宇宙と違ってデシッテルの宇宙はユークリッド的で、広がりが無限だった。
デシッテルの宇宙は、見つけるのはたやすかったが、解釈するのはそれほどたやすくなかった。遠い天体からくる光は波長が引き伸ばされ、したがって赤みがかり、光源までの距離が増すほど引き伸ばされ方が大きくなると示唆しているようだった。これは「ドジッター効果」と呼ばれるようになった。1912年に米国のヴェスト・スライファーが、遠く離れた星雲(今の言い方で言えば「銀河」)からくる光の特定できる波長に際立ったずれを発見していた。そして5年後、そのほかに20を超える星雲の光に赤いほうへのずれを観測したと報告した。スライファーには、こうしたずれを説明するすべも、解釈するすべもなかった。今やデシッテルが、自分の出したアインシュタインの方程式の解によってまさにこの効果がつくりだされることを示した。よく吟味すれば理由は赤らかになる。デシッテルの宇宙は膨張していたのだ。目印になる点を2つこの宇宙に置けば、加速しながら離れていき、隔たりは指数関数的に大きくなる。デシッテルの宇宙で時とともに2つの基準点のあいだの隔たりがどう変化するかは図(画像 参照)に示してある。時が過ぎるにつれて距離の変化は加速するのだ。
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デシッテルの数学的な宇宙は、アインシュタインの新たに唱えた斥力によって加速しながら空間全体が膨張している宇宙を記述していた。
残念ながらだれもこれを1917年のスライファーの観測結果と関連づけたがらなかった。デシッテルさえもだ。1921年にはデシッテルはスライファーが目にしていた渦巻き銀河のうち22個が私たちから遠ざかっていることを知っていた。それらがどれだけ遠くにあるのかはだれも知らなかったし、宇宙の壮大な系統的な膨張ではなくランダムな局所的な動きが原因である可能性はまだあった。スライファーの観測結果からはっきりした結論を引き出すことにデシッテルは乗り気でなかった。最初の膨張する宇宙を見つけたが、それは、はなはだしく正体が隠されていた。その性格がすっかりあらわになるのは、しばらく先のことになる。