じじぃの「泡の消えない不思議なタンブラー!奇跡のモノづくり」

山粼研磨工場 | 研磨の聖地で唯一無二の匠の技がここにある
http://www.yamazaki-kenma.jp/
日本の技が生んだ宝物 奇跡の職人、マグカップ & タンブラー 日経トレンディネット
一口、ビールを飲んで唖然とした。カップから唇を離す瞬間の感触がとても心地よく、まるで陶器のような柔らかい感覚。ビールの細やかな泡はなかなか消えない。外面が鏡のように輝くさまは、ステンレスというより純銀のようだ。
実はこの製品、予約を入れても2年待ちという逸品でもある。作っているのは洋食器の産地として知られる、新潟県燕市にある山崎研磨工場。社長の山崎正明さんをはじめ社員は妻、長男ら4人のみという小さな工場だ。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/lcs/20091013/1029599/?P=6
サイエンスZERO 「驚き 江戸のテクノロジー 2007年6月16日 NHK教育
【司会】安めぐみ、熊倉悟  【コメンテーター】東京女子大学教授 黒崎政男
最近の研究で、江戸時代に独自の高度な科学技術が花開いていたことが明らかになった。1830年代には、鉄砲鍛冶(かじ)の金属加工技術で精度の高い反射望遠鏡も製作された。江戸時代の技術は、現代の産業にも生かされ始めている。自動車の部品工場ではバネと歯車を巧みに使った運搬機械が使われている。モデルは、からくり人形だ。現代から見てもざん新だった江戸時代の科学技術、その発想と、現代に生かされる技術に迫る。
http://archives.nhk.or.jp/chronicle/B10002200090706170030103/
『奇跡のモノづくり』 江上剛/著 幻冬舎 2011年発行
美と機能を追求する究極の磨き屋 山崎研磨工場 (一部抜粋しています)
テーブルの上の赤い漆の折敷(おしき)の上にステンレス製のタンブラーを置く。その表面は鏡のように、いや鏡以上に磨かれている。私の顔が女性的な曲線のタンブラーの形状そのままに長く縞模様を描いている。折敷に視線を落とす。するとタンブラーの底の部分からゆるゆると漆の赤が吸い込まれ、表面を這い、上へ上へと昇って行き、やがて全体が真っ赤に染まっていくではないか。
ビールを注ぎいれる。ごく普通の、冷蔵庫で冷やしただけの缶ビールだ。途端に、タンブラーの表面が霧にかかったように細やかな水滴で覆われた。部屋の中に漂う水分を一気に冷やし、水滴に変えてしまったのだろう。
少し広くなった口の部分にビールの泡が白く盛り上がっている。見つめるだけで喉が鳴る。ビール好きの私にはたまらない瞬間だ。タンブラーを握る。はっと手を離す。あまりにも冷たい。手が貼りついて、剥がれなくなってしまうのではないかと恐れた。気を取り直してもう一度握る。冷たいけれどまるでビロードのようにやわらかで、なめらかでしっとりとしている。
ビールを口にする。美味い。どんな素晴らしい注ぎ手もこれほど美味くは注げないだろう。私が注ぎ上手なのではない。このタンブラーが、ビールをしっかりと冷やし、木目細かな泡立ちを起こし、美味さを最大限に引き出しているのだ。
不思議なのは、時間を経てもビールの泡が消えず、ますます冷えていくことだ。泡が消え、生ぬるくなったビールほどまずいものはない。しかしこのタンブラーの中では違う反応が起きている。まるでビールの美味さを引き出す方法をタンブラー自身が知っているかのようだ。まさに奇跡のタンブラーと言われる所以(ゆえん)だ。
このタンブラーで飲む、ひと仕事を終えた後のビールは、凝り固まった私の体と脳をやさしく解放してくれる。これがステンレスという一般的な金属加工品に使われる鋼材からできているとは、にわかに信じられない。どう見ても純銀製、いやそれ以上に見えてしまう。
私は、奇跡のタンブラーの謎を探るために、製造元である新潟燕市にある山崎研磨工場を訪ねた。
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燕で自社ブランドを立ち上げようとしている研磨職人は、今のところ正明さんだけだ。後に続く人が出ることが正明さんの望みだが、まだ現れない。どんなことでも最初に道を切り開けば困難なことが多いが、それを乗り越えてくれと期待を寄せる同業者もいる。きっと正明さんに続こうとしている磨き屋がいるに違いない。
大量に作られるものは、どんどん中国などコストの安い国に行ってしまう。燕の磨き屋はどれだけ技術を磨いても、せいぜいサンプル品の注文しかない。
このままでは仕事がなくなってしまう。そんな危機感から正明さんは、燕の磨き屋のプライドを賭けて最高水準の研磨技術でタンブラーやアマグカップなどの一品物とでも言うべき最高級品で道を切り開こうとしている。
しかしそれは大量生産できない。その価値を分かってくれる人にしか売れない、何よりもその価格はいくらが適正なのか、いやそもそも磨き屋が丹精込めた一品物に適性価格があるのか、などなど多くの課題が山積している。
正明さんは下請けの仕事は止めないという。下請けとしてのプライドを持っているからだ。正明さんは、とことん集中して、タンブラーに精妙な感覚で羽布を当てる。目に見えないほどの磨き痕もないがしろにしない。羽布を変え、研磨剤を変える。

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じじぃの感想
江上剛著 『奇跡のモノづくり』という本を見ていたら、「美と機能を追求する究極の磨き屋 山崎研磨工場」というのがあった。
「不思議なのは、時間を経てもビールの泡が消えず、ますます冷えていくことだ。泡が消え、生ぬるくなったビールほどまずいものはない。しかしこのタンブラーの中では違う反応が起きている。まるでビールの美味さを引き出す方法をタンブラー自身が知っているかのようだ。まさに奇跡のタンブラーと言われる所以だ」
昔、NHKサイエンスZERO』かなんかで見たんだが、実は日本の最先端技術を支えているのは職人技なのだそうだ。
すばる望遠鏡」のナノといわれる高い鏡面精度の最終工程は熟練した職人が手がけているのだそうだ。
どこかの国が、xxxで日本を追い越したとかいっているが、自力でまだ人工衛星すら打ち上げられていない。
こんなところに、意外と原因が潜んでいるのかもしれない。