じじじじぃの「未解決ファイル_130_ヒト進化と遊び」

チンパンジーにも弔いの心 動画 デイリーモーション
http://www.dailymotion.com/video/xf47vz_yyyyyyyyyyyy_animals
ネフスピール・美しい魅惑の積み木(絵本の店・星の子)
http://homepage2.nifty.com/hoshinoko/omocha/naefspiel2.html
ヒトはチンパンジーと一緒に生きてきた - 松沢 哲郎 さん(京都大学霊長類研究所教授) mammo.tv
http://www.mammo.tv/interview/archives/no003.html
類人猿をまねる 類人猿にまなぶ No.1 R Y O K U
http://www.nttdata.co.uk/corporate/profile/pr/magazine/magazine_2009/pdf/magazine_vol01.pdf
『人間とは何か――チンパンジー研究から見えてきたこと』 松沢哲郎/著、編集 岩波書店 2010年発行
チンパンジーの苦手な積み木の課題 (一部抜粋しています)
積み木を使った課題でも違った設定にすることで、ヒトとチンパンジーの差もみえてきた。ヒトの子どもは、積み木を高くつみあげるだけでなく、積み木を横一列に並べたり、縦と横の方向を組み合わせて3次元の構造をつくったりするようなる。また、他者がつくったトラックや家といった簡単な形のお手本をまねしてつくる課題や、色のついた積み木を使ってお手本の模様と同じになるように組み合わせるパズルのような課題もできるようになる。
チンパンジーの場合、お手本どおりの形をつくったり、4個の積み木を床にかためておいて、色の模様をつくったりする課題はまったくできなかった。その原因の1つが、チンパンジーにとって積み木を高くつむのは簡単だが、積み木を横に並べるのが難しいことにありそうだ。積み木をつむときには、次の積み木をのせる場所が一点にしぼられていて明確なので、あとはその真上にバランスよくのせていけばよい。ところが、横に並べる場合は、床の上の1個の積み木に対して、次の積み木をどこにおくかは曖昧で、しかも直線状に一列に並べるという目標をもって積み木を配置しなくてはいけない。
チンパンジーがお手本をまねするのが難しいのか、そもそも並べることが難しいだけなのかがわからないので、チンパンジー用に課題を変更してみた。色のついた積み木をお手本どおりの順番になるようにつむ課題だ。ヒトが積み木を上から青・黄などの順番になるようにつんでみせる。それをお手本として同じ順番になるようにつめたら正解だ。アイとパンという、おとなのチンパンジー2個体に参加してもらった。すると、長い練習の期間を要したものの、なんとか2個の積み木を、ヒトがつくったお手本と同じようにつむことができるようになった。
ところが、積み木の数を3個に増やすと、突然、成績が下がってしまった。その原因を調べるため、チンパンジーがつんだ色の順番をお手本の順番と比べてみた。アイは、まずお手本の一番上の色をつかんでほかの色の積み木の上につみはじめるので、結果としてそれが3個の真ん中にきてしまうことが多かった。パンは、お手本の一番上の色を最後まで残しておいて、お手本と上の色が同じになるようにするつみ方が多かった。ただし、下の2つの色の順番はばらばらで、お手本とまったく同じにならないことがあった。どうやらチンパンジーは「お手本と同じにつくる」というよりは、「お手本の一番上の色に注目する」という単純化したルールを使っていたようだ。
ヒトの子どもでも同じように、この課題をしてもらった。ヒトの子どもも1歳台の時期には、お手本を壊そうとしたり、お手本の上に自分の積み木をつもうとしていた。チンパンジーにもはじめのうちはみられていた行動だ。やがて両種とも、自分の前にある積み木だけを、お手本とは別のところにつむようになる。人は2歳をすぎたころようやく、2個の積み木をお手本と同じ色の順番でつかみはじめ、3歳ごろになると3個や4個の積み木でもお手本と同じようにつむことができるようになった。
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形などの物理的な特性だけを考慮して、自分が物を操作するなかで解決できる課題であれば、チンパンジーとヒトとでは大きな違いはみられなかった。しかし、他者がつくった者をお手本として参照するという文脈をつけ加えると、チンパンジーには難しかった。なるべくチンパンジーの不利にならないように課題を改良しているのだが、お手本と同じ色の順番でつかむというのは、チンパンジーの自然な能力を反映していないのかもしれない。

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どうでもいい、じじぃの日記。
松沢哲郎著『人間とは何か――チンパンジー研究から見えてきたこと』の本に「チンパンジーの苦手な積み木の課題」が載っている。
この本は、京大霊長類研究所の研究所長である松沢先生がチンパンジーの「アイ」とか、息子の「アユム」の観察記録をまとめたような本だ。
松沢先生たちのこの研究は『アイ・プロジェクト』と呼ばれ、チンパンジーのアイやアユムが図形を用いてかなり高度な言語表現や数・色の認識ができることが分かってきた。
それでは積み木つみではどうなのか。微妙に人間の子どもとチンパンジーには違いが見られるのだそうだ。
テレビで野生のチンパンジーが石を使って木の実を割るシーンを見たことがある。そばにいた子どものチンパンジーがじっと見ててマネをし、何回か繰り返して石を使って木の実を割ることを覚えた。
この子どものチンパンジーが石を使って木の実を割るというのは、遊びなのだろうか、それとも木の実を得るという目的でやったことなのだろうか。
人間の子どもが積み木をつむという行いは大人が教えた行いをマネをすることから始まる。そして積み木をつむという遊びに発展していく。そして、「よく積んだね」とほめてあげれば、さらに積み木つみの学習能力が高まることになる。
チンパンジーにも人間の子どもと同じような環境を与えて、同じように、「よく積んだね」とほめてあげれば、チンパンジーも自発的に積み木つみをするようになるのだろうか。
人間はチンパンジーより動作が鈍い分、遊びの時間がチンパンジーより長いようだ。
人間の場合、その遊びの時間の長さがもしかしたら、より知能を発達させたのかもしれない。