じじぃの「ヘンゼルとグレーテル!本当は恐ろしいほど残酷な」

Bedtime Stories: Hansel and Gretel 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=3xHXd_ZoYMI&feature=fvw
Hansel & Gretel Movie Trailes 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=KfBuZdRt9Fg&feature=related
『本当は恐ろしいグリム童話Ⅱ』 桐生操/著 KKベストセラーズ 1999年発行
ヘンゼルとグレーテル−人殺し領主の少年狩りの罠 (一部抜粋しています)
グレーテルは、もう夢中である。もう手はべたべたとチョコレートだらけ、両の頬も生クリームでまっ白に染めながら、夢中になって家をよじのぼってなめている。ヘンゼルも手を伸ばすと、壁のキツネ色のビスケットをかきとって、口に入れた。
するとそのとき、いきなり入口の戸があいて、皺くちゃのお婆さんが、木杖によりかかってよろよろしながら出てきた。ヘンゼルもグレーテルもびっくりして、手にもっていたお菓子を思わずとり落とした。お婆さんは頭をがくがく動かしながら、
「おや、可愛い子たち。どうやってここを見つけたのかい? お婆さんのおうちにお入り」
お婆さんは子供2人の手をとって、自分の家に連れ込んだ。家へ入ると、牛フィレ肉の詰め物パイ包み焼き、牛タンの蒸し煮、子羊ロース肉のニンニク風味ソース添え、若鶏の詰め物ロースト、帆立て貝のサフラン風味ソース添え、小エビのプロシエットなど、ヘンゼルとグレーテルがまだ見たこともない豪勢な料理が、真っ白な磁器の高級なお皿に盛って、テーブルに出てきた。
「わあ! すごいごちそう!」
グレーテルは歓声をあげた。貧しいわが家では一度も見たことがない料理ばかりである。物心ついていたヘンゼルは自分の育った家の貧しさを一瞬恥じたが、幼いグレーテルのほうは、まるで屈託がない。
「これはなんというお料理? お婆さん?」
などと、片っぱしから料理をフォークで口に運びながら、遠慮なくお婆さんに質問している。
そのたびにお婆さんは、
「ブラヤベースだよ。イトヨリとかカサゴとかメバルとか、何種類もの新鮮な魚をぐつぐつ煮込んで、サフランで味付けして作るんだよ」
とか、
「子羊ロース肉のニンニク風味ソース添えだよ。ノルマンディ産の最高級の子羊肉を使ってるんだ。肉は焼きすぎないよう、真ん中をロゼに残すところがミソなんだよ」
とか、
「若鶏の詰め物ローストだよ。プレス地方の再興の鶏肉を使ったんだ。とうもろこしと乳製品だけを餌に育てた鶏さ。それこそ脂がのって、柔らかできめ細かい肉質は、格別だろう?」
などと、満面笑みをたたえて答えている。2人ともただただ感心して、フーンとため息をもらすばかりだった。
「お婆さんは、料理が上手なのね」
これがグレーテルの正直な感想である。
「お婆さんはきっと、ものすごーいお金もちなんだね」
これはヘンゼルがしみじみともらした感想である。
しかしそれにもお婆さんは、何も言わずに、ただニヤリと微笑むだけだった。
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しばらくはそんな、不安なりにも平穏な日々がつづいたが、ある朝、見るからに恐ろしい屈強な大男が、地響きをたてながら部屋に入ってきた。おおかた、あの魔女の婆さんの相棒なのだろう。
「よう、お前ら、覚悟はいいか!」
大男は憎ったらしげにわめくと、檻の中をしばらくためつすがめつしていた。そのあいだ檻の中の少年たちは、片隅に身を寄せ合って恐怖でガタガタ震えている。
「ふんこいつがいいや。よーく身がついている」
大男が選んだのは、一人の丸々と太った少年だった。目をつけられた少年のほうは、もう顔から血の気が引いて真っ青だ。
「いやだ、いやだ、助けて! 行きたくないよお!」
少年は死にものぐるいで叫ぶが、嫌も応もなく、大男に腕をつままれ力まかせに折から引きずり出されていく。
「助けてえ! 皆、助けてえ!」
少年の耳をつんざくような叫びは、ヘンゼルの心を引き裂いた。でも、どうしてやることもできない。もし逆らえば自分のほうが殺されるのだ。
大男に檻から引っぱりだされた少年は、その後、どうなったのだろうか?
実は、魔女の婆さんは、その少年を食べてしまうのではなかった。婆さんは、ある領主の殿さまから、少年を調達してくることを、密かに命じられていたのである。

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どうでもいい、じじいの日記。
『本当は恐ろしいグリム童話』という本を見ていたら「ヘンゼルとグレーテル−人殺し領主の少年狩りの罠」が出てきた。
グリム童話は『ヘンゼルとグレーテル』、『赤ずきん』、『灰かぶり姫』、『白雪姫』、『狼と七匹の子やぎ』などの民話を、ドイツのグリム兄弟が共同でとりくんだ古代ドイツの民俗学の研究の一環として蒐集したドイツ民話集である。
この『ヘンゼルとグレーテル』は欧米では毎年クリスマス時期に上演される名作オペラである。特にドイツではモーツァルトの『魔笛』と上演回数を争うほどの人気オペラなのだそうだ。
あらすじは、
 昔、あるところに貧しい木こり家族が住んでいました。この家族は父と継母と兄妹ヘンゼルとグレーテルの4人家族でした。きこりの家族は貧しく、継母は子供たちを捨ててしまおうと考えました。継母は薪拾いに行くと言って子供達を森に連れ出しました。そして森に置き去りにしました。迷って森をさまよっているうちにヘンゼルとグレーテルは全てがお菓子で出来ている家にたどり着きます。お腹を空かせた2人がお菓子の家を食べていると、気のよさそうなおばあさんが出てきました。しかし、このおばあさんは子供を捕まえては食べる魔法使いだったのです。ヘンゼルとグレーテルはこの魔女に捕まりました。小屋に閉じ込められ、ごちそうとして太らせてから食べられよう魔女は考えました。そして、いよいよヘンゼルが食べられそうになってカマドに入れられる瞬間が近づきましたが、火加減調整を命じられたグレーテルがカマドの火加減の調整の仕方が分からないと言って魔女をカマドまでおびき寄せ、そのままカマドに魔女を突き落としフタを閉めて魔女を退治しました。ヘンゼルとグレーテルは魔女の部屋にあった宝物を持って逃げ出し、さまよいながら無事に家に帰りました。なんと継母はすでに亡くなっていたので、優しいきこりのお父さんとヘンゼルとグレーテルはその後幸せに暮らしました。
というものである。
元々『ヘンゼルとグレーテル』は、中世のヨーロッパの大飢饉の時代の子供捨てによる口減らしの民話である。
中世のドイツでは、あちこちの地方で子供狩りが行なわれ、またたく間に子供という子供が行方不明になった。羊飼いの子は野原でさわられ、学校帰りで遊んでいる子供もさらわれた。
初版の『ヘンゼルとグレーテル』では物語に出てくる継母は実母である。カマドの中で魔女が死ぬシーンで、実母も一緒に死んでいるのである。
また、中世のヨーロッパでは人肉供養という風習があった。それがカマドという形で童話に出てくるのである。
オペラではカマドの中で魔女がすっかり焼き上がって、おいしいお菓子になっていたのでした。