じじぃの「白雪姫!本当は恐ろしいほど残酷な」

Schneewittchen Opening German 動画 YouTube
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Snow White A Tale of Terror 1997 Trailer 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=KOlQ75fhWKE&feature=related
『本当は恐ろしいグリム童話 桐生操/著 KKベストセラーズ 1998年発行
白雪姫−実母との愛をめぐる闘い (一部抜粋しています)
小間使いの立ち去ったあと、王妃はいつものように、鏡の中の自分にじっと見入った。目から鼻へ、そして口元へと、何者をも見逃すまいと、その目は厳しい視線で移動する。目尻に刻まれた深いしわ、衰えて張りのなくなった肌のあちこちに浮き出した褐色の染み、確かに老いは、着実に彼女の美貌を蝕(むしば)み始めていた。
すべてを試(ため)した。妖術使いがすすめる薬草、香油、温泉の泥風呂、そして生き物の生き血・・・・。しかしそれらは皆なんの役にも立たなかった。このように、ほとんど苦行のようにして磨きつづけていた美しさ。それを失ってしまったら、この先どうやって生きていけばいいのか?
絶望の中で、王妃は何かにすがるように、いつものように鏡に尋ねてみた、
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」
すると鏡は、こう答えたのである。
「ここでは王妃さま、あなたが一番お美しい。でもこの世で一番美しいのは白雪姫。この世で一番美しいのは、白雪姫」
もうこのままにはしておけない。白雪姫さえいなくなれば、自分の地位は保証だれるのだ。我を失った王妃は、ただこの思いに取り憑(つ)かれた。
思い立てば、ただちに実行する他はない。しかしどうやって殺せばいいのか。毒を考えたが、手に入れるのが難しい。首を絞めて殺そうと思ったが、いざというときは母の情が邪魔をして力がにぶる恐れがある。
いろいろ迷ったあげく、王妃は腕のよことで知られた一人の狩人を呼びつけた。
「姫を森中に連れていって殺すのだ。そしてその肝臓と肺臓を持ってお帰り」
当時の森は深く神秘的で、恐ろしい怪獣や獣(けもの)が棲んでおり、一歩入ったら二度と出てくることはできないと考えられていた。
「森に遊びに行きましょう。面白いものを見せてあげますよ」
狩人はそう言って姫を誘ったが、何か虫の知らせを感じたのか、姫は最初いやがった。いやがる姫の手を無理やり引いて森の中を分け入っていくうちに、狩人の心には哀れみが湧(わ)いた。
(かわいそうに、こんなあどけない子供を)
まったく見分の高い人の考えることは、わからない。
当時、赤ん坊の死亡率は高く、生まれてまもなく病気にかかって死んでしまう子供は多かった。だから授(さず)かった子供は、宝物のように大切に育てる。しかし見分の高い人にとっては、そんな子供もただの厄介ものでしかないのだろうか?
「私を恨(うら)まないでください。王妃さまのご命令です。私にはどうすることもできません」
そう言って刀を抜く狩人に向かって、白雪姫は跪(ひざまず)いて必死で命乞(ご)いをした。
「どうぞお慈悲(じひ)ですから、命だけは助けて・・・・」
姫のあどけない頬に伝う涙に、狩人の気力は思わず萎(な)えた。
(自分が殺さなくても、幼い子供のこと、深い森の奥に置き去りにすれば、いずれは恐ろしい獣の餌食(えじき)になってしまうだろう。どうせそうなるのなら、何も今自分の手にかけなくとも・・・・)
狩人はそう思い直して刀を鞘(さや)に納め、姫を森の中に放してやった。そして姫の代わりに一頭の猪を殺し、その肝臓と肺臓を抜き取って城に帰った。待ちかねていた王妃は、目の前に差し出された生々しい臓物を見て思わずたじろいだ。それでもグッとつもる思いを飲み下して、強いて冷静にこう言った。
「よくやった。姫は抵抗しなかったかい?」
「はい、恐怖に泣き叫んでおられましたが、それを一思いに・・・・」
「そう、お手柄だった。褒美(ほうび)をとらせよう」
そう言って、王妃は腹心の者を呼び、狩人をその場で殺させた。無論、口封じのためである。王妃はあらためて、狩人が持ち帰った肝臓と肺臓をしげしげと眺めた。それはまだ温かく、生々しい赤い色をしていた。これが私をさんざん苦しめた、若さに輝いていた白雪姫のもの・・・・。
当時、若い女の肝を食べれば、その若さを自分のものにできると言われていた。王妃は少しためらったが、それを狩りで捕まえた獣のものと偽(いつわ)り、料理番に塩ゆでにさせて食卓に運ばせた。

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どうでもいい、じじいの日記。
『本当は恐ろしいグリム童話』という本を見ていたら「白雪姫−実母との愛をめぐる闘い」が出てきた。
『白雪姫』は
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」
が出てくる有名な童話である。
グリム童話は『ヘンデルとグレーテル』、『赤ずきん』、『灰かぶり姫』、『白雪姫』、『狼と七匹の子やぎ』などの民話を、ドイツのグリム兄弟が共同でとりくんだ古代ドイツの民俗学の研究の一環として蒐集したドイツ民話集である。『白雪姫』 はドイツのヘッセン州地方の民話である。
日本では菊池寛が『小雪姫』という訳題で日本語訳した。
あらすじとしては
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」
の後、
この継母が嫉妬のあまり、白雪姫を森に放ち猟師に姫を殺すようを命じました。ところが、猟師は可哀そうになり白雪姫を逃してしまいました。その後、白雪姫は森で7人の小人たちと出会い、穏やかな日々を送っていました。猟師に裏切られたことを知った継母は、自ら始末しようと魔女になりすまし、毒リンゴを白雪姫に食べさせました。7人の小人たちは少女の死をひどく悲しんで、ガラスの棺に入れてにしました。ある日、そこを隣国の王子が通りかかり、白雪姫は息を吹き返します。それを知った継母は、魔女に戻り今度こそと王子の城に向かいました。ところが、ほうきで空を飛んでいた魔女の上に雷が落ち、継母は二度と起き上がることができず、死んでしまいました。王子の城で結婚式を盛大に開き、白雪姫は王子と共に城で幸せに暮らしたのです。
というものである。
この童話のどこが残酷なのだろうか。
初版グリムの白雪姫では、白雪姫を殺そうとする継母(王妃)は実母なのである。7人の小人は7人の人殺しである。
子供向けのの白雪姫では「継母は7人の小人に追われ、突然の雷に打たれて崖から落ちる」になっているが、初版グリムの白雪姫では「白雪姫が見ている前で、王子の家来が真っ赤に焼けた鉄の靴を母親に力づくではかせました。あまりの熱さに、母親は悲鳴を上げ悶え苦しみました。母親の体から煙が立ち上り、絶叫が城中をこだましました」
である。
また、中世のヨーロッパでは大飢饉の時代がつづき、人肉供養という風習があった。
1549年、はじめて日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルはインドのゴアで聖パウロ聖堂に祭られたが、いつまでたっても腐らず、生けるがごとくであったという。その後ローマに送られた彼の遺骸の一部は断片に分けられて、ヨーロッパの各寺や信者たちに配られた。そして人肉供養された。
白雪姫の母親は狩人から渡された白雪姫の肝臓と肺臓を塩ゆでにさせて食べたのである。(実際は人肉ではなかったが)
『白雪姫』の物語は本当は恐ろしいほど残酷なドイツの民話なのである。