じじぃの「未解決ファイル_121_ウイルスと進化」

遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスを用いた悪性腫瘍の標的治療 文部科学省
http://www.ctrp.mext.go.jp/assign/arp3.html
国内初「ウイルス療法」臨床試験 JHM Online
現代医学では、がん細胞などの細胞膜を突破して細胞内に侵襲させるために最も有効な「ベクター」がウイルスだと言われ、そのウイルスのひとつヘルペスウイルスを使うことに同大の脳神経外科・藤堂特任教授らが着目した。そして、正常細胞にも作用しないよう負のウイルス毒性となる3遺伝子の働きを欠落させることに成功した。
http://www.e-jhm.jp/modules/jhm/index.php?page=article&storyid=530
Herpes virus used to treat cancer 2010.8.1 BBC News
http://www.bbc.co.uk/news/health-10817277
『迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか』 シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス/著 矢野真千子/翻訳 NHK出版 2007年発行
僕たちは日々少しずつ進化している? (一部抜粋しています)
カリフォルニア大学アーヴァイン校のウイルス研究所所長ルイス・ヴィラリアルは、ウイルスが人間の進化にあたえる影響の研究に没頭している。ヴィラリアルによれば、人類の進化を外からだけでなく内側から後押ししてきたのはウイルスだという説をはじめて唱えたのは、1940年代から1980年代に活躍したノーベル賞微生物学者のサルヴァドール・ルリアだという。ルリアは1959年に、ウイルスが人間のゲノムに移住し適応していくうちに、人間のすべての細胞の基礎となる遺伝子パターンが形成されたのではないか、と書いた。
ヴィラリアルは、この考え方はそう簡単に理解されないだろう、とも書いた。なぜなら人びとは、自分たちが寄生体のおかげで進化した、というような考えには本能的に反発を感じるだろうからと。
 あらゆる種類の寄生体にたいして、強く根深い嫌悪感が巣くっている。皮肉なのは・・・・そこに創造の力が宿っていることで・・・・進化したいと願うなら、寄生されることを喜ばなければならない。
2005年に刊行された『ウイルスと生物の進化』という著書の中でヴィラリアルは、ウイルスにたいする見方を新しくすべき時期にきていると強く主張した。HIV天然痘ウイルスはたしかに危険な寄生体だが、それとは別に「存続ウイルス」というのがある、とヴィラリアルは述べる。存続ウイルスは過去何百万年ものあいだに人間のゲノムに移住してきたウイルスで、人間の進化のパートナーになってきたものだというのだ。
ウイルス側が人間のゲノムから受ける利益はよくわかる−−一生ただ乗りできることだ。だが、人間はウイルスからどんな利益を受けているのだろう? ウイルスは変異の達人だ。進化可能性の宝庫であり、その可能性を速く実現させる。そう、ウイルスの変異速度は人間の変異速度の100万倍なのだ。ヴィラリアルはウイルスの世界の変異潜在能力の大きさを理解させるために、「世界の海にいるすべてのウイルスを想像してみなさい」という投げかけをする。合計で100.000.000.000.000.000.000.000.000.000.000ほどいるだろうか。(これは10の30乗のさらに100倍にあたる)。これらのウイルスに含まれる遺伝子コードは顕微鏡でなければ見えないほど微小だが、それをずらりと1列に並べたとしたら、1000万光年の長さになる。明日になればウイルスのほとんどはつぎの世代を産んでいる。それを数十億年のあいだくり返してきたのだ。ヴィラリアルはウイルスを「新しい遺伝子を大量に生み出して、その一部を宿主に送りこんで安定したウイルス入植地を築く、遺伝子レベルの究極の創造者」と呼ぶ。
人間との共同関係についてはどうか。人間のゲノム内にいる存続ウイルスは、人間が生存と種の保存の危機にさらされると、おなじように危機にさらされる。人間のDNAの一部なのだから、進化の利害が人間と一致するのは当然だ。過去数百万年のあいだに、おそらく人間はウイルスに「ただ乗り」をさせてやり、ウイルスはその莫大な遺伝子図書館から人間に遺伝子コードを貸し出してきた。ウイルスはその驚異的な変異速度で、たまたま出くわした有益な遺伝子を勢いよく変化させる。人間にはとてもできない芸当だ。ともかくウイルスと共同作業をしているおかげで人間は、独力ではとても達成不可能な速さで複雑な生き物に進化したのだろう。

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サイエンスZERO 「ウイルスでがん消滅!がん治療最前線」 2010年7月10日 NHK
【ゲスト】東京大学医学部特任教授 藤堂具紀 【コメンテーター】東京女子大学教授 黒崎政男 【司会】安めぐみ、山田賢治 【語り】土田大
がん患者がウイルスに感染すると、がん細胞が小さくなるという現象が知られていた。このメカニズムを巧みに利用した、新しいがん治療の研究が進んでいる。特定の遺伝子を改変することで、ウイルスが「正常な細胞では増殖せず、がん細胞だけで増殖する」ようになる。その結果、ウイルスががん細胞を破壊するというしくみだ。
研究が進んでいるのは、人に感染しやすいヘルペスウイルス。東京大学ではヘルペスウイルスの3つの遺伝子の働きを止めることで、がん細胞だけで増殖できるウイルスを開発した。
3つの遺伝子のうちの1つが、細胞の自滅を阻止する遺伝子だ。正常細胞はウイルスに感染するとウイルスとともに自滅して感染拡大を防ぐ。しかしウイルスは細胞が自滅されては困るため、自滅を阻止する遺伝子を働かせる。この遺伝子の働きを止めると、正常細胞は感染して自滅するが、がん細胞はもともと自滅する機能に異常があるため自滅しない。つまりがん細胞だけでウイルスは増殖し、その結果、がん細胞を破壊する。
2つめがDNAの複製に関する遺伝子だ。ウイルスは増殖のためにDNAを複製する。このとき複製に必要なたんぱく質を作る遺伝子がある。この遺伝子の働きを止めると、ウイルスはもはや増殖できないが、がん細胞には、そのたんぱく質に似たたんぱく質が存在するためDNAを複製することができる。そして増殖し、がん細胞を破壊する。
3つめは免疫から逃れる遺伝子だ。ウイルスもがん細胞もどちらも免疫から逃れるしくみがある。ウイルスの免疫から逃れる遺伝子の働きを止めると、感染したがん細胞の表面にウイルスのたんぱく質が露出。それが標的となって免疫細胞が攻撃、排除する。
現在、この3つの遺伝子を改変したウイルスを使って、悪性脳腫瘍に対する臨床試験が始まっている。ウイルスを使った全く新しいがん治療に迫る。
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp312.html
どうでもいい、じじぃの日記。
『迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか』の本の中に「ウイルスと生物の進化」が載っている。
ウイルスは細胞をもたないので生物ではない。しかし、ウイルスは細胞をもたないが遺伝子を有し、人間など宿主の細胞を利用して増殖できる。
ウイルスによる感染は、宿主となった生物に細胞レベルや個体レベルでさまざまな影響を与える。その多くの場合、ウイルスが病原体として作用し、宿主にダメージを与えるが、レトロウイルスのようにウイルスが外来遺伝子の運び屋として作用し、宿主の生存に有利に働くものがある。
この本には人間はウイルスとの共同作業で進化してきたようなことが書かれている。
7/10、NHK サイエンスZERO 「ウイルスでがん消滅!がん治療最前線」を観た。
ウイルスの遺伝子を改変し、改変したウイルスを使ってがん治療に利用する。
がんを殺すウイルス「ヘルペスウイルス」を使って、がん細胞がウイルスに感染して死んでいくというものだった。
東京大学では、「ヘルペスウイルス」を使ったフェーズ1の臨床試験が行われている。
人間の進化はウイルスによって促進されてきた。そして、ウイルスによってがんが殺されるのである。