じじぃの「鉄高騰・広がる衝撃!クローズ」

原料価格5倍に? 鉄が“素材の王者”を明け渡す日 2010/7/19 日本経済新聞
鉄鉱石など鉄鋼原料価格の高騰を受けて、2010年度の鋼材価格は09年度比2〜3割の大幅な引き上げで決着している。鉄鋼大手はこれから温暖化ガスの削減にも巨額の投資を迫られるため、生産コストが上昇し、しばらくは鋼材の値上げが続く可能性が高い。鋼材価格が高くなるほど、アルミなど代わりの素材の出番が増える見通し。鉄が“素材の王者”の座を明け渡す日が来るのだろうか。
高炉で生産する粗鋼の主な原料は、鉄鉱石と原料用石炭(原料炭)の2つ。10年後までに(これら2つの)原料価格が09年度の5倍になる可能性もある――。このほど5〜10年後を見据えた中長期ビジョンをまとめた神戸製鋼所の佐藤広士社長は、最悪のケースとして、こんな筋書きも考えた。
すでに高騰は始まった。10年度の原料価格は20年以上続いた年契約が廃止され、ブラジルのヴァーレなど資源大手の要請によって、四半期ごとに改定されるようになった。7〜9月の鉄鉱石の価格は、09年度の2.4倍の1トンあたり約150ドルで決着した。
四半期価格を決める指標になるインド産中国向けのスポット価格の上昇は、ここのところ一服している。だが、資源大手3社で鉄鉱石の海上貿易量の約7割を占める供給側の圧倒的なシェアと、中国など新興国の需要増を背景に、中長期でみると上がり続けそうだ。
かりに原料価格が5倍になった場合、鋼材価格はどこまで高くなるのだろうか。荒っぽい計算をしてみると、09年度より約9割高い1トン14万円になるかもしれない、という結果が出た。
09年度に高炉で生産した粗鋼は約7600万トン。鉄鉱石と原料炭の09年度の価格がそれぞれ1トン60ドル、約100ドル(強粘結炭や微粉炭などの大まかな平均)、輸入量は1億1520万トン、6903万トンで計算すると、鉄鉱石の輸入金額は6200億円、原料炭の輸入金額も6200億円。合わせると約1兆2400億円になる。
これが5倍になれば、2つの主原料だけでコストが09年度よりも約5兆円増える。このコスト上昇分が鋼材価格にほとんど転嫁されるとすれば、鋼材1トンあたり6万5000円前後、値上がりする。09年度の鋼材平均価格は1トン約7万5000円。値上がり分をたし合わせると、1トン14万円前後になる。
鋼材のコストを高くするのは、原料価格の高騰だけではない。高炉で粗鋼を作るとき、還元材料のコークスに含まれる炭素が鉄鉱石の中にある酸素と結びつき、大量の二酸化炭素(CO2)が発生する。鉄鋼業界の排出量は、製造業の約4割を占める。日本が低炭素社会を実現するカギは、鉄鋼業界の対策が握っているといっても過言ではない。
鉄鋼業界ではコークスを水素に置き換え、CO2の代わりに水を排出する「水素還元」や、高炉で発生するCO2を分離・回収して地中に埋める研究を進める。だが、高炉など今の設備の抜本的な更新が必要になり、数千億円では足りない規模の巨額投資がかかってしまう見込みだ。
これらを考えると、鋼材は1トン14万円よりもさらに値上がる可能性も出てくる。
他の素材に目を向けると、例えばアルミの場合、最近の地金価格は1トン2000ドル(約18万円)前後で推移する。重さが鋼材の3分の1と軽量で、燃費の改善が急務の自動車用素材などとして注目を集める。加工もしやすいが、価格の高さがネック。自動車用としては、高級車のボンネットやエンジンフード、ホイールなどに利用範囲はとどまる。
だが、あるアルミ大手幹部は「鋼材価格が1トン15万円に近づけば、一気にアルミへのシフトが加速する。自動車のボディーをオールアルミにしても、採算が合うようになるのでは」とみる。
最近注目される炭素繊維。同じ大きさの鉄に比べると、強度は10倍で重さは4分の1。価格は汎用品で1トン200万円〜300万円と、とても高価だ。ただ、今後は量産により価格が下がる可能性が高く、鋼材が値上がりしてくれば、自動車などで基幹部品の素材に使われ、「高張力鋼板」など高機能な鉄の強力なライバルに浮上するかもしれない。
「これほど丈夫で加工性に富む素材はほかにはない」「原料が地球上に豊富にある」(鉄鋼大手)。鉄は自動車や橋、ビルなど様々な分野で、中心的な素材として利用されてきた。使い勝手がよく、高い機能を持ちながら、「ミネラルウオーターより安い」というコストパフォーマンスの高さが理由だ。
だが、今のところ圧倒的なシェアを背景にした資源大手による原料の値上げを抑えるすべが見あたらない。原料コストの上昇を抑えながら、競争力のある新しい鋼材を開発し続けられるか。その成否によっては、新製品が日々開発される素材業界のなかで、鉄の存在感が低下するかもしれない。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819696E3E1E2E0818DE3E1E2E5E0E2E3E2E2E2E2E2E2E3
クローズアップ現代 「鉄高騰 広がる衝撃」 2010.7.21 NHK 動画あり
【スタジオゲスト】OECD鉄鋼委員会議長 根津利三郎 【キャスター】国谷裕子
「このままでは10億円以上の赤字を飲み込むしかない。」建築用の鉄材を扱う業者が嘆く。今年に入り、鉄鋼の原料価格は去年の2倍以上に急騰。デフレも追い打ちをかけ、モノ作りの現場から悲鳴が上がっている。さらに、鉄の価格を決める国際ルールが根底から覆り、混乱が広がっている。これまで鉄の原料、鉄鉱石の価格は日本の鉄鋼メーカーと海外の大手資源会社の間の“話合い”で“年に1度”決められてきた。基本素材の安定供給という名目のもと20年以上続けられてきた伝統だ。しかし、今年突然、大手資源会社の一方的な通告で「市場価格」が持ち込まれ、その伝統が崩れた。裏側にあるのは、大手3社が世界の鉄鉱石の7割を握る極端な寡占化と、中国など新興国の急速な台頭による世界の構造の大転換である。資源がないモノ作りの国・日本に迫る大きな波の最前線を追う。
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2917
どうでもいい、じじぃの日記。
7.21、NHK クローズアップ現代 「鉄高騰 広がる衝撃」を観た。
大体、こんな内容だった。
鉄は国家なり。その言葉通り、明治以来、鉄は日本を支えてきました。
ここ1年の間に鉄鉱石の資源会社が強い発言力を持つようになりました。鉄高騰の舞台裏で何か起きているのでしょうか。
鉄鉱石と原料炭は値上がりを続け、鉄鉱石の価格はトン当たり147ドルになっています。また中国は世界の半分以上を生産するようになりました。
この春から突然始まった鋼材の価格上昇。
新日本製鉄では鉄骨加工用の仕事をするようになった。鉄高騰、広がる衝撃。
今まで、1年ごとの価格設定だったのが、3ヵ月に1度の価格の交渉をするようになった。なぜ、3ヵ月1度、価格が見直されるようになったのか。
世界一の鉄鉱石の資源会社ブラジルのヴァーレ(VALE)。
ヴァーレ副社長、「今まで、10年間に渡って日本は特別な存在だった」。過去10年間、日本の言い値で鉄鉱石の相場が決まっていた。
ブラジルの鉄鉱石を積み込む港で、大半の船が中国行きになった。
記者、「かなり大きな船ですね、どこの船ですか」。港の労働者、「香港です」
インドも鉄鉱石を買い始めた。インドと中国が鉄鉱石を買い始めたことで鉄鉱石の値段が急上昇している。
新日本製鉄の役員がヴァーレと交渉。新日本製鉄の役員、「鉄鉱石の値段の急上昇は供給不足が原因だ」
鉄の産出量ではブラジル (22.3%)、オーストラリア(19.6%)、中国(16.6%)、インド(10.9%)、ロシア(6.8%)、の上位5ヵ国が世界の76%を占める。
鉄鉱石メジャーといわれるブラジルのヴァーレ、英国・オーストラリアのBHPビリトン、英リオ・ティントの3社が世界の70%と圧倒的シェアを持っている。
OECD鉄鋼委員会議長の根津利三郎氏が解説する。
国谷 今年になってなぜ、3ヵ月1度、価格が見直されるようになったのか。
根津 リーマン・ショックを契機に、鉄鉱石の需要が日本から中国にシフトしてしまった。
国谷 資源国の発言力が増える一方ではないか。
根津 中長期的には売り手市場になってきて、スポット価格が実勢の価格になっている。
国谷 需要がさらに増え続けるのか。
根津 毎年、日本の需要分と同じ規模で増え続けている。
新日本製鉄の大分製鉄所では燃料用の石炭を改良することで、コストを10%削減することができた。
海外の鉄鉱山を取得しようという試みが始まった。日本の製鉄メーカーからなる"All Japan"はブラジルの大手鉄鋼メーカーCSNの鉱山子会社「ナミザ」の権益。CSNから株の40%を取得した。
国谷 鉄鉱石を安定的に確保する方法はないのか。
根津 中国や韓国などからなる東アジア共同体のような組織が必要だ。
じじぃの感想
「鉄は国家なり」の時代は終わった。
今は、高付加価値の時代なのです。