じじぃの「未解決ファイル_65_月下美人」

文藝春秋 2010年2月号 (一部抜粋しています)
タイトル:「10年後の日本」復活のシナリオ
ファーブルに学ぶエコライフ 福岡伸一分子生物学者・青山学院大教授) (一部抜粋しています)
昆虫たちはかたくななまでに自らの食べるべきものを限定している。棲む場所も、活動する時間帯も、交信する周波数も。彼らは自分たちが排泄したものの行方を知っている。彼らは自らの死に場所と死に方も知っている。誰にどのように食われるかということでさえも。
なぜか。それは、限りある資源をめぐって異なる種同士が無益な争いを避けるために、生態系が長い時間をかけて作り出した動的平衡だから。そして、その流れを作っているのはほかならぬ個々の生命体の活動そのものだから。彼らは確実にバトンを受け、確実にバトンを手渡す。黙々とそれを繰り返し、ただそれに従う。
これを生物学用語で「ニッチ」と呼ぶ。ニッチとは本来的に隙間の意味ではない。すべての生物が守っている自分のための僅かな窪み=生態学的地位のことだ。窪みは同時に、バトンタッチの場所でもあり、流れの結節点となって、物質とエネルギーと情報の循環、すなわち生態系全体の動的平衡を担保している。
あえて今、ニッチを「分際」と訳そう。すべての生物は本能の、もっとも高度な現れ方として自らの分際を守っている。ただヒトだけが、自然を分断し、あるいは見下らすことのよって分際を忘れ、分際を逸脱している。私たち人間だけが他の生物のニッチを土足で上がりこみ、連鎖と平衡をかく乱している。

                                  • -

月下美人の写真
http://a200.myz.hujibakama.com/s1.htm
月下美人はなぜ夜咲くのか』 井上健/著 岩波書店 1995年発行
月下美人の送粉者はコウモリか? (一部抜粋しています)
月下美人という名前のサボテンを知っている人も多いと思います。
月下美人は、夏に直径が20センチメートル前後もある白い花を咲かせます。この花の特徴はその名の通り、美しい花だけではなく、夜中に開花し、強い甘い香りを発散させますが、翌日の朝にはもう萎びてしまうことです。なぜ月下美人の花は夜咲くのでしょうか。このことは月下美人がもともと育った自生地での送粉者を考えないとうまく説明できません。
月下美人クジャクサボテンの仲間で、自生地は中南米の熱帯の森林です。月下美人の自生地での送粉者についての報告はまだ無いようですが、月下美人はコウモリによって花粉媒介されていると思われます。
熱帯のジャングルでは非常に多くの植物が生育していますが、そのなかには、コウモリに花粉媒介を依存している植物がかなりあることです。コウモリによって花粉媒介される花の特徴の共通点として、花の色がどちらかといえば白色やくすんだ色が多い、夜開花する、夜間に強い匂いを放出する。花の蜜が非常に多い、蜜が花の筒などの奥に隠れることはなく露出している。花自体が木の枝の間に生じるのではなく、木の幹などから直接生じ、障害物のあまりない位置に形成される、などが挙げられます。月下美人もこうした特徴をすべて持ち合せているのです。これらの特徴はコウモリの習性や形態的な特徴を考えると合点の行くものばかりです。月下美人は本来育った環境での習性を、今日にいたるまで残していると言えましょう。
このように、特定の植物の花は特定の動物による送粉に依存し、それ以外の動物をなるべく排除するようにさまざまな形質を進化させています。特定の病気によって生じる複数の症状を症候群(シンドローム)と呼びますが、このシンドロームは病気を推定するのに使用されます。病気のシンドロームと同様に、特定の動物に適合した花の示すさまざまな形質の組み合わせを、送粉シンドロームと呼びます。
もう1つ例を挙げましょう。花壇などによく植えられているサルビアという花をご存知でしょうか。このサルビアはブラジル原産で、赤い筒状の花を咲かせ、人間の下でも甘いと感じるほどの蜜を貯めています。昆虫には見えない赤い色、鳥の嘴の形にあった太くて長い筒状の形、高エネルギーを必要とする脊椎動物に適合した大量の花蜜などの特徴は鳥による送粉を予想させます。予想通りこの植物ではブラジルで鳥による送粉が報告されています。

                                  • -

どうでもいい、じじぃの日記。
月明かりの中で、白の大輪を咲かせ、強力な香りを放って、夜に活動するコウモリを誘う。
この「月下美人」という花は年に1度か、2度しか花をつけず、咲くのは真夜中で朝には枯れてしまうのだそうだ。
サボテンの仲間に「プヤ・ライモンディ」というのがある。
大きくなった「プヤ・ライモンディ」は巨大なオチンチンのように見えたが、この「月下美人」の花はエロチックな巨大なXXXXのように見える。
これら不思議な花もまた、自然界の理に適って生きているのである。
「圭子の夢は夜ひらく」を思い出した。
「圭子の夢は夜ひらく」 石坂まさを作詞・曽根幸明作曲
赤く咲くのは けしの花
白く咲くのは 百合の花
どう咲きゃいいのさ この私
夢は夜ひらく
十五 十六 十七と
私の人生 暗かった
過去はどんなに 暗くとも
夢は夜ひらく