じじぃの「“夢”のがんワクチン」

がんワクチン 提供: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』 (一部抜粋しています)
一般に、病原性のないウイルス抗原を宿主に与えることでウイルスに対する免疫を誘導し、病原性のウイルス感染を予防することが行われているが、この病原性のある微生物の代わりに免疫を持たせる目的で使う抗原微生物をワクチンという。がんワクチンは、微生物やウイルスではなく、がん細胞に存在する成分のうち宿主免疫系が標的抗原として認識しえる構成成分(がん抗原)を同定し、このがん抗原を宿主に人為的に与えることでがんに対する特異的な抗腫瘍免疫を誘導する。言い換えれば、がんワクチンを投与することで宿主が本来持つがん細胞を攻撃する免疫力を高め、免疫力によってがんを治療または予防する免疫療法である。
がん細胞において免疫細胞に攻撃される成分(がん抗原)は悪性黒色腫におけるMAGE、乳がんなどにおけるHER2/neu、大腸がんにおけるCEA、各種白血病や各種がんにおけるWT1など多数報告されている。がん抗原は正常細胞ではまったく発現していないか、発現していても少量であり、がん細胞においては過剰に発現している。つまり、免疫細胞が特異的にがん抗原を認識して攻撃すれば、正常細胞を攻撃することなく(副作用なく)、抗がん作用を呈する。
がん抗原蛋白はがん細胞の細胞質内でペプチドに分解され、がん細胞の表面にクラスIMHC分子と共にがん抗原ペプチドとして発現される。このペプチドを特殊な免疫細胞が認識し、がん細胞を攻撃する。
がん抗原ペプチドに対する特殊な免疫細胞とは、がん抗原ペプチド特異的なcytotoxic T lymphocyte(CTL)というリンパ球である。CTLは、以前はキラーT細胞と呼ばれ、リンパ球の中でも特異的な抗原を認識して攻撃するという役割を持つ殺し屋リンパ球である。この殺し屋(CTL)がターゲット(がん抗原ペプチドを発現したがん細胞)を探し出してやっつけてくれるわけである。
宿主の生体内においてがん細胞が存在すれば、そのがん細胞は細胞表面に自然とがん抗原ペプチドを発現しており、そのペプチドに対する特異的なCTLも自然に誘導されている。しかし、そのCTLの数と力(免疫力)が十分でないためにがんは増殖し、結果的に宿主に致命傷を与える。がん自体にもCTLの攻撃をかわす様々な機構(免疫逃避機構)がある。そこで、がん抗原ペプチドを人為的に投与し、特異的なCTLを強力に誘導することでがんを治療するのが、がんワクチン療法である。つまり、がん抗原ペプチドをがんワクチンとして宿主に投与することで、がん抗原ペプチドに特異的なCTLを大量に誘導し、そのCTLががんを治療または予防するわけである。殺し屋も相手を選ばずやたらめったらに殺しまくるわけではない。殺し屋はターゲットの情報を十分に与えられなければ仕事をしない。この情報となるのががんワクチンといえるかもしれない。

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クローズアップ現代』「実現するか“夢”のがんワクチン」 2009年10月26日 NHK
【キャスター】国谷裕子 【科学文化部記者】籔内潤也 【コメンテーター】がん患者団体支援機構理事長 鳥越俊太郎
がん細胞を体の免疫を利用して攻撃する「がんワクチン」。注射だけでがんの増殖を抑え、臨床試験では、余命数ヵ月の人が2年以上生存した例も。最新治療法の可能性に迫る。

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どうでもいい、じじぃの日記。
10/26、NHK クローズアップ現代 「実現するか“夢”のがんワクチン」を観た。
先月、一人のハリウッドスター 映画『ゴースト』に主演していたパトリック・スウェイジが、すい臓がんで亡くなった。
今、がんワクチンの開発が進められている。患者自身の免疫力を高めてがん細胞をたたく。その可能性を探る。
「実現するか“夢”のがんワクチン」
国谷 がんの主な治療法は手術、抗がん剤放射線の3つがある。がんワクチンは第4の治療法といわれている。進行がんを食い止めることができないのが現実だが、このがんワクチンは進行がんに対して有効です。がん細胞だけを攻撃するために他の治療と比べて副作用が軽い。世界各国で肺がん、胃がん大腸がんや、すい臓がんなどさまざまながんを対象にワクチンの開発が進められて、500件以上の臨床試験が行われている。日本でも5つの大学を拠点に研究や臨床試験が進められています。
和歌山県立医科大学の山上裕機教授はすい臓の手術を年間約100例、行っている。
映像に男性の患者が出てきた。すい臓がんで余命7ヵ月と診断された。山上教授から、まだ臨床試験の段階であるがと前置きがあり、がんワクチンを投与することを進められた。注射するだけで入院する必要がない。通院で8回の投与を受けた。
「がんワクチン」とはがん患者の身体の中のがん細胞が持っているもの(がん抗原)をワクチンとして接種することにより、がん患者の体内でがん細胞を攻撃する免疫細胞の力を強めるがん治療だ。
体の中には免疫をつかさどるリンパ球がある。リンパ球は、がん細胞を敵とは認識しないが、リンパ球にがんを攻撃させるため、がん細胞のペプチドと同じ物を作って注射を行う。体の外から来たペプチドをリンパ球が敵として認識する。一度、敵を認識したリンパ球が、同じペプチドを持つがん細胞を攻撃する。
この患者はワクチン治療を受けて1年後、がんの大きさは治療前と比べて、ほとんど変わっていない。
山上教授がまとめたすい臓がん患者の生存期間はおよそ1年半で全員が亡くなっている。このがんワクチンを投与した場合、長い人で2年4ヵ月生存した。
この患者は今年の8月に亡くなったが、それまで仕事や家族との旅行を行うことができた。
東京大学医科学研究所の中村祐輔教授のところでは患者のがん細胞を集め、分析している。がんは臓器によって性質が異なり、細胞の表面にあるペプチドも違う。がん細胞に特有な細胞であるペプチドを探している。今、13種類のがんについて実用化に向けた臨床試験を行っている。
国谷 (鳥越氏に)ご自身もがん患者の1人ですけど、どんな期待を寄せていますか?
鳥越 がん患者のステージが上がっていくと、抗がん剤で体がぼろぼろになっていくんですよね。
国谷 自分の免疫力にがんを敵だということを認識させるという、今までとは全く違うやり方ですよね。
鳥越 がんワクチンを投与することで、リンパ球に敵だと認識させるわけですね。結核ハンセン病と同じようにがん治療ができるようになるんですね。
籔内 今はまだ科学的に効果を確かめようとしている段階です。末期がん患者を対象にしている。
国谷 どういう段階まで進んでいるものなんですか。
籔内 (臨床試験の表が出てきて)今はまだ臨床試験の段階です。
  第1段階:臨床試験で、誰でも受けられる状況ではない
  第2段階:効果があるかどうか、有効性を調べる
  第3段階:抗がん剤など、標準的な治療と比較して優れているかどうかを調べる
  第4段階:最終段階で、例として和歌山県立医科大学のがんワクチン投与がある
  (臨床試験の経費の表が出てきて)これは札幌医科大学臨床試験の経費です。
  検査・機器の装置:1億円
  研究スタッフの人件費:5000万円
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  第1段階では15人の試験が必要で、第2段階では60人の試験が必要です。
アメリカの大学では豊富な資金によって研究開発が着々と進んでいる。メリーランド州にあるジョンズ・ホプキンス大学。最新の研究機器をそろえ、30人のスタッフでワクチンの開発から臨床試験まで行っている。30億円の費用をかけて臨床試験の第2段階をすでに終えている。
がんで家族を亡くした人たちが活動しているNPO。インターネットなどでも寄付を呼びかけている。NPOと研究機関と国が1対となっている。
国谷 海外のワクチンを日本に導入できるか。
籔内 アメリカで作られたワクチンが日本人に合うとは限らない。
国谷 (鳥越氏に)患者が一番望むことは何か。
鳥越 日本ではがんワクチンなどの情報が少ない。本当に有効なのか。本当に有効なものならば、一日も早く、その間にどんどん人が亡くなっていますからね。また国の予算がアメリカと比べて少ない。ダムだって八ッ場ダム、4000億とか言ってるでしょう。市民が立ち上がって、一般の市民から寄付が得られないか。
国谷 アメリカでは情報がインターネットなどで、すぐ分かるようになっているんですよね。
鳥越 情報がすぐ分かるようになってほしいですね。