じじぃの「未解決ファイル_26_チンパンジーの子殺し」

生物を科学する辞典 市石博、早山明彦、その他著 東京堂出版 2007年発行
殺し合うのはヒトだけか?
最近毎日のようにヒトが殺されるニュースが流れる。殺人事件に巻き込まれるヒトは、『犯罪白書』によれば日本では年間1000人にもおよぶ。銃器を一般市民がもつアメリカでは年間1万人以上のヒトが殺人事件の被害者となっている。なぜヒトはヒトを殺すのであろうか。ヒトからお金を盗むため、自分自身の性的欲望を達成するため、怨恨(えんこん)などその理由はさまざまであろうが、戦争にでもなれば何十万人のヒトが殺される。
かって同種間で殺し合うのはヒトだけだといわれた。しかし少し注意深くみていくと、カマキリのメスは交尾したオスを食べてしまうし、ある種のクモの子どもは母親を食べて自分が成長していくためのエネルギーとして使っている。
さらに近年、動物の社会の調査が進むと、衝撃的な事実が分かってきた。インドやネパールにはハヌマンラングールという体毛の白いサルがいる。このサルは1頭のオスと多数のメスからなるハーレムをつくり生活している。地元では神聖なサルとしてあがめられてきた。このサルを調査してきた京都大学杉山幸丸氏は、ハーレムを乗っ取ったオスが、次から次へとその群のメスたちの子どもを殺すことを発見した。彼は、この事実を世界に報告したが、異常なオスがおこした特殊な行動としてはじめは相手にされなかった。やがて別の観察者によって同じような子殺しの行動が観察され、さらに群を乗っ取ったライオンでも同じような子殺しの行動が観察されるようになって、杉山の観察は認知されるようになった。また、このような行動をとる意味にについても解釈がなされ、現在では「利己的遺伝子」のはたらきによるものとされている。それは、群をを乗っ取ったばかりのオスにとって、そこにすでにいる子どもは先代のハーレムの主の子どもであり、せっせと育ててもオス自身の遺伝子を次世代に残すことはできない。また子育て中のメスは交尾をしようとしないため、オスは性的に欲求不満の状態となっていることがその行動をおこすきっかけとなる。
さらにヒトと99%もDNAの塩基配列を共有するというチンパンジーともなるともっと不可解な行動をとることがわかってきた。京都大学チンパンジーの研究チームやイギリス人のチンパンジー研究者であるJ.ゴールドらの観察によれば、チンパンジーの集団内で子殺しは時々おこっているという。このとき殺される子どもはハヌマンラングールやライオンとは異なり、その集団内にいるオスの子どもの可能性がが高いケースも含まれているという。観察された事例では。子殺しは突然はじまり、あるメスの子どもをオスたちが奪い合いを行ったうえ、顔にかみつき絶命させた。その後集団に属するオスが、木の上でその肉を分け合って食べるという凄惨(せいさん)なものであった。その木の下にはメスが集まり、落ちてくる肉片を待っていたという。さすがにその子どもの母親は食べなかったが、この事件が終わっても子どもを殺された母親はその群にとどまり、自分の子どもを殺したオスとまた交尾をするようになったそうである。なぜこのような行動がおこるのか、研究者の間でも結論が出ていない。
ヒトが起こす殺人事件も理由の不可解なものがある。さらに戦争状態にでもなれば、無抵抗の一般市民を無差別に虐殺したり、その残忍さはとめどもない。このようなヒトがもつ負の側面を解明するヒントがチンパンジーの子殺しにあるのかもしれない。今後の研究の進展が待たれる。

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ネアンデルタール人絶滅の証拠?:翻訳家SHINの浅横日記 So-net blog (一部抜粋しています)
「人類はネアンデルタール人を食べていたかもしれない」
恐ろしい行為を示唆する手がかりが見つかった。子供のネアンデルタール人のあごの骨に刃物で切った痕跡があることが科学者によって発見された。彼らの想定によると、3万年前の現生人類がそれを食べたか、その頭部をトロフィーとして利用したものだという。
http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2009-05-19
どうでもいい、じじぃの日記。
ダーウィンの進化論によると生物の生存目的は、できるだけたくさんの子孫を残すことである。
チンパンジーの集団内で子殺しは、ダーウィンの進化論の延長上のことなのだろうか。
人間も、過去の歴史をひもとくと、ずいぶん残酷なことをやってきている。
ネットで「利己的遺伝子」をキーにして検索してみた。
「利己的遺伝子」な行動の例として、サルの他に、アリ、ハチ、イルカ、ペンギンなどがあった。
「人類はネアンデルタール人を食べていたかもしれない」も、「利己的遺伝子」から考えられないことではない。
一方で、生物が自己犠牲的な行動をとることもある。母親が子どもを守る行為だ。
「生物が自己犠牲的な行動をとることが、しばしば観察されます。たとえば、キツネに狙われたヒナをヒバリの母親が助けるために、怪我をしたふりをしてキツネの注意を自分に向けさせることで、子供を危険から救うという行動もその一つです」
他人の身代わりになって死んだコルベ神父の例もある。
『人間は万物の霊長』といわれているが、それもある一面で真理だろう。
それが、「利己的遺伝子」の賜物でなければいいのだが。