じじぃの「世界最安カー・ナノ」

『世界潮流の読み方』 ビル・エモット著 烏賀陽正弘訳 PHP新書 2008年発行 (一部抜粋しています)
超低価格の自家用車「ナノ」
2008年1月10日、インドのタタ・モーターズが超低価格の新車を発表したが、その話題が新聞紙上を大いに賑わした。
多くの人は「ナノ」と名づけられた2500ドル(発表当時のレートで28万円)の新車が、地球温暖化に拍車をかけ、ただでさえ渋滞が激しく、整備が不十分なインドの道路事情を、さらに混乱させるのではないかと考えたのである。
これまでの小型車、T型フォードとフィアット500、それにブリティッシュ・レイランド社のミニや日本の軽自動車などを念頭に入れて、それらの車が成し遂げた技術革新をタタと比べた人もいた。さらに多くの評論家は、書類入れやバックパック程度の収納スペースしかないクルマを運転するのはどんな感じなのか、と疑問に思った。
しかし、タタ・モーターズの新車について、ほとんどの論評に欠けていた最も重要なポイントは、インドが中国だけでなく、もちろん日本や欧米とも競争できる製造大国になったことであり、地球規模の製造業である自動車産業に参入したことだ。自動車産業で成功を見るなら、今すぐではないにしても、今後数年内に、他の製造業分野でも地球規模の製造大国になるうるのだ。
今世紀の変わり目の頃から、中国とインドの経済成長は、単純な論理的枠組みで分析されてきた。すなわち、中国は製造業に、インドはサービス業に注力することで成長していると考えられたのだ。
インドについて、欧米の目は、バンガロールやハイデラバードなどのサイバー都市、さらに新興巨大アウトソーシング(外部委託)企業にもっぱら向けられてきた。その巨大企業には、ウィプロ社やインフォシス社、それにタタ・グループのタタ・コンサルタンシー・サービシーズ社などがある。しかし、タタ・ナノは、この見方が時代遅れになったことを示している。
一流の自動車メーカーになれるか
インドは中国より低賃金であり、道路や空港、それに港湾の設備も大きく後れをとっているので、製造業者の輸送コストは、中国に比べてはるかに高かった。
このような事情のほかに、労働法規に規制が多いことが、インドの製造業を立ち後れさせてきた。インドの国内総生産(GDP)に占めるサービス業の割合は半分だが、製造業のそれはわずか3分の1である。中国では、その割合が逆なのだ。
しかし、それが今や変貌しつつある。道路はついに建設されるようになり、港湾は民間の資金や管理で整備され、空港も民営化されて再建が進んでいる。
国内消費、つまり工業製品の内需が急増している結果、インドの製造業の生産高は、2006年と2007年の2年間いずれも、サービス業以上の急成長を見せている。IT産業やアウトソーシングなどのサービス業は、依然として堅調だが、技術系の卒業生への賃金が高騰しており、それが利益率を低下させている。今やインドで最大のビジネス・チャンスは、製造業にあるのだ。
来る10年間で、インドの製造業の中心は自動車産業となるだろう。世界の自動車メーカーも、こぞってインドに投資している。フォードは、タタ・ナノが発表された同月に、インドの自動車製造に5億ドルを投資すると発表し、GM、ルノー、スズキ、現代などの仲間入りをした。他の地元メーカーであるバジャージ・オート社は、設定価格3000ドルの小型車の試作品を発表し、2010年に、日産と共同で生産開始する予定だ。
中国はインドに比べ、自動車市場が、より早い段階から急成長しており、各国企業は中国へも活発に投資している。しかし、中国の地元企業が、いまだ世界水準からは遠い一方で、インドに一流の自動車メーカーが出現しようとしているのだ。
この頂点に立つのが、タタ・モーターズである。タタ・ナノの設計・製造上の成果を、決して過小評価すべきではないと思う。そのプロジェクトは、軽量アルミ製で排気量624㏄のエンジンをはじめとする、34の新案特許をもたらし、同社によれば、500人の設計者と技術者が、4年かけてタタ・ナノの開発に携わったという。
彼らは、安全基準を犠牲にせず、インドにおける排気ガスの緩い排出量基準に甘んずることなく開発を行ったが、この事実は、タタ・ナノが、真に革新的な設計と公定技術の産物であることを示している。
インドの国内市場では、マルチ社と日本のスズキが共同開発した自動車が、最大の競争相手となるが、タタ・ナノは、その半値になりそうだ。T型フォードやフィアット500と同様に、タタ・ナノは量販車として大量生産されてこそ意味があり、それにはタタ・モーターズが生産規模を拡大するため、輸出をしなければならない。
同社は、年間生産台数を、最終的に100万台に拡大することを検討中だ。今、それを実現するには時期尚早かもしれないが、経済成長が著しい多くの国、たとえばアフリカやアジア、それに中南米などの新興市場で、自動車需要が増加していることを考えると、その可能性は十分にある。
タタ・モーターズは、同年にフォードが所有する2つの英国の有名高級車ブランド、ランドローバーとジャガーの買収を行っている。その結果、超低価格車から高級車まで、自動車市場のすべての分野で競争できる、新たな自動車メーカーが、世界に突如として誕生したことになる。

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「インド巨大財閥の挑戦〜世界最安カーはこうして生まれた」 2009年8月29日 NHK BS
【語り】森山春香
世界不況のまっただ中、インド最大の企業グループ・タタ財閥がおよそ20万円という世界で最も安い自動車「ナノ」を売り出した。タタ財閥はグループ企業約100社、従業員25万人の巨大コングロマリット。近年はコーラスやジャガー・ランドローバーを買収して世界を驚かせた。激安車「ナノ」は、インド国内での新たな市場開拓とヨーロッパでの発売も視野に入れた戦略が練られている。世界不況に挑むインド巨大財閥の挑戦を追う。
http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=303&date=2009-08-29&ch=11&eid=31883
タタ・ナノ  Google 画像検索
http://images.google.co.jp/images?sourceid=navclient&hl=ja&rlz=1T4GZAZ_jaJP276JP276&q=%E3%82%BF%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%83%8A%E3%83%8E&um=1&ie=UTF-8&ei=8-SaSs3TJZTY7AO_s9nQBA&sa=X&oi=image_result_group&ct=title&resnum=4
どうでもいい、じじぃの日記。
8/29、深夜であったがNHK BS 「インド巨大財閥の挑戦〜世界最安カーはこうして生まれた」を観た。
夜中にトイレに行った時、時計を見たら11:30で、なんか、やってたなということを思い出し、テレビをつけたので後半の約30分しか観ていない。
ビル・エモットの本に『世界潮流の読み方』という本があって、その中で超低価格の自家用車「ナノ」のことが書かれている。
大体、その本の内容を映像化させたような感じだった。
今年の3月に発売された、世界最安値(約20万円)の超低価格の自家用車「ナノ」が爆発的に売れている。
インドの道路が悪いことと、車が多くなったことで道路がものすごい渋滞になっている。そんな中で助手席側のドアミラーが邪魔ということで取ってしまった。
インドでは今、新中間層といわれる年収10万ルピー(約20万円)の人が、この「ナノ」の車を買えるようになった。
(8月31日現在のインドルピーの為替レートで1ルピー=1.9円、約2円)

10万の人々がこの車を予約しているが、抽選待ちになっている。
あるインドの家族。ここの父親。「車が当たったらどこに行きたい」。息子。「海岸」。もう一人の息子へ。「お前は」。「海岸」。父親。「お前もかい」。
インドでは、みんなこんな具合に、将来を楽しみにしているんだ。
映像で「ナノ」の車の衝撃実験をやっていた。かなり、品質管理を徹底しているようだ。
ラタン・タタ会長が出てきた。「企業の社会的責任」に7つの原則というのがあって、第一に「お客さんをまず大切に」というのがある。なんか、日本の会社のスローガンを聞いているようだった。
スイスのジュネーブのモーターショーに、このタタ・モーターズの超低価格の自家用車「ナノ」が出展されていた。
この映像を観て、中国を思い出した。中国も同じようなものなのだろうか。
話は変わるが
8月13日、BSフジ プライムニュースを観ていて、番組の最初にネイチャーに「インド北部の地下水が急に減っている」が載っているというニュースが入り、その解説があった。
http://d.hatena.ne.jp/cool-hira/20090814/1250219365
中国では上海の沿岸部と内陸部の格差がいちじるしいとか、インドでは、こんな綿栽培で環境がいちじるしく変わっている。
もうすぐ、アジアでナンバー1、2になるであろう国。
日本では、昨日、衆議院議員総選挙があり、民主党が圧勝した。