じじぃの「家畜人ヤプー」論

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2009年1月15日(木) 東京新聞(夕刊) 大波小波
沼正三が昨年11月に82歳で亡くなっていた。
そのことを『新潮』二月号の康芳夫家畜人ヤプー』秘話で知らされた。
ただし、ここで言う「沼正三」とは、かって沼正三代理人を名乗った、元・新潮社校閲部員の天野哲夫のことである。
康芳夫は、天野哲夫沼正三という前提で『家畜人ヤプー』秘話を沼正三への追悼文としているが、これにはいささか疑問がある。
というのは、嵐山光三郎団鬼六など、天野哲夫沼正三のニセモノと批判する作家も多いし、また、本人が明確に否認しているとはいえ、元東京高裁判事の倉田卓次氏が『家畜人ヤプー』の真の作者だという説もいまだに根強いからだ。
細かい論証は省くが、1972年に出た角川文庫版までが倉田氏による正篇で、それ以降の部分が天野哲夫による続編だという推理がいちばん妥当ではないだろうか。
文学史には『薔薇物語』のように、正篇を継いでそれより長い続篇を書いた共同執筆の例もあるのだから、『家畜人ヤプー』がその方式で執筆されたとしても、作品の価値に変化はないはずだ。
倉田氏の否認と天野の死によって謎はついに封じられたわけだが。

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家畜人ヤプー ウィキペディア(Wikipedia)より
家畜人ヤプー』は、1956年より『奇譚クラブ』に連載され、その後断続的に多誌に発表された沼正三の長編SF・SM小説。
なお、本作品はマゾヒズムや汚物愛好、人体改造を含むグロテスクな描写を含む。
連載から出版
奇譚クラブ』連載時から、この極めて異色な存在は当時の文学者・知識人の間で話題となっていた。そのきっかけは、第一発見者ともいうべき三島由紀夫がこの作品に極度にほれ込み、盛んに多くの人々に紹介したことによる。三島のみならず渋沢龍彦寺山修司らの賞賛もあり、文学界では知名度の高い作品となった。
奇譚クラブ』誌上での連載を終えて、誌上の都合で掲載できなかった部分などの作者による加筆の後、単行本出版が計画されたが、1960年代当時の世相背景では右翼・左翼両陣営からの強い反発が予想されたため、出版は難航した。
ストーリー
婚約したカップルである日本人青年留学生麟一郎とドイツ人女性クララは、ドイツの山中で未来帝国EHS人ポーリーンが乗った未来世界の円盤の墜落事故に巻き込まれる。それがきっかけでクララと麟一郎は未来世界へ招待されることとなる。
未来帝国EHS(イース = 百太陽帝国、またの名を大英宇宙帝国)は、白色人種の「人間」と隷属する黒色人種の半人間「黒奴」と旧日本人である家畜「ヤプー」の3色の厳然たる差別の帝国である(なお日本人以外の黄色人種は未来世界において滅亡している。日本人の人間性は否定され、類人猿の一種とされている)。
ヤプーに対しては、EHSの支配機構は抵抗するものを屈服させるのではなく、予め奉仕する喜びを教え込み服従を喜びのうちにさせる仕組みである。黒奴に対しては、巧妙な支配機構により大規模な抵抗運動は行えないようになっており、小規模の散発的抵抗がまれにあるだけである。黒奴の寿命は30年ほどで、白人の200年より短い。
また、EHSでは女が男を支配し、男女の役割は逆転していた。女権主義の帝国である。EHSの帝位は女系の女子により引き継がれ、男性は私有財産を持つことすら禁止され、政治や軍事は女性のすることで、男性は化粧に何時間も費やす。EHSではSEXにおいても騎乗位が正常位とされるほど徹底している。
そして、家畜である日本人「ヤプー」たちは家畜であるがゆえに、品種改良のための近親交配や、肉体改造などを受けており、「ヤプー」は知性ある動物・家畜として飼育され、肉便器「セッチン」など様々な用途の道具(生体家具)や畜人馬などの家畜、その他数限りない方法により、食用から愛玩動物に至るまで便利に用いられている。白人たちの出産さえも子宮畜(ヤプム)に肩代わりさせているほどである。
さらに、日本民族が元々EHS貴族であるアンナ・テラスにより、タイムマシンの利用によって日本列島に放たれた「ヤプー」の末裔であること、日本神話の本来の物語の暴露、これに基づく日本の各種古典の解釈が行われる。
日本人青年麟一郎とドイツ人女性クララのカップルが空飛ぶ円盤に遭遇したため、このような未来世界へいざなわれた。二人は未来世界で様々な体験をする。クララは貴族として迎えられ、EHSの事物を満喫する。麟一郎は心身を改造され、凄まじい葛藤を経て、自らクララの家畜として生まれ変わる。その間わずか一日であった。

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どうでもいい、じじぃの日記。
沼正三著 『家畜人ヤプー』を読んだのは今から約35年前だった。
家畜人ヤプー」は白人女性が支配する未来の帝国で日本人男性が家畜として使役されるSF・SM小説である。
当時、三島由紀夫寺山修司がこの本を絶賛したことで読んだのだが、面白くて徹夜で読んだ。
この小説はSM系の用語だらけなのだが、自分の知らない世界を覗く、怖いもの見たさで興奮して読んだものだった。
日本が太平洋戦争で敗れ、知識人の間で白人コンプレックスがあり、欧米の文化を知ったかぶりするのが偉いという風潮の時に、この小説が出た。
この小説を書いたと言われる天野哲夫氏が亡くなっていたことが新聞に載っていた。
この『家畜人ヤプー』の著者は元東京高裁判事の倉田卓次氏だという説があるが、作家である天野哲夫氏が沼正三ペンネームで書いたのだろう。
いずれにせよ、これを書いた作者には戦争に負けた、そのときの白人に対する恨みや恐れがあって、この作品を作ったのではないか。
この『家畜人ヤプー』は戦後の小説を代表する一つだろう。
この本を読んで逆に日本人の優秀さを知ったのであった。