じじぃの「カオス・地球_297_日本がウクライナになる日・第5章・迷える中国は?」

【豊島晋作】拡大する中国「デジタル人民元」の影響力!各国が模索する通貨のデジタル化【セカイ経済】(2023年8月1日)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=odR1VRyI-nY

ドル覇権に挑戦する人民元


ドル覇権に挑戦する人民元 ―世界秩序の変動と日本の対応

2023年8月8日 一般社団法人平和政策研究所
【執筆者】眞田幸光(愛知淑徳大学教授)
1.ドル覇権の揺らぎ
ここ数年間の国際情勢の大きな変化は、コロナ禍とウクライナ戦争によって起きたと思う。
現行の世界秩序は、その価値判断は別にして、英米の秩序を標準として成り立っている。つまり、英語(言語)、米ドル(通貨)、英米法(法律)、ISO(モノ作り基準)、英米会計基準など、ビジネスに必要な基本的標準は英米の基準で成り立っている。ところが、この英米の基準が「今後崩れていくかもしれない」という声が(国際マーケットの世界で)じわじわと高まりつつある。
https://ippjapan.org/archives/7841

『日本がウクライナになる日』

河東哲夫/著 CCCメディアハウス 2022年発行

プロパガンダにだまされるな。「プーチン=悪、ゼレンスキー=善」という単純な見方でウクライナ危機の深層は分かりません。外交官・作家としてソ連・ロシア観察50年の実感から書いた、歴史・軍事・地政学に基づくロシア・ウクライナ関係の多角的分析。

第5章 戦争で世界はどうなる?――国際関係のバランスが変わる時 より

迷える中国は?

ロシアとウクライナ、両方とも大事
中国は今回の宇露で、ふらついている「ロシアがこれだけ世界の孤児になると、中国一国だけではとてもアメリカに立ち向かえない。ロシアはこれから中国にとって余計な負担になるかもしれない。ロシアのせいで自分も世界経済の中で干されたら、国内が大騒ぎになって権力がもたない」と思っているからだ。

それに、中国は今回、ロシアの肩を持ってウクライナを敵に回すことはできない。なぜならば、中国は緊密な経済関係を築いており、トウモロコシなど穀物の輸入先としてウクライナは1、2位の位置にあるからだ。そしてウクライナは実は軍事技術の宝庫で、中国はカネのないウクライナの弱みにつけこんで、ずっとこの技術を吸収し続けている。既に言ったように、ソ連時代のウクライナは、アメリカを狙う長距離核ミサイルSS-18を製造できる唯一の企業を持っていたし、軍艦のタービン・エンジン、ヘリコプターのエンジンも独占供給していた。

それにロシアはアメリカに対抗するため、中国と準同盟関係にあっても、このごろは最先端の技術は出したがらない。4千キロメートルもの国境線を境にして、旧満州部分だけでも人口はロシア極東部の20倍、経済力ではそれをはるかに超える中国である。ロシアはその存在を怖がっているのだ。
    ・
宇露戦争でロシアを非難した、国連総会緊急特別会合での決議に、中国は反対することなく棄権した(2014年クリミア併合無効の決議でも棄権している)。西側の制裁で旅客機の部分が入手できなくなったロシアが中国にこれを頼んできた時には拒絶している。部品は中国がエアバス(ヨーロッパの航空宇宙機器製造会社)のライセンスで製造しているのだ。これをロシアに提供すれば、西側の制裁の抜け道になってしまう。そうすれば、中国は西側から制裁を食らう。

また、ウクライナでの戦況が思わしくなくなったロシアが、中国にドローンなどの供与を頼んできた時にも、アメリカの圧力を受けて、供与の決定を引き延ばしている。

制裁で、ロシアが世界経済の孤児にさらされたのを、中国はじっと見ている。今回ロシアを助けたら、中国もアメリカに制裁を食らいかねない。今年の秋には共産党の党大会がある。習近平が終身の指導者になるのを決めようという時に、なけなしの経済をさらに悪くするわけにはいかないのだ。

何千年もの、血で血を洗う抗争を経てきた中国には、冷酷な格言がある。それは、「水に落ちた犬は叩け」というもの。今回ロシアは、世界の孤児扱いになる。それを助けるのは大変な負担だ。もともとアメリカに対抗するためにロシアを引き込んでいたのだ。力になるどころか、しがみつかれては叩きたくもなる、というものだ。

自他とともに過大評価の中国
中国の力は、中国自身、そして世界中が過大評価している。過大評価することで、中国自身、そして世界中の国々の外交政策がおかしなことになっている。

中国の現在の力は、2000年代以降の経済の大躍進に基礎を置いている。この大躍進は、19世紀後半、ヨーロッパからの大量の移民と賃金の流入産業革命の同時進行で、アメリカが一農業国から超大国に変身を遂げた時によく似ている。

ただ、中国の躍進は、19世紀後半のアメリカに比べて、足腰に問題を抱える。大企業の多くは国営で、社会保障負担の多くを担っていたり、数年で転出する共産党幹部に経営をかき回されたりして、敏捷性が足りない。現代の製造業のコメとも言える半導体では、金額ベースで85%ほどを外国からの輸入に依存している。自分で設計できても、微細な加工ができる製造機械、そして高品質の素材製造技術は米日欧の企業が独占していて、これの対中・対露輸出は法律で禁止されている。

ドル支配の世界に終止符は打てない
そして中国政府は近年、毎年60兆円を超える財政赤字を続けていて、これを国債を発酵してまかなっている。その中で、外国人が保有する中国国債が増えている。これは中国政府の負債なので、人民元が暴落した時、人民銀行が介入用に使える外貨が実は足りないということだ。外貨準備から上記の負債分などを引くと、外貨準備の規模は公表されている300兆円強から50兆円程度にまで大減りしてしまう。

中国政府は、近く「デジタル人民元を発行すると、もう何年も言っている。「これで米国ドルの世界支配は終わり」という呼び声が高いのだが、そうはならない。デジタルと言うが、既に中国での取り引きは、細かいものまでスマホ、つまりデジタルで決済がされるようになっている。そこを敢えてわざわざ「デジタル人民元」と呼ぶからには、何か違いがないとおかしい。

ところが違いをつけようとすると、いろいろ問題が起こる。「デジタル人民元」は、中央銀行であるところの人民銀行が独占的に発行するものなのだが、全国の資金需要をそれで満たすことができるのだろうか。特に、各地方での融資をやってきた他の国営・民間銀行の仕事を、人民銀行だけでこなせるだろうか。

そして、デジタル人民元にしたから他の通貨との交換が自由にできるかと言ったら、そうではない。これまでと同じで、資本取引では自由な交換は認められないだろう。だとすると、「世界の基軸通貨」などにはなりえない。その他、いろいろ理由はあるが「デジタル人民元」というのは、眉唾ではないかと思うのだ。

というわけで、結局のところ世界では、製造業も金融業もその他も満遍なく強い経済、しかも交換自由で使い勝手のいい通貨ドルを持つアメリカが、ナンバーワンの地位を続けていくだろう。心地いいものではないが、人のものを力ずくで取り上げていくロシアや中国よりは、ぜんぜんましだ。アメリカには変な人間も多いが、基本的には自由で民主的。

中国がアメリカをしのぐ日は来ない。国際政治、世界経済、そして外交を考える場合には、このことを念頭に置くべきだろう。

じじぃの「集団思考・アビリーンのパラドックス!逆説の雑学」

【ゆっくり解説】アビリーンのパラドックス 日本社会はなぜ息苦しいのか! 誰も望まない結果になってしまうのか?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=4eZAzdC3UMU

アビリーンのパラドックス


アビリーンのパラドックス

2023.10.29 ぐぬぬの法則
アビリーンのパラドックス(Abilene paradox)とは、集団が何かをしようとするとき、その集団に所属するメンバー各々が望んでいないことを決定してしまう現象のこと。
https://gunu.jp/2023/08/20/%E3%82%A2%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%89%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/

『絵解きパラドックス

高橋昌一郎/監修 Newton別冊 2014年発行

合理性のパラドックス アビリーンのパラドックス より

誰も望んでいない方向に、集団が進むことがある!?
ある日、家族4人が夕食を終えて居間でくつろいでいると、娘がこういった。「ねぇ、明日からの連休、久しぶりに家族で温泉旅行にでもいかない?」。

息子はこう思った。「突然何をいいだすんだ。連休は友達とサッカーを約束しているし、今さら断るのも面倒だ」。

しかし母はこういった。「いいアイデアだね。いきましょうよ。ねぇ、お父さん」。
父もこういう。「そうだね、たまにはみんなで旅行もいいかもな」。
息子はこう思う。「みんなが行きたいなら仕方ない。行くことにしよう」。

翌日、家族4分は車で温泉旅行に出かけた。しかし、宿も料理も料金の割にはいまいちだった。さらに、帰省ラッシュで、行きも帰りも大渋滞に巻き込まれた。疲れ果てて4人が帰宅したのは連休最終日の深夜だった。

長時間ドライブでぐったりしている父が、重い口を開いてこういった。「連休は近場で釣りでもしようと思ってたんだよな…」。
母もいう。「私だってデパートのセールにいきたかったわ。みんなが温泉に行きたいのだと思って賛成したのよ」。
「僕だって、友達とサッカーするつもりだったんだ」と息子。
さらに娘も「実は私も友達と遊園地に行く計画があったけど、たまにはお母さんも家事から解放されたいかなと思って提案しただけだったのよ…」といった。

つまりこういうことだ。誰一人として温泉旅行に行きたくなかったのに、思いやりのある(あるいは事なかれ主義の)4人は、時間もお金も消耗して、結果的に温泉旅行に行ってしまったのである。このように、集団が集団の構成員の意思とはまったく別方向へみちびかれることがあるのだ。

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じじぃの日記。

Newton別冊『絵解きパラドックス』という本に、「アビリーンのパラドックス」があった。

アビリーンのパラドックス

ウィキペディアWikipedia) より
アビリーンのパラドックス(Abilene paradox)とは、ある集団がある行動をするのに際し、その構成員の実際の嗜好とは異なる決定をする状況をあらわすパラドックスである。

【関連項目】
・全会一致の幻想・・・集団思考において、グループの結束を乱したくないという感情からくる全会一致の状況が作られていくこと。
・投票の逆理・・・恣意的に候補者を2人に絞って投票を行い、その勝者と残る1人を競わせることで決着はつくが、投票の手続きによって勝者が異なってしまう。
ゲリマンダー・・・選挙において特定の政党や候補者に有利なように選挙区を区割りすることをいう。
デュヴェルジェの法則・・・選挙において候補者数が次第に収束していくとする法則。
・ろばを売りに行く親子・・・イソップ寓話。いちいち考えないと行動に移せないこと。
・場の空気・・・日本における、その場の様子や社会的雰囲気を表す言葉。
・部屋の中の象・・・部屋の中に大きな象がいれば、その存在は明らかだ。それなのに象がいると口に出すことを、皆があえて避けている状況を指す。
・自己検閲・・・嘘つきのパラドックス
・斉一性の原理・・・ある特定の集団が集団の内部において異論や反論などの存在を許容せずにある特定の方向に進んでいくことを示す。
・集団決定・・・影響力の強い人の意見がグループを支配し集団合意が形成されてしまうこと。
・同調現象 - 同調圧力・・・無意識に自分の考えや行動を、周囲に合わせて同調してしまうこと。
集団自殺 - 集団自決・・・寛容が自らを守るために不寛容に対して不寛容になるのは「寛容の自殺」でしかない。
沈黙の螺旋・・・同調を求める社会的圧力によって少数派が沈黙を余儀なくされていくこと。
・事大主義・・・明確な信念がなく、強いものや風潮に迎合することにより、自己実現を目指すこと。
合成の誤謬・・・ミクロの視点では正しいことでも、それが合成されたマクロ(集計量)の世界では、必ずしも意図しない結果が生じること。
   
昔、こんなことを書いた気がするなあ。
まっ、いいか。 (^^::

じじぃの「カオス・地球_296_日本がウクライナになる日・第4章・ウクライナ侵攻による審判」

プーチン大統領 自信を表明 ロシア経済崩壊「現実とならない」【モーサテ】(2023年5月25日)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=0P4PTfyAvrU


ロシアの信用不安が急拡大 国際決済網排除の制裁影響 ルーブルは暴落

2022/3/1 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/o/883769/

『日本がウクライナになる日』

河東哲夫/著 CCCメディアハウス 2022年発行

プロパガンダにだまされるな。「プーチン=悪、ゼレンスキー=善」という単純な見方でウクライナ危機の深層は分かりません。外交官・作家としてソ連・ロシア観察50年の実感から書いた、歴史・軍事・地政学に基づくロシア・ウクライナ関係の多角的分析。

第4章 ロシアは頭じゃわからない――改革不能の経済と社会 より

自由・民主主義は混乱への道

1991年ソ連崩壊後後の30年間、モスクワの雰囲気はめまぐるしい変わってきた。当初、何でも統制の社会のタガが外れて、何でもありの混沌・混乱状態となったのが、原油価格上昇のおかげで次第に落ち着き、街は西側に近いしゃれた感じになっていく。「幸せになったソ連」。僕は当時のロシアをそう形容したものだ。

なぜソ連かと言うと、消費生活は見違えるほど良くなったが、統制の方はまた見違えるほど復活してきたからだ。話は少し戻るが、その過程を述べてみたい。
    ・
このようなプーチノミクスは目覚ましい成果を上げた……ように見えた。

エリツィンから政権を引き継いだ2000年は、まだソ連崩壊と1998年のデフォルトの傷跡が生々しく、既に言ったように給料遅配、企業間の現物決済=物々交換は収まっていなかった。2000年のGDPはわずか2600億ドル程度しかなかったのである。ところがリーマン・ショック前の2007年にはGDPは1兆3000億ドル、つまり7年で5倍になり、まさに中国を上回る世界史上の一大奇蹟(手品)を成し遂げる。平均賃金も2000年から2013年の間に5倍になり、プーチンの支持率を高止まりさせる。

消費生活は、別天地であるかのように良くなった。きらびやかで広大なショッピング・センターから、都心・鴎外のそこそこに点在する市場、小型のスーパーまで。所得水準に応じて何でも買える。スマホでタクシーを呼べば数分でやってくる。地図検索もネットでできるから、会合の場所にもすぐたどりつける。電子書籍も普及したし、寿司さえも24時間のデリバリー・サービスがある時代。

だが、国民は知っていた。これが脆い繁栄であることを。僕はある時、タクシーの運転手に聞いてみた。「プーチン大統領、すごいね。あんた、収入何倍にもなっただろう」と。すると運転手は前を向いたまま、こともなげに答える。
「まあね。でも石油の値段がこんなに上がれば、誰だってこんなことできるさ」

ウクライナ侵攻による審判――「ここでもやっていけるはず」だったのに

今、プーチンは正念場にある。「プーチンの繁栄」を支えてきた柱を自ら崩したからだ。2014年3月のクリミア併合は、西側の経済制裁を呼び、それもあってロシア人の可処分所得は5年以上、概ね右肩下がりとなった。経済は停滞し、社会も停滞する。

ロシアの若者は、20年前には企業をめざす者が多かったが、その頃にはビジネス・スクールの学生でさえ大多数の者が「給料が高くてあまり働かなくてもよい」国営企業への就職を希望する状況となっていた。

モスクワを歩いていると悪いことも目についた。ソ連時代からのインフラや建物のメンテナンスが悪く、ソ連崩壊後のがさがさして貧しい感じが残っている。そしてヨーロッパ風の瀟洒(しょうしゃ)な店で買い物をしている連中とそこで警備員をしているような人たちの間の格差ががひどい。

今度のウクライナ侵攻に対する西側の制裁は本格的で、ロシアの富の根幹である原油天然ガスの価値を奪い、ルーブルを大きく減価させただけでなく、ドルでの取り引きを禁じることで、ロシアを世界経済からほぼ切り離した。

プーチンはロシアの経済回復という自分の(石油価格の)功績を濫用し過ぎて西側の決定的反発を招き、ロシア社会をも敵に回す瀬戸際にある。

毎年ロシアのビジネス・スクールで教えていた頃、25名ほどの学生の中には必ず3名くらい、ロシアの経済を変えたい、意味のある人生を送りたいと思っている者がいた。
    ・
そんなエリートでなくても、健全なビジネス・マインドがずいぶん新党してきたなと思う時があった。2015年3月、僕はモスクワでタクシーに乗った。運転手は50がらみの実直そうな風采のあがらない男。

「俺、事業やってたんだ。ゴミからポリプロピレンを再生する事業で、共同経営者の1人。40人雇ってた。いい事業で、環境にやさしいんだ。でも工場が火事で駄目になった。銀行融資? 借りてたら、(金利が高すぎて)すぐ駄目になっただろうよ。税金は透明だった。パソコンで納税できるようになったしな。ものづくりは、ロシア人の夢なんだ。石油を掘って、売った代金で何かを輸入して売って稼ぐ。こんなんでやっていけないことは、子供でもわかる。あんたここの大学で教えてるって? 学生は外国に出たがってるかい? そうでもない? そうだろう。ここでもやっていけることがわかってきたんだ」

……「ここでもやっていける」、これは本当に希望を与えてくれる言葉だった。でも、ウクライナ侵略はすべてを元の木阿弥にした。プーチンはロシアの未来を破壊した。

じじぃの「数学脳・アシュケナージ系ユダヤ人に多い自閉症?共感の雑学」

Ashkenazi Jews (From Wikipedia


Why is the IQ of Ashkenazi Jews so High?

Scientific Factors that Influence Intelligence is a compelling, meticulous observation of 150+ situations and substances that heighten or cripple the brain.
Applying the myriad elements to three disparate cultures - Ashkenazi Jew, Confucian East Asian, and Sub-Saharan African - the author reveals how the factors critically impact cognitive development.
https://www.amazon.com/Why-IQ-Ashkenazi-Jews-High-ebook/dp/B00JTN4JL0

究極の自由は破滅の道へつながっている

2024年3月21日 ピノ
「テクノ・リバタリアン」(橘玲著 文春新書)を読みました。

テクノ・リバタリアンとはイーロン・マスク、ピーター・ティール、サム・アルトマンなどの数学やコンピューターの天才(ギフテッド)たちがSFの世界を現実化しようとしている、彼らのことをテクノ・リバタリアンといいます。

極めて高い論理的かつ数学的な能力を持つ一方で、彼らは認知的共感力に乏しい自閉症です。
つまり、日常生活ではかなりの障害を持ち、人との付き合い、つまりは社交性とか共感性そういったものが欠如していると考えられます。

しかし彼らは今、莫大な富や成功を手にし、それは「高知能の呪い」として、私たち人類の運命を握っているともいえます。
https://note.com/pinokio2001a/n/n3c5afb7f18a8

『テクノ・リバタリアン―世界を変える唯一の思想』

橘玲/著 文春新書 2024年発行

PART1 マスクとティール より

自閉症の子どもが急増している理由

天才的な数学者で、ヘッジファンドルネッサンス・テクノロジーズ」の創業者として莫大な富を築いたジェームズ・サイモンズと、計量経済学者である妻なマりリン・ホーリスの間には自閉症の娘がいる。スティーブン・ホーキングには自閉症の孫がいるし、イーロン・マスクにも自閉症の子どもがいる。このような例をあげてバロン=コーエン(イギリスの発達心理学者)は、成功にはトレードオフがあると述べる。

シリコンバレーの富豪たちを見ればわかるように、高度化する知識社会では、並外れた論理・数学的知能とイノベーションの能力には巨大な価値がある。だがハイパー・システム化した脳タイプをもつ者は、「自閉症の子どもを生み出す可能性が極めて高い」のだ。

アメリカの調査では、自閉症の発症率は一般人口の1~2%だが、もっとも裕福な330家庭のうち27家庭(約8%)に自閉症の子どもがいた。MIT(マサチューセッツ工科大学)の同窓生のあいだでは、自閉症の発症割合は10%にも上ると囁(ささや)かれている。

この話を聞いたバロン=コーエンは、MITの卒業生にアンケートを送り、自閉症の子どもの割合を調べようとした。同窓会は同意したものの、MITのブランドに傷つくことを恐れた学長命令によって調査は中止になったという。

そこで代わりに、「オランダのシリコンバレー」と呼ばれ、工科大学とハイテク企業のあるアイントホーフェンを対象に調査が行なわれた。1万人あたりの自閉症の子どもの数は、人口が同規模のユトレヒトでは57人、ハーレムでは84人だったが、ハイパー・システマイザーたちが集まるアイントホーフェンでは1万人あたり229人の自閉症の子どもがいた。

これらの調査からバロン=コーエンは、自閉症の子どもが急増している理由のひとつは同類交配(アソータティブ・メイティング)だと推測している。学歴社会ではシステム化能力に恵まれた者同士が大学やハイテク企業などでますます出会いやすくなり、彼らの間に多くの子どもが誕生する。「高く調整されたシステム化メカニズムは卓越したマインドを生み出すことができるが、さらに高いレベルに達した場合に、学習障害として現われる可能性がある」のだ。

――シリコンバレーの”不都合な事実”は、ジェンダー比率が極端に男に偏っていることだが、さらに”不都合”なのは、ヨーロッパ系白人(とりわけユダヤ系)とインド系、東アジア系に人種構成が大きく偏っていることだ。
これはきわめて政治的に微妙な問題なので、本書でも触れない。

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じじぃの日記。

橘玲著『テクノ・リバタリアン』という本に、「自閉症の子どもが急増している理由」があった。

シリコンバレーの富豪たちを見ればわかるように、高度化する知識社会では、並外れた論理・数学的知能とイノベーションの能力には巨大な価値がある。だがハイパー・システム化した脳タイプをもつ者は、『自閉症の子どもを生み出す可能性が極めて高い』のだ」

「そこで代わりに、『オランダのシリコンバレー』と呼ばれ、工科大学とハイテク企業のあるアイントホーフェンを対象に調査が行なわれた。1万人あたりの自閉症の子どもの数は、人口が同規模のユトレヒトでは57人、ハーレムでは84人だったが、ハイパー・システマイザーたちが集まるアイントホーフェンでは1万人あたり229人の自閉症の子どもがいた」

「高知能の呪い」という言葉がある。

現代社会では、知能は高ければ高いほど成功のチャンスが多くなり、よいと考えられている。

だが、高すぎる知能は発達障害精神疾患のリスクと隣り合わせなのだ。

これを別の表現で例えるならば、
「莫大な富や成功はかならずしも幸福に結びつかない」

だが高すぎる知能により、他人の気持ちがわからない(共感力が弱まる)からといって、痛みを感じるわけではない。

ついでに、
イスラエルでは自閉症者の数は年ごとに増加し、特にアシュケナージユダヤ人(北欧、東欧系のユダヤ人)には精神疾患の遺伝的素因がある。

らしい。

じじぃの「カオス・地球_295_日本がウクライナになる日・第4章・プーチノミクス」

国産化を推進するチャンス」アピールも…ロシア国産車「モスクビッチ」は中国製か?(2023年1月16日)

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https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=g-g6swr3bRo

旧ソ連時代の自動車ブランド「モスクビッチ」


アングル:ロシアで中国自動車メーカー急拡大、西側撤退の穴埋める

2023年7月24日 ロイター
ロシアの首都モスクワで昨年11月、旧ソ連時代の自動車ブランド「モスクビッチ」の復活生産を祝う式典が開催された。フランスのルノーがロシア事業撤退を決めて、モスクワ市に1ルーブル(約1.6円)で売却した工場で生産されたのがモスクビッチだ。

しかし、モスクビッチ復活は、中国がロシア自動車産業で影響力を急速に高めていることも表れでもある。
生まれ変わったモスクビッチのモデル「3」は、かつての姿とは似ても似つかない流線型の4ドアSUV(スポーツタイプ多目的車)。中国の安徽江淮汽車集団(JAC)製のエンジン部品や内装を模しているのは明白だ。
https://jp.reuters.com/article/idUSKBN2Z108J/

『日本がウクライナになる日』

河東哲夫/著 CCCメディアハウス 2022年発行

プロパガンダにだまされるな。「プーチン=悪、ゼレンスキー=善」という単純な見方でウクライナ危機の深層は分かりません。外交官・作家としてソ連・ロシア観察50年の実感から書いた、歴史・軍事・地政学に基づくロシア・ウクライナ関係の多角的分析。

第4章 ロシアは頭じゃわからない――改革不能の経済と社会 より

経済立て直し作戦「プーチノミクス」

「なんちゃって民営化」とオリガークの台頭
プーチンにはユーモア感覚があった。ロシアを斜めに見ていて、その欠点をちくっとやるのである。

2011年4月、プーチン首相(当時)は実業家プロホロフに呼ばれ、彼の工場で作ったハイブリッド車に一緒に試乗した。プーチンはテレビカメラに聞こえるような声で冗談を言う。

「君、大丈夫だろうね。乗ったらばらばらになってしまうようなこと、ないよね」

プーチンの冗談は可笑しくてそのまま哀しい、ロシア製造業の後進性を象徴している。ジェームズ・ポンドの映画『007』にも、ソ連製の人工衛星が登場するが、飛行士はもう長時間地球に戻れず飲んだくれ、衛星は旧式、ガタピシして分解寸前。

それがロシア製造業のイメージ。加工技術がなっていなかった。これは先進的な工作機械を入手できなかったことが主な原因である。冷戦のため、欧米、日本が、兵器製造に転用できる先進工作機械の輸出を止めていたのである。

だからソ連の潜水艦のスクリューは雑音を出し続けたし、ジェット機のエンジンはタービンのブレードの精度に問題があって出力が弱く、寿命も短かったのである。

当時のIL62という、姿は非常に優美なジェット旅客機があり、僕も何度も乗ったが、これは離陸するまで時間がかかり、ひょっとすると羽田からモスクワまで陸上を走り続けるつもりなのかと思わせたものだ。
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ロシアの企業はソ連崩壊後、民営化されたことになぅている。しかしそれも全部ではなく、民営化されても看板の掛け替え程度「なんちゃって民営化」が多かった。

ロシア国内には国営企業の株式を大量に購入するための資本はなく、市場経済の下で働いた経験を持つ起業家や中堅幹部も皆無だった。ろくな資産価値算定も行われず、企業は政権のお友達や山師の類に二束三文で売却される。

これが、今「オリガーク」(寡占資本家)と呼ばれる者たちの由来、そのうちほとんどはプーチンによって征伐されて、彼の友人が新しいオリガークとなって陣取っている。西側専門家は「しゃにむに民営化すれば、後はすべてうまくいく」ようなことを言っていたが、それは学者の空論だったのである。
   
ロシアでは経済は政治
計画経済の経済は経済ではない。それは指令であり、官僚主義であり、政治なのだ。

資源や権限が独占されている計画経済では、ものごとを変えるのは政治力である。ソ連時代は、ものが計画遂行に必要な分しかなく、よく鉄道の貨車が不足した。シベリアの奥地で何かを作っても、それを搬出するための貨車が「今ございません」ということになるのだ。どこから強引に貨車をひっぱってくるには、モスクワの共産党中央委員会で、例えば自動車を管轄する部と鉄道を管轄する部が相談してやってもらうしかない。こうして小さな経済問題も政治の介入、つまり上からの命令がないと解決できないのである。
    ・

ソ連時代は自動車公団とか化学工業公団とかが、分野ごとにあって商談をしたから良かったが、今ではこういう公団は弱体化している。だから、今のロシアは経済案件でも政府同士で決めようとするのである。西側の政府は民間企業を代表して商談を行う権限は持っていないので、困ってしまう。

ロシアの役人、特にプーチンの権力の基盤となっている公安機関の連中は、経済とは命令で動くものだと思い込んでいる。いくら市場経済のことを頭で知っていても、心に沁みついているのは「命令」、「指令」。「市場とか自由競争とかで、ものごとがうまくいくはずがない。誰かが糸を引いているに違いない」と思い込んでいるのである。

そういうことは西側でも起きるが、ロシア人の考えは度を越えている。こういう連中が、自分は経済のことも知っている、経済のこともまかせておけ、と思っているので、傍は迷惑するのだ。

じじぃの「心の病気・ASD・人間よりもAIのほうが会話しやすい!共感の雑学」

おしゃべりAI Cotomo コンセプトムービー「帰宅篇」

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=b1X0aBEM5p8

CommU(コミュー)、Sota(ソータ)報道発表【日本科学未来館】@2015/01/20

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https://www.youtube.com/watch?v=ryAyEtYSaoU


社会的対話ロボット「CommU(コミュー)」

ヴイストン株式会社
CommU(コミュー)は、複数のロボット同士の対話を人間に見せることで、 より高度な対話感を実現することができる、新しい形態の対話ロボットです。
カメラやマイク、スピーカ、ネットワーク機能などを搭載し、IoTデバイスクラウドAIなどと高度に連携することで、あらゆるロボットサービスを提供できるプラットフォームとなっています。
https://www.vstone.co.jp/products/commu/index.html

『「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか』

林(高木)朗子/著、加藤忠史/編 ブルーバックス 2013年発行

第11章 ロボットで自閉スペクトラム症の人たちを支援する――人間にはできない早期診断・適切な支援が可能に より

学校のクラスに3~4人は発達障害の疑いがある

私は病院で自動精神医として診療に当たるとともに、ロボットを使って自閉症スペクトラム症(ASD)の人たちを支援する研究を進めています。

全国の公立小中学校の通常学級において、発達障害の疑いがある児童生徒は8.8%に上ります(文部科学省/2022年)。学校の1クラス40人に3~4人は発達障害の傾向を持つことになります。

生まれつき脳のはたらき方に違いがある発達障害には、注意欠如・多動型(ADHD)や学習障害(LD)、そしてASDが含まれます。ASDの人たちは、ほかの人と関わる対人関係や、相手の気持ちを理解したり自分の思いを伝えたりすることが苦手で、社会性やコミュニケーションに障害があります。また、興味の対象が限定的で、同じ言葉や動作を繰り返す特徴があります。
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人間よりロボットとのほうがコミュニケーションを取りやすい

ASDの人たちが苦手なことを紹介してきましたが、社会のさまざまな分野で活躍しているASDの人がたくさんいます。ある分野で天才と呼ばれるような特異な能力をASDの人が示すことはあります。たとえば、天才の代名詞ともいえるアインシュタインにもASDの傾向はあったと指摘されています。

ASDの子どもたちの社会性やコミュニケーション能力が改善すれば、その後の人生が生きやすくなり、能力も発揮しやすくなります。
しかし、社会性やコミュニケーションの障害の原因となっている脳のはたらき方の違いのメカニズムはよく分かっていません。また、それらを改善する治療薬もありません。

現在、ASDの治療の基本は、社会性やコミュニケーション能力を支援する療育(治療教育)です。しかし、人との関わりやコミュニケーションが苦手なASDの子どもたちを人間が支援することは、とても難しいという課題があります。では、どのような方法を使えばASDの人とコミュニケーションをうまく取り、支援がしやすくなるのでしょうか。

そこで、ロボットです。ロボットには、人間にそっくりなアンドロイドから、顔や姿形が単純化されたロボットまでいろいろなタイプがあります。だだし、いずれも実際の人間よりは単純化されています。また、ロボットならば表情や声のトーン、仕草も、ASDの人にとって刺激が強すぎないように設定することができます。ASDの多くの人たちにとって、人間よりもロボットのほうが、刺激が適切で表情や仕草が分かりやすいのです。また人間は感情に左右されていろいろな行動をしますが、ロボットならば同じ行動を繰り返すので、ASDの人たちは安心感を持つようです。

21世紀に入り、ASDの人たちは、実際の人間よりもロボットとコミュニケーションが取りやすいという報告が多数発表されるようになりました。そして、ASDの人たちをロボットで支援して、社会性やコミュニケーション能力を向上させる研究が行われています。

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じじぃの日記。

林(高木)朗子著『「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか』という本に、「人間よりロボットとのほうがコミュニケーションを取りやすい」があった。
   
いま音声会話型AIアプリ『Cotomo』がSNS上で話題になっている。音声で会話をできるAIはすでに数多く存在するが、『Cotomo』の何が特別なのか。

『Cotomo』を使い始めたとき、課題解決も兼ねているのか気になって、こんな質問をしてみた。

「いま日本は暑いの? 気温は何度?」

このように質問したところ「暑いよ、30度」と返って来た。現在の東京の気温は9度しかない。誤った回答だ。あくまでも会話に特化しており、課題解決はしてくれないようだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b4b47f25f673aa03c6f24dc5f4dcf8e39d46b312
   
進化したAIを「孤独対策」に生かそうする動きが高まっている。

特にひとり暮らしの男性に対し、女性の声で応答してくれる「おしゃべりAI」が話題になっている。

「共感型AI」の登場だ。

じじぃの「カオス・地球_294_日本がウクライナになる日・第3章・真珠湾攻撃?」

ミンスク議定書の後に出た覚書によって設置された緩衝地帯の地図


ドネツク民共和国、ルガンスク人民共和国の実体とは? なぜ樹立したのか?

2022年9月21日 Sputnik 日本

2014 年9月- 紛争解決のため、ロシア、欧州安全保障協力機構(OSCE)、ウクライナの代表からなるコンタクトグループが結成され、和平調停と停戦計画(ミンスク合意)に合意した。ミンスク合意を国連安全保障理事会は決議を採択し、承認。
合意の重要項目とは、ウクライナに対する地方分権改革の実施要求で、これにはドンバスへの特別な地位の付与に関する法律の採択も含まれていた。紛争解決プロセスは、ウクライナミンスク合意の政治的部分の履行を拒否したため、事実上行き詰まった。交渉はポロシェンコ政権時(2014~2019年)も、2019年からのゼレンスキー政権でも、ウクライナ側によって人為的に引き延ばされた。
https://sputniknews.jp/20220921/13022899.html

『日本がウクライナになる日』

河東哲夫/著 CCCメディアハウス 2022年発行

プロパガンダにだまされるな。「プーチン=悪、ゼレンスキー=善」という単純な見方でウクライナ危機の深層は分かりません。外交官・作家としてソ連・ロシア観察50年の実感から書いた、歴史・軍事・地政学に基づくロシア・ウクライナ関係の多角的分析。

第3章 プーチンの決断――なぜウクライナを襲ったのか より

日本にとっての満州は、プーチンにとっての東ウクライナ

戦争でやり過ぎると、後でろくなことにならない。日露戦争南満州の利権を手に入れた日本は。それを守るために満州国設立にまで突き進み、アメリカから石油禁輸の制裁を食らう。その結果、「今やらなければじり貧だ」ということで、真珠湾を襲ったのだ。

この構図、ロシアによるクリミア併合以後の展開とよく似ている。どういうことなのかと言うと……。
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2019年8月、ベルリンのCenter for East European and International Studies (ZOiS)が、ドネツ、ルガンスク両州住民の意識を電話で調査した。キエフ政府が支配する地域と親露派が支配する地域で1200名ずつに対して行なった。すると、キエフ政府が支配する地域でさえ、自分たちをウクライナ人だと意識する者は26.1%のみで、2016年の53.2%からは大きく後退していた。キエフ支配地区の住民は全般に生活に疲れていて、ウクライナでもロシアでもどっちでもいい、という感じ。一方で、親露派が支配する地域では、ロシアへの併合を望むものは18.3%しかいなかった。2016年の11.4%よりは増えてはいるものの、ロシアへの可否についての住民投票が公平に行われれば、親露派側は結局負けるのである。

だからクリミアとは違って、ドネツ、ルガンスクは、ロシアにとって満州のような存在となる。

「今やらねば、じり損」――追い込まれたプーチン真珠湾攻撃

2014年以後、いろいろなことがあった。大事なのは、親露勢力が支配する東ウクライナ(の5分の1程度)では、「住民の生活は良くなっていないし、親露勢力は汚い利権・権力争いに終始して、行政能力は皆無であるということだ。はね上がってウクライナ政府支配地域に攻勢をかけたりする者もおり、ドネツ、ルガンスクの指導者の何名かはモスクワによって「除去」されている。暗殺されたり、急死したりしているのだ。

ウクライナをめぐっては、ウクライナ政府軍・極右勢力と、親露勢力の間の押し合いの過程で、何度かの停戦合意が結ばれている。この8年間はミンスク合意」が基本文書として掲げられてきた。

ミンスク合意」は2014年の9月と2015年の2月の2回結ばれている。前者はウクライナ、ロシア、「ドネツク民共和国」、「ルガンスク人民共和国」が署名し、後者はフランスとドイツが仲介してウクライナとロシアが署名している。

ミンスク合意」の基本は、ウクライナ政府がドネツ、ルガンスク両州に高度の自治権を与えたうえで選挙を行うこと、そうすれば「違法な武装集団及び軍事装備、並びに兵士及び雇兵はウクライナの領域から撤退する」ことを定めたもの。一見良さそうに見える。しかし、ウクライナ極右はこれではドネツとルガンスクの分離独立を実質的に認めることとして抵抗を続けている。

ゼレンスキーは、2019年大統領就任直後は、ミンスク合意」の線で事態を収拾しようと考えたようだ。が、結局ミンスク合意」の改正を求める強硬路線に転じてしまった。
ウクライナ軍は2014年には10万人強しかいなかったのが、今では20万人いることになっている。アメリカやヨーロッパのNATO諸国からは、ジャヴェリンやスティンガーのような小回りのきく兵器を手に入れた。トルコ製のドローンも買った。西部のポーランド国境に近い基地では、アメリカやイギリスの将校がウクライナの将校に「近代戦のやり方」の郷愁・訓練も進めている。
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一方その半年前の2021年3月、ゼレンスキーはウクライナでは「プーチン代理人」格にあたる政治家メドヴェドチェク弾圧に乗り出していた。5月には国家反逆罪で彼を自宅拘束してしまう。

メドヴェドチェクは、プーチンに自分の娘の名付け親にもなってもらった男で、野党「生活のために」を率いて、次期総選挙では政権を取る勢いにあった人物。この頃、ロシアはウクライナとの国境方面に軍を集結し始める。アメリカのバイデン大統領はこれをなだめるために、6月、ジュネーブで首脳会談を開いたのだ。

それでも翌7月、プーチンは前記した論文「ロシア人とウクライナ人の歴史的同一性について」を発表した。当時、世界中の専門家たちは、「プーチン、何を言ってるんだ? コロナでおかしくなったか」ということで取り合わなかった。しかし、今思えばこれはプーチンの宣戦の雄たけびだったというのは先にも述べた通りだ。

「今やれば(攻撃すれば)、何とかなる。やらねば、(ロシアは)じり貧」という、プーチン真珠湾攻撃。戦前の日本と同じく、じり貧どころか、ドカ貧になってしまうかもしれないのだが。

プーチンは言う。「ウクライナの極右『ナチ』が、ロシアに歯向かうからいけないのだ」と。それは事実。しかしそういう勢力が台頭したのは、ロシアがウクライナEU加盟を止めたばかりか、2014年にはクリミア、東ウクライナを武力で制圧したからだ。