じじぃの「カオス・地球_409_46億年の地球史・第8章・アウストラロピテクス」

Lucy: Australopithecus afarensis

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=JVY4iy5QDp0

Australopithecus afarensis ‘Lucy’


Australopithecus afarensis, Lucy's species

When did Australopithecus afarensis live?
According to the fossils recovered to date, Au. afarensis lived between 3.7 and three million years ago. This means the species survived for at least 700,000 years, more than twice as long as our own species, Homo sapiens, has been around.
https://www.nhm.ac.uk/discover/australopithecus-afarensis-lucy-species.html

たった1日でわかる46億年の地球史

【目次】
プロローグ――地球学への招待状
1. 化学と地球――地球はどのように生まれたのか
2. 物質と地球――地球はどのように形成されたのか
3. 生命と地球――地球に広がる生命
4. 酸素と地球――呼吸できる空気はどこから来たのか
5. 動物と地球――大型化する生命
6. 植物と地球――植物と動物の世界
7. 災害と地球――絶滅が生命の形を変える

8. 人間と地球――地球を変える人類

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『たった1日でわかる46億年の地球史』

アンドルー・H・ノール/著 鈴木和博/訳 文響社 2023年発行

私たちの身の回りにある山や海、動植物、資源、空気や水はいったいいつ、どのように誕生したのか?
ハーバード大学の名誉教授(自然史学)で、NASAの火星探索ミッションにも参加している著者が、地球という奇跡の星の誕生から現在に至るまでを、地質学、自然史学的な視点でエキサイティングに読み解く一冊。

8. 人間と地球――地球を変える人類 より

最初の霊長類

新生代を通して、生命と環境は呼応しながら変化していく。かつての超大陸パンゲアが分裂して以来、大陸は地球規模で離れつづけている。大西洋は劇的に広がり、ロッキー山脈やアルプス山脈ヒマラヤ山脈が空高くそびえるようになった。造山運動によって風化が速まり、大気中の二酸化炭素は吸収された。プレートの移動によって海水の循環は変わった。その結果、地球は冷えはじめた。高緯度地域からヤシやワニなどの温暖な気候を好む種が消え、内陸部の森林は草原に変わりはじめた。3500万年前には、南極が氷河が覆われ始めた。

このようなダイナミックな自然環境を背景に、霊長類が陸地に広がっていった。キツネザルやメガネザルなどのサルの仲間、そして霊長類の系統樹でヒトを含む枝にあたる大型類人猿など、さまざまな種が登場した。ここで600万年前から700万年前に起きた出来事に注目しよう。このころ、地球寒冷化のベースが上がり、再び氷河期が近づいていた。アフリカでは内陸部が乾燥し、森林がまばらな林や草原に変わっていった。そしてその生息環境の変化に刺激されて、現在のチンパンジーボノボから分かれた新たな系統の大型類人猿が登場した。この新種のサルはホミニン(ヒト族)と呼ばれ、大まかに言えばチンパンジーに似ていた。体は小さめで、脳は小さく、鼻が突き出し、長い腕と細長い指をうまく使って樹上を移動していた。ただし、このホミニンには、ほかの大型類人猿と違う重要な特徴が1つあった。直立歩行できたことだ。

大型類人猿で直立できるのはヒトだけだ。下部脊椎を湾曲させて体幹をまっすぐに保つ仕組み、歩行に必要な筋肉を支えられるように変化した骨盤、頭が真上に来るように垂直に延びた首、明確なかかと、そしてアーチ型になった足の裏。人間の姿勢や運動は、そういった一連の構造的適応によって可能になった。現在のヒトにはそのような特徴が備わっており、初期のホミニンにもある程度は備わっていた。このようなヒトの祖先のことは、600万年前から700万年前の岩石に含まれる骨格片からわかっている。しかし、最高の知見をもたらしてくれたのは、エチオピアの岩石から見つかった440万年前の1つの若い女の猿人の骨だ。アルディピテクス・ラミダス、略してアルディと呼ばれる種のもので、保存状態が非常によく、ヒトとチンパンジーの共通祖先に備わっていたと思われる多くの特徴が見られる。まず、木登りが得意で、森林に暮らしていた。しかし、まばらな林でも果物などの食料を探していた。また、1世紀以上前にチャールズ・ダーウィンが提唱したように、二足歩行ができたので両手が空き、やがて道具の作製や使用など、手を別の作業に利用できるようになった。アルディやその近縁種は、二足歩行ができたことでヒトに近づいた。

アルディの時代の少し後には、新たなグループのホミニンが登場した。アウストラロピテクス属と呼ばれる猿人は、初期のホミニンに似ていたが、いくつかの点でヒトに近く進化していた。実際にどのくらいの種が存在していたのかはわからないが、これまでに10種類ほどの種が」すべてアフリカで見つかっている。アウストラロピテクス属の骨は比較的よく見つかるが、ここでも1体の骨から貴重な知見が得られた。ヒトより前のホミニンの中で、おそらくもっとも有名なのがルーシーと呼ばれる猿人だろう。エチオピアの320万年前の岩石から見つかり、当時大人気だったビートルズの曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」にちなんで名づけられた。大きさはチンパンジーやアルディと同じくらいだったが、明らかに脳は大きくなっていた。森の中を機敏に動き回っていた点も同じだが、広い腰幅、アーチ型になった足の裏、短く大きな足の指から、これまでのホミニンよりも簡単に直立歩行できたと考えられる。歯も特徴的で、臼歯が大きく、長時間の咀嚼に適していた。古人類学者は、チンパンジーやそれまでのホミニンよりも果物を食べる頻度が下がり、林で見つけた固いイモや種、葉、茎などを食べることが多かったと考えている。

ほかの2つの証拠からも、アウストラロピテクス属の生態が明らかになっている。1976年に、メアリー・リーキーがタンザニアの約370万年前の岩石から一連の足跡を発見した。男と女、そして子どもが湿った火山灰の上を通った跡が最大27メートルにわたって残り、それが灰に埋もれたものだった。生物学者が泥に残された足跡を見れば、その持ち主の歩き方を詳しく知ることができる。このタンザニアの足跡から、アウストラロピテクス属は歩行が得意で、樹上よりも地上で過ごす時間が多いこともわかった。

もう1つの証拠もすばらしい。330万年前のケニアの岩石に、既知の最古の道具が保存されていた。そこから、アウストラロピテクス属(どの種かはわからない)が大きく硬い石を割って鋭い石片を作っていたことがわかった。1957年に、イギリスの人類学者ケネス・オークリーが『道具を作る人間』(仮訳、原題:Man the Toolmaker)という有名な本を書いている。そばにある簡単な道具を使う種が存在することはわかっていたが、さまざまな目的を持つ道具を考えて作るのはヒトにしかない能力だ。ケニアで見つかった道具は単純なものだが、やがて自動車やコンピュータ、フリスビーなどにつながる進化の道筋が、人間が誕生するずっと前に始まっていたことを示している。