じじぃの「カオス・地球_370_世界はなぜ月をめざすのか・第3章・中国が狙う月の裏側」

月の表と裏はなぜ全然違うの?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=4487onLycLM

月の北極付近(かぐやからの映像)


世界初 中国の探査機が月の裏側に着陸


「かぐや」、ハイビジョンカメラ(HDTV)による世界初の月面撮影に成功!

宇宙航空研究開発機構JAXA)および日本放送協会NHK)は、2007年10月18日(日本時間、以下同様)に高度約100kmの月周回観測軌道に投入した月周回衛星「かぐや(SELENE)」から、世界初のハイビジョンによる月面撮影に成功しました。
https://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2007/1107.shtml

世界初 中国の探査機が月の裏側に着陸

2019年2月3日 朝日中高生新聞

●宇宙開発優位に進める狙い 軍も関与
中国国営新華社通信によると、嫦娥(じょうが)4号が着陸した場所は月の裏側のクレーター。着陸から約12時間後、嫦娥4号に積まれていた探査車が月面に降り、周辺を走行した。探査車の重量は約140キロ。パノラマカメラや地中レーダーなどが搭載されている。
月は常に同じ面を地球に向けて回っており、月の裏側は地球と直接交信できない。解決策として中国は昨年5月、嫦娥4号と地球の通信を中継する衛星「鵲橋(じゃっきょう)」を打ち上げた。
月の裏側は、表側と比べてクレーターによる起伏が多く、地殻も表側と比べて厚いなどなぞが多い。実際に着陸して調査することで、月の成り立ちなどについて新たな知見が得られる可能性がある。
月の北極や南極付近には、水資源があると指摘され、宇宙開発での利用を狙う各国の注目が集まっている。核融合発電の燃料となる「ヘリウム3」も埋蔵されているとされる。中国には、他国に先行して調査の実績をつくり、将来の資源獲得を優位に進めたい狙いもあるとみられる。
中国が宇宙開発に力を入れる背景には、習シー近チン平ピン国家主席が宇宙開発を国家の重点事業と位置づけていることが大きい。国民に「中国はすごい国だ」と誇りを持たせるのと同時に、海外には中国の高い技術水準をアピールする狙いがある。
https://asagaku.com/chugaku/newswatcher/14771.html

世界はなぜ月をめざすのか

【目次】
はじめに
序章 月探査のブーム、ふたたび到来!
第1章 人類の次のフロンティアは月である
第2章 今夜の月が違って見えるはなし

第3章 月がわかる「8つの地形」を見にいこう

第4章 これだけは知っておきたい「月科学の基礎知識」
第5章 「かぐや」があげた画期的な成果
第6章 月の「資源」をどう利用するか
第7章 「月以前」「月以後」のフロンティア
第8章 今後の月科学の大発見を予想する
第9章 宇宙開発における日本の役割とは
終章 月と地球と人類の未来

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『世界はなぜ月をめざすのか』

佐伯和人/著 ブルーバックス 2014年発行

アメリカのアポロ計画が終了してから40年余――その間、人類は月に行っていません。
人々のあいだにはいつしか「いまさら月になど行く必要はない」という認識さえ広まってきています。
しかし、それは月での優位を独占しようとするアメリカの広報戦略にはまっているにすぎません。
じつは世界ではいま、アメリカ、中国、ロシアなどを中心に、月の探査・開発をめぐって激しい競争が水面下で始まっています。30~40年後には、月面基地が完成するともみられているのです。

第3章 月がわかる「8つの地形」を見にいこう より

この章では、月の代表的な地形を紹介します。地形を理解すれば、月世界をよりリアルに思い浮かべられるようになるでしょう。

日本の月探査機「かぐや」には、NHKが開発したハイビジョンカメラが搭載されていました。じつは、「かぐや」の搭載機器を決めるときに、科学者の間ではハイビジョンカメラの搭載を疑問視する声が少なからずありました。ハイビジョン映像は情報量が膨大であるため、科学観測機器の搭載やデータ転送量を絞らざるをえなくなるからです。

しかし、伝送されてきたすばらしい映像の数々を見て科学者もみな搭載してよかったと思いました。美しく感動的な映像は、世界中の人々と月探査の感動を共有するツールとして有効に機能し、日本の技術力を世界にPRする効果があったと思います。

では、このハイビジョンカメラの映像を使って、月の代表的な地形をめぐるツアーに読者のみなさんをご招待しましょう。「かぐや」は高度約100kmを飛行しています。私たちがジェット機で旅をするときの飛行高度は約10kmですから、いつもより10倍高いところを飛んで遊覧飛行しているつもりになってください。一般的な科学観測カメラは、たいてい真下に近い方向を向いていますが、ハイビジョンカメラは水平方向から約20度下の角度を見ています。地形を鑑賞するにはよい確度です。

①明るく見える部分は高地
夜空に浮かぶ月をながめると、明るく見える部分と暗く見える部分の2つに分かれていることがわかります。明るい部分を「高地」、暗い部分を「海」と呼びます。海というものの、月に水の海は存在せず、海のように暗く見えるだけです。

②水のない海の景色
月の暗く滑らかに見える部分が海です。海の地域はその規模の大きさによって、大洋、海、湖、沼など、さまざまな呼び方をされていますが、月の地質を海と高地に大別する際には、すべて海に含まれます。
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海は月の地表全体の面積の約16%を占めますが、そのほとんどが表側(つねに地球に向いている側)に集中していて、裏側(地球からは見えない側)には海はほとんど存在しません。起伏が比較的少ないということは、着陸が比較的安全にできることを意味しています。アポロ計画では、事故で引き返した13号を除いて、アポロ11号から17号まで、人類を6回、月面に送り込みましたが、そのうち5回は、安全な海地域が着陸場所に選ばれています。
また、2013年12月に、中国の月着陸探査機「嫦娥3号」が中国で初めて、世界で3番目の着陸に成功しましたが、このときも海地域が選ばれました。

③クレーターはサイズも形もさまざま
月の地形でみなさんがよくご存知のものは、クレーターでしょう。クレーターは隕石によってできた円形の窪地です。月の表面は、どこもかしこもクレーターだらけです。

④切り立った――中央丘
隕石の衝突の規模が大きくなり、クレーターの直径が30kmから300kmのあたりになると、クレーターの中央に中央丘ができるようになります。

⑤月のミミズ腫れ?――リンクルリッジ
今度は、月最大の海「嵐の大洋」の上空を飛んでみましょう。溶岩で埋められた平原ところどころに、何やらミミズ腫れのような細長い盛り上がりが見えます。

⑥月の巨大なひび割れ――グラーベン
地表が縮まるときのしわがリッジなら、地表が引き伸ばされるときの割れ目がグラーベンです。日本語では「地溝」となりますが、ふつうはグラーベンと呼ばれます。

⑦水もないのにできた――蛇行谷
「○○峡」などと呼ばれる峡谷は、地球では風光明媚(ふうこうめいび)な場所が多く、観光名所になります。月にも景色のよい峡谷があります。今度は月の峡谷の上を飛んでみましょう。
中央下部に、曲がりくねった谷が伸びています。これは蛇行谷の1つであるシャープ谷です。たたし、川があるのかとのぞいてみても、水は流れていません。なぜ水のない月で、こうした谷のような地形ができたのでしょうか?
この地形は、水ではなく、マグマによってできたものと考えられています。

⑧月にもある火山地形
さきほど、クレーター状の地形のほとんどすべてが、隕石の衝突によってできたものであるといいました。しかし月には、火山によってできた火口クレーターも存在します。