じじぃの「カオス・地球_366_世界はなぜ月をめざすのか・はじめに」

【中国の野望 "宇宙強国"】中国“月裏採取”真の狙いとは 佐藤正久×寺門和×小原凡司 2024/6/12放送

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https://www.youtube.com/watch?v=9biQ1DXW514

中国の無人探査機が月の裏側で土のサンプルを採取 持ち帰れば世界初|TBS NEWS DIG

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https://www.youtube.com/watch?v=700ozKjwwHU

中国の無人月面探査機「嫦娥6号」(2024/6/4)


中国の無人探査機が月の裏側での試料採取完了 世界初の「サンプルリターン」へ

2024/6/4 産経ニュース
中国国営新華社通信は4日、中国の無人月面探査機「嫦娥(じょうが)6号」が同日、月の裏側での試料(サンプル)の採取を終えて月面から離陸したと伝えた。
予定していた軌道に入ることに成功したという。月の裏側の試料を地球に持ち帰る「サンプルリターン」に成功すれば世界初となる。

嫦娥6号の任務期間は53日間で、5月3日に中国南部の海南省で打ち上げられ、6月2日に月の裏側への着陸に成功していた。月の南極付近に位置する巨大クレーター「南極エイトケン盆地」で、ドリルなどを使って岩石などの試料を採取したとみられる。
https://www.sankei.com/article/20240604-CMPZDRT4EVKLZD5AF62KYEOV7E/

世界はなぜ月をめざすのか

【目次】

はじめに

序章 月探査のブーム、ふたたび到来!
第1章 人類の次のフロンティアは月である
第2章 今夜の月が違って見えるはなし
第3章 月がわかる「8つの地形」を見にいこう
第4章 これだけは知っておきたい「月科学の基礎知識」
第5章 「かぐや」があげた画期的な成果
第6章 月の「資源」をどう利用するか
第7章 「月以前」「月以後」のフロンティア
第8章 今後の月科学の大発見を予想する
第9章 宇宙開発における日本の役割とは
終章 月と地球と人類の未来

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『世界はなぜ月をめざすのか』

佐伯和人/著 ブルーバックス 2014年発行

アメリカのアポロ計画が終了してから40年余――その間、人類は月に行っていません。
人々のあいだにはいつしか「いまさら月になど行く必要はない」という認識さえ広まってきています。
しかし、それは月での優位を独占しようとするアメリカの広報戦略にはまっているにすぎません。
じつは世界ではいま、アメリカ、中国、ロシアなどを中心に、月の探査・開発をめぐって激しい競争が水面下で始まっています。30~40年後には、月面基地が完成するともみられているのです。

はじめに より

ほとんどの日本人は、いま「世界の多くの国々が月をめざしている」ことを知らないのだ――私がそれを思い知ったのは、2013年末のことです。

2013年12月14日、月着探査機「嫦娥(チャンア、日本語読みは「じょうが」)3号」が中国で初めて、世界で3番目の月着陸に成功し、さらに無人探査車を活動させました。私たち月科学者は、このことが日本のニュースでも大きく報道され、国民のみなさんの関心が月に向かうことを楽しみにしていました。

しかし、意外にもニュースではほとんど取り上げられず、大変がっかりしました。また、インターネット上では「中国が月着陸に成功したらしいね」「でもそんなの、アメリカのアポロ計画で50年近く前に行なわれていることじゃないか」「そうそう。いまさら月探査・付着陸なんて、大したニュースじゃないよ」といったみなさんの感想を多く目にしました。

本書を手にされているあなたも、「月探査」に対して、同じような思いを抱いているのでしょうか。だとしたら、あなたはアメリカの巧妙な広報作戦に、まんまと引っかかって、だまされているのかもしれません。巧妙な広報作戦とは何か、なぜアメリカはそんなことをするのか、それは本書の中で説明しましょう。

日本人の多くの方がご存じなく、国内では大きなニュースにもなりませんが、いまや世界は「月探査ブーム」を迎えています。それは1990年代なかばから始まり、次第に加速しているのです。
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月着陸機の周辺を実効支配したからといって、たいした問題ではないと思われるかもしれません。しかし、まったく逆で、これは大問題です。近年の月探査によって、月の開発すべき「よい場所」が次々と判明していますが、その場所はきわめて限られた面積しかないことも明らかになってきています。着陸機1機で実効支配できるエリアに、すっぽり収まってしまうような地域も存在するのです。

NASAのプレス発表が衝撃的だったのは、月を開発し、月を「支配」しようという、各国の激しいつばぜり合いが水面下ですでに始まっていることが、明らかになったためでした。つまり、世界各国は本気で月を「開発」し、月の「資源」を利用しようとしている。だからこそ月に向かっているのです(ちなみに、月の「資源」とは何かは、本書の重要なテーマです。地球における資源の考え方は、月や宇宙では通用しないのです)。

では、日本はこれから、どうすべきなのでしょうか。
それは、本書を読んで、みなさんに考えていただきたいことです。

本書は、みなさんに「日本の月探査・月開発を、そしてその先の宇宙開発を、どうするべきか」を考えていただくために、日本の次期月探査計画の策定に関わっている私が、月の科学と月探査計画の最新情報を、可能な限り開示して書き上げた本になります。
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月は宇宙の入り口であり、私たちはいま「宇宙大航海時代」の渚にいます。その「最初の寄港地」である月をどう探査・開発していくのか、日本が今から行う決断が、今後100年、200年にもわたって、日本の宇宙での立ち位置を決めると私は考えます。

「世界の大勢に、あるいはアメリカに、ついていけばいいよ」という、そんな安易な決め方をしてはいけません。むしろ、世界の月探査・月開発をリードしていくために、そうした施策を打ち出せる国になるために、みなさんに月の科学と、月の何を、どのように探査するのかについて深く知っていただきたいのです。世界をリードできる主張と技術をもつ国だけが、世界から相手にされ、国際プロジェクトにも加えてもらえる、それが月科学者としての私の実感です。

本書を読んで、月科学者が月の何に対してどきどき・わくわくしているのか、それを知って、感じてください。そして、ぜひ、日本の宇宙探査計画を左右する国民の1人となってください。いま、日本の宇宙戦略を月に向けるべきか否かの最終判断は、みなさんに託されているのです。