じじぃの「カオス・地球_351_林宏文・TSMC・第1章・インテル・CPU」

AMDIntelで明暗が分かれる展開、NVIDIAなども含めた半導体銘柄の行方は?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=xeDAKJG-AsY


あの「富岳」を超えたスパコンにも搭載!- AMD躍進の秘密は? 半導体業界激変の裏側をユニークな視点で解説

2022-10-14 AMD HEROES BUSINESS
●3分でわかるAMD躍進の理由、EPYCの進化
CPU市場で大きな存在感を示すAMD。だが、その歩みは平坦ではなく、冬の時代も長かったとものづくり太郎氏は話す。
AMDの設立は、インテルの設立から遅れること9か月後、1969年5月にスタートしました。当初はインテルとセカンドソース契約を結び、補完企業としての役割を担っていたのですが、その後、セカンドソース契約の継続が困難となったAMDは、チップの独自開発に着手。しかし、インテルの圧倒的強さのもとで、AMDは長く続く冬の時代に入りました。
ターニングポイントとなったのは、半導体受託製造企業TSMCとタッグを組んだことです」
https://biz.amd-heroes.jp/products/epyc/1517

TSMC 世界を動かすヒミツ

【目次】
はじめに――TSMCと台湾半導体産業のリアル
序章 きらめくチップアイランド

第1章 TSMCのはじまりと戦略

第2章 TSMCの経営とマネジメント
第3章 TSMCの文化とDNA
第4章 TSMCの研究開発
第5章 半導体戦争、そして台湾と日本

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TSMC 世界を動かすヒミツ』

林宏文/著、牧髙光里/訳、野嶋剛/監修 CCCメディアハウス 2024年発行

2024年の熊本工場(JASM)始動と第2工場の建設決定で、注目が高まるTSMC。創業時からTSMCの取材を続け、創業者モリス・チャンのインタビュー実績もある台湾人ジャーナリストが、超秘密主義の企業のベールを剥がす。
(以下文中の、強調印字は筆者による)

第1章 TSMCのはじまりと戦略 より

インテル対TMSC――インテルは1人で舞い、TSMCは群舞を舞う

インテルAMDアドバンスト・マイクロ・デバイセズ)とTSMC三角関数を始める前に、この3社の2022年第4四半期の財務報告について説明させていただきたい。

2022年のTSMCの純利益は2959億新台湾ドル(約100億ドル)で、前年同期比で77.84%増にも達し、2023年も引き続きの成長が見込まれる。インテルは6億6400万ドルの損失を出し、2023年の見通しも芳しくない。AMDは2100万ドルとわずかながら収益を上げ、2023年第2四半期からはパソコン分野での回復が見込まれている。

3社の財務報告をざっと比較したところ、産業全体に大転換が起きているのが透けて見える。ファウンドリーによって生まれた分業制と新しいビジネスモデルが、半導体産業の様相を猛スピードで様変わりさせているのだ。

インテルAMDTSMC」同盟を前にして市場シェアでの居場所を徐々に失い、2020年が重要な年になった。このインテルAMDの市場シェアに初めてデッドクロスが起きたからだ。インテルが販売するノートパソコン用CPUのチップのほとんどは14ナノメートルTSMCの10ナノメートルに相当)プロセス技術で生産されているが、AMDTSMCの7ナノメートルを採用したことで、パソコン市場の5割を手に入れた。インテルAMDの製品製品設計能力は拮抗しているため、理屈で考えたらここまで惨敗するはずはないのだが、プロセス技術がIC製品の機能面に与える影響が極めて大きいのである。インテルが負けたのは、当時のプロセス技術がTSMCよりかなり遅れていて、しかもその差が1.5世代、3年以上も開いていたからだった。

さらにパソコン分野でのインテルの敵はAMDだけではなかった。もう1つの強敵はアップルである。アップルはもともとインテルの大口顧客だったが、2020年にすべてのMaciPadに自社設計したチップを搭載すると発表した。そして同年11月に発売されたMaciPadに、アップルが設計したMIチップが使われた結果、処理速度がインテルバージョンの3.5倍に向上した。

インテルの次世代チップの処理速度は、1世代で10%程度しか向上しかなかったのに、MIチップの処理速度は1世代で150~200%も向上した。このMIチップの出現によって、それまで市場を独占してきたインテルが惨敗したため、これ以降、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾン、メタといった大企業も次々と、アップルのようにチップの自社設計を始めている。

インテルはアップルという上得意を失っただけでなく、「アップル+TSMC」という産業協力構造に敗れたのだった。アップルがTSMCに大量発注したことで、2020年からはアップルがTSMCの筆頭顧客となり、翌2021年にはアップルからの受注がTSMCの営業収入の26%に達した。

「顧客であるIC設計会社+TSMC」という新たなビジネスモデルは、多くの半導体製品の産業システムを変化させたが、そのなかでもパソコン産業の変化より前に起きた、もっと抜本的な変化が、2007年に巻き起こったスマートフォン革命だった。

群舞ならTSMCが一枚上手
インテル半導体トップとしての地位がTSMCに奪われた大きな理由は、モリス・チャンの言うビジネスモデルにあった。

インテルの製品はすべて自社工場で生産されていたが、製品のラインアップがあまり多くなかった。よって、旧式のプロセス技術がゆっくりと成熟したときに、生産できる製品が見つかるとは限らず、旧式のプロセスの生産能力の管理にも手を焼くことになった。だが、TSMCやUMC(聯華電子、台湾にある半導体受託製造会社)の成熟プロセスであれば、成熟プロセスを求める多くの顧客からの受注を獲得できる。しかも成熟プロセスは減価償却がすでに終わっているため、会社のお荷物どころか利益の源泉になるのである。

TSMCはアップルやエヌビディアといった世界最高の顧客を見つけて自社技術を向上させ、プロセス技術を最先端の状態に高めることができるうえ、成熟プロセスのほうも、自動車用ICや電源ICを欲しがっているような顧客を見つけて、生産能力を振り分けることができる。これが、ファウンドリーの高効率・高成長ビジネスモデルである。

モリス・チャンは以前に、エヌビディアのジェンスン・フアン(黄仁勲、こうじんくん)の言葉を引用してこう言った。TSMCは400社もの顧客と一緒に踊っているが、インテルは最初から最後まで1人で舞っているのだと。
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モリス・チャンは数年前からTSMCグランドアライアンス(台積大同盟)という概念を提唱している。これは、第二次世界大戦中に英米がドイツ・イタリア・日本の枢軸国に対抗するために結んだ連合国の概念を取り入れたものだ。今、TSMCグランドアライアンスはAMD、エヌビディア、クアルコムブロードコム、メディアテックといった古馴染みの顧客だけでなく、アップル、マイクロソフト、テスラ、アマゾン、アルファベットといったシステムメーカーや、IPベンダーのアームやEDA(電子設計自動化)ベンダー[IC設計の支援を行う]のシノプシス、ASLMのような半導体装置メーカーも包括している。分業とグランドアライアンスの協力構造を通じて、TSMC半導体産業をひっくり返すほどの力を手に入れた。

よって、TSMCインテルを破ったというよりも、TSMCグランドアライアンスが今、力を発揮していると表現したほうが正しい。勝ち組の輪は拡大を続けている。グランドアライアンスにまだ加わっていないメーカーは、孤立無援の心情を味わうことになるかもしれない。