じじぃの「カオス・地球_305_白人がマイノリティになる日・第7章・白人特権」

「反人種差別という宗教」と白人特権


白人であることの特権を理解する:日常的に得ている20の特権例

2020/06/04 Harper's BAZAAR
白人であるということで受ける恩恵と、それが構造的な人種差別の一因となっているということについて
https://www.harpersbazaar.com/jp/lifestyle/daily-life/a32762584/white-privilege-everyday-examples-200604-lift1/

白人特権

ウィキペディアWikipedia) より
白人特権(white privilege)、または白い肌の特権(white skin privilege)は、特に同じ社会的、政治的、または経済的状況下にある場合に、一部の社会で白人以外の人々よりも白人に利益をもたらす社会的特権。ヨーロッパの植民地主義帝国主義と大西洋奴隷貿易にルーツを持ち、白人の特権はさまざまな国民の市民権、およびその他の権利や特別な利益を保護することを広く求めてきた状況で発展した。

この用語は、人種差別の対象である人々への不利益ではなく、人種差別が蔓延し、白人が正常であると見なされる社会で白人が持つほとんど隠された利益に焦点を当てた議論で使用される。このように、概念のほとんどの定義と議論は、人種差別が常態化した社会で白人が無意識に「身に着けている」「見えないバックパック」のマッキントッシュのメタファーを出発点として使用されている。

                    • -

WHITESHIFT――白人がマイノリティになる日

【目次】
第1章………白人がマイノリティになる世界―ホワイトシフト
■第1部・闘争
第2章………ホワイトシフト前章アメリカ史におけるWASPから白人への転換
第3章………トランプの台頭―移民時代の民族伝統主義的ナショナリズム
第4章………英国― 英国保護区の崩壊
第5章………欧州における右派ポピュリズムの台頭
第6章………カナダ特殊論― アングロスフィアにおける右派ポピュリズム
■第2部・抑圧

第7章………左派モダニズム―一九世紀のボヘミアンから大学闘争まで

第8章………左派モダニズムと右派ポピュリストの戦い
■第3部・逃亡
第9章………避難― 白人マジョリティの地理的・社会的退却
■第4部・参加
第10章………サラダボウルか坩堝か? ―欧米における異人種間結婚
第11章……白人マジョリティの未来
第12章……「非混血の」白人は絶滅するのか?
第13章……ホワイトシフトのナビゲーション―包摂的な国の包摂的なマジョリティへ

                    • -

『WHITESHIFT――白人がマイノリティになる日』

エリック・カウフマン/著、臼井美子/訳 亜紀書房 2023年発行

白人マジョリティが徐々に、白人の伝統的文化を身につけた混血人種のマジョリティへと変容していくモデル。
英国では2100年代に混血の人々がマジョリティになると著者カウフマンは予見する。

第7章………左派モダニズム―一九世紀のボヘミアンから大学闘争まで より

「反人種差別という宗教」と白人特権

反人種差別は左派モダニズムでも最も価値の高いものとされ、ジョン・マクウォーターが「反人種差別という宗教」とまでいうほどのものになっていった。これにより、人種的不平等の縮小を目指す政策の策定という賞賛に値する目標が、人類学者スコット・アトランの言う「聖なる価値」に高められている。信奉者のコミュニティ内では、「イエスは私たちの罪を贖(あがな)うために十字架にかけられた」あるいは「西洋社会は人種差別的だ」という聖なる信条に疑問がもたれることはない。これらは、科学的方法にさらされたり実験による反証を受けたりするものとは違う次元にあるとみなされている。マクウォーターによると、この宗教には、批判の対象ではなくひれ伏すべき存在である。タナハシ・コーツのような崇拝される作家という形の大祭司が存在する。コーツの分析は、実際に精査や討論を必要とするものではなく、「かくあれかし(アーメン)」と答えるのが最もふさわしい呼びかけなのだ。これについてマクウォーターは次のように述べている。
   
  白人にとって、白人特権とはそれだけで独立した特定の集団の作用の原理だと真剣に「認める」必要性は、キリスト教徒として自己の原罪を認めることと同じ正当化に基づくものです。人は原罪を背負って生まれてきますが、白人であることは、労せずに得た特権という汚点を背負って生まれてきたということなのです。(中略)コーツは[リベラルな白人の]人々に対して、白人は罪人だと言います。(中略)そして、リベラルな白人たちは熱心にその非難に聞き入って、そう言ってくれるコーツを「崇拝」するのです。いいですか、みなさん。これこそが宗教なのです。
   
マクウォーターは、「反人種差別という宗教」は、黒人男性の誇りの文化の諸相を批判や改革から保護することによって、アメリカの黒人の進歩を妨げていると考える。アフリカ人の保守派の学者であるシュルビー・スティールは、さらに、アフリカ系アメリカ人の指導者たちには、黒人コミュニティの抱えるより差し迫った問題の解決よりも、白人による差別への抗議に力を入れる政治的・金銭的動機があると述べている。作家でコラムニストのコールマン・ヒューズによると、進歩主義者たちは人種差別の減少という紛れもない事実に対して、その減少とともに定義を拡大することで対応してきた。つまり、人種差別は「質量やエネルギーの保存と同種の保存量」、つまり、形は変えられても減らすことはできないものになったのである。

私は、アメリ政治学会の政治理論セミナーでも同様のダイナミクスが働いていたことを覚えている。その時は、カナダから来たネイティヴ・インディアンの後援者が議論に参加せず、「400年間にわたる抑圧」に関して、パネリストである世界主義の理論家ジェレミー・ウォルドロンに非難することに終始していた。
また、先住民の講演者の発表の間、主に白人から成るその聴衆は、宗教的な一体感をもって話にうなずいていた。聴衆のなかで先住民の講演者の論理に異議を唱えたのは1人しかいなかった。それはアフリカ系アメリカ人の女性で、彼女は奴隷だった自分の祖先の話をして、講演者と議論するための道徳的土台作りをした上で、ようやく意見を述べた。
マクウォーターとスティールによると、反人種差別という宗教は、人種的不平等是正のために実際的な政策を策定したいと言う欲求よりも、白人の進歩主義者たちの罪の赦しを求める象徴的な要求を満たそうとするものである。私はここに、このイデオロギーは、抑圧的な単一文化主義から、平等主義的な多文化主義への急進的な社会的変革がもたらされるという、より大きな西洋の至福の時代の到来の思想とともに広がっていくということをつけ加えたい。儀式的な面には、反人種差別の聖なる価値を支持する「美徳シグナリング」をする人々を称賛するというもののほか、移民や多文化主義にまつわるタブーを侵す人々をさらし上げることも含まれている。このシグナリングを承認するダイナミクスは、原理主義の説教師のもとに集まる大衆が、何でもない出来事のなかに悪魔や神の存在を印を見る牧師のあとに続いて、「アーメン」と唱えることと同じである。反対を受けることもないために、この恍惚感は制御不能な状況に至ることがあり、そうしてエバーグリーン州立大学で起こったような一種のモラル・パニック(白人をキャンパスから追い出す日に抗議した教授吊し上げ)につながるのである。