Populism and the Future of White Majorities
動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=Ev1Wyk5EsGY
WHITESHIFT――白人がマイノリティになる日
【目次】
第1章………白人がマイノリティになる世界―ホワイトシフト
■第1部・闘争
第2章………ホワイトシフト前章アメリカ史におけるWASPから白人への転換
第3章………トランプの台頭―移民時代の民族伝統主義的ナショナリズム
第4章………英国― 英国保護区の崩壊
第5章………欧州における右派ポピュリズムの台頭
第6章………カナダ特殊論― アングロスフィアにおける右派ポピュリズム
■第2部・抑圧
第7章………左派モダニズム―一九世紀のボヘミアンから大学闘争まで
第8章………左派モダニズムと右派ポピュリストの戦い
■第3部・逃亡
第9章………避難― 白人マジョリティの地理的・社会的退却
■第4部・参加
第10章………サラダボウルか坩堝か? ―欧米における異人種間結婚
第11章……白人マジョリティの未来
第12章……「非混血の」白人は絶滅するのか?
第13章……ホワイトシフトのナビゲーション―包摂的な国の包摂的なマジョリティへ
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『WHITESHIFT――白人がマイノリティになる日』
エリック・カウフマン/著、臼井美子/訳 亜紀書房 2023年発行
白人マジョリティが徐々に、白人の伝統的文化を身につけた混血人種のマジョリティへと変容していくモデル。
英国では2100年代に混血の人々がマジョリティになると著者カウフマンは予見する。
第1章………白人がマイノリティになる世界―ホワイトシフト より
私たちは白人のアイデンティティについて話す必要がある。権力維持のための作り話としてではなく、人々が大切にする一連の神話やシンボルとして、つまり、他のエスニック集団がもののとなんら変わらない1つのエスニック・アイデンティティとしてである。民族変化が進行中の現在、私たちが問うべき重要な問題は、「英国人であるとはどういうことなのか」ではなく、「白人の英国人であるとはどういうことなのか」ということだ。進行中の白人マジョリティの話の筋書きは、白人の消滅というハッピーエンドで終わる道徳話のようになっており、今日のポピュリストの態度の多くは、直接的あるいは間接的にこの話への反発から生まれたものである。本書ではそれを示していきたい。
だが、白人は実際に減少しつつあり、潮の満ち引きが止められないように、この人口構造の変化を食い止めることはできない。移民の流入がなくても、西洋では人種の混交が進んでいる。これは推測ではなく、多くの西洋諸国における異民族間結婚率という実際の数字で証明されている。人口推計によると、移民流入の速度が速ければ純血の人が多く生まれるため、人種の混交の進行は緩やかになるとわかっているが、それでも今から100年後には、英国やアメリカのような国では混血の人種が最大のグループとなるだろう。さらにもう200年もすれば、西洋の都市部の住人で純血の人はほとんどいなくなるはずだ。純血の人は、移民、もしくは超正統派のユダヤ人のような反社会的な宗教集団の反近代的な宗教集団の人々だけになるだろう。そう聞くと、さらに多様性の高まった未来や、ラルフ・ウォルド・エマーソンやイズレイル・ザングウィル[アメリカを「坩堝」と呼んだ作家]などの作家や「タイム」誌が予言した「新しい人間」の時代の到来が目に浮かぶかもしれない。しかし、歴史を振り返ると、未来はまったく違うものになりそうだ。というのも、多くの人々は自らのルーツを求め、伝統を重んじ、由緒ある土地に住んでいた祖先との継続性を維持したいと思うものだからである。
このことは、白人マジョリティが異民族間結婚で生まれる混血の人々を吸収することによる変化、つまり私が「ホワイトシフト」と呼ぶ変化が現実のものとなることを意味する。
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白人マジョリティの未来
「ホワイトシフト」のダイナミクスを調べた結果、私は新たな中心のための未来像を打ち出した。それには、適合した間接的な存在であるエスニック・マジョリティの真の文化的な関心の受け入れが求められる。
これにより、合理的で気取らない政治的会話の道が開かれるはずである。欧米は、大量の移民を受け入れながら、同時に文化的に中立な移民政策を維持することはできない。しかし私は、排他的な東アジアのモデルを採用すべきだと主張しているのではない。よりよい解決策は、移民の増加を求めるリベラルとマイノリティの選好と、エスニック・マジョリティの保守層の移民制限主義とのバランスをとることだ。その鍵は、マジョリティが閉鎖的ではなく開放的なエスニック集団になることである。そうすれば、その開放的なマジョリティ集団の保守的な構成員は、排斥や追放ではなく、移民の自発的な同化を通じてその割合を維持できるよう、緩やかな速度の移民の受け入れを望むことだろう。マイノリティは、国の定義したナショナル・アイデンティティへの同化を強いられるべきではない。だが、白人マジョリティのように、自らの民族意識(エス二シティ)を明確に示した独自の形の共通のナショナル・アイデンティティを自由に表現すべきである。これを可能にするのが私の言う多義主義である。
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白人はポスト・エスニックなコスモポリタンでなければならないというリベラルの自負心は、すでにその有用性を失っている。世界主義に共感を寄せる人もいれば、自らのエスニック集団との一体感の方を好む人もいる。多様性の価値を訴える純粋な積極的リベラリズムは、ポピュリスト・モーメントを生き残ることはないだろう。保守的な白人は、たとえ選挙で勝利しなくても、変化を妨げ、社会的結束を損ない、そしておそらく安全上の脅威を引き起こす立場にある。一方、世界主義的理想の推進のために国家機関や腸国家的な機関を利用するエリートは、保守層のリベラルな公的機関に対する信用を失わせている。保守的な白人には未来がなければならないし、私はほとんどの人々が開放的な形の白人マジョリティ・アイデンティティを受け入れていくと思っている。政治家は、保守的な白人の抱く不安に共感を示すべきである。ただしそれは、その不安ンガ、反ムスリムの政治活動に関して言えるような、不合理な恐怖に基づくものでない場合に限ってのことである。さらに、私たちは自発的な同化のペースに関する朗報を、もっと率直に伝える必要がある。また、移民の受け入れは、経済的に最適なペースより緩やかなペースでおこなう必要があるだろう。ただし、その結果として、より調和に満ちた社会がもたらされなければならない。これらの変化の準備がすべて整えば、西洋は、民主化や経済成長、不平等の是正、気候変動対策といった優先事項に再び集中して取り組むことができるはずである。