SCoPEx, Harvard University - New Frontiers in Climate Change Research
動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=w_qkmavwE54&t=15s
成層圏制御下摂動実験 (SCoPEx)
ビルゲイツとハーバード気候プロジェクト。 「ケムトレイル」って誰が言ったの?
1月24 2021
フォーブスによると、ビルゲイツは、地球を「冷やす」ために太陽光を暗くすることを目的としたハーバードプロジェクトに資金を提供しています。
「成層圏制御下摂動実験」と呼ばれる研究(SCoPExは英語での頭字語です)はマイクロソフトの作成者によって推進されていますが、ハーバード大学の科学者によって実施されており、地球の大気圏外の太陽光を反射することを目的としています。
https://ja.futuroprossimo.it/2021/01/bill-gates-e-il-progetto-di-harvard-per-il-clima-chi-ha-detto-scie-chimiche/
気候を操作する―温暖化対策の危険な「最終手段」
【目次】
はじめに
第1章 深刻化する気候変動
第2章 不十分な対策と気候工学の必要性
第3章 気候工学とは何か―分類と歴史
第4章 CO2除去(CDR)
第5章 地域的介入
第6章 放射改変(SRM)
第7章 放射改変の研究開発―屋外実験と技術
第8章 ガバナンス
第9章 人々は気候工学についてどう思うか
第10章 日本の役割
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『気候を操作する―温暖化対策の危険な「最終手段」』
杉山昌広/著 KADOKAWA 2021年発行
第7章 放射改変の研究開発―屋外実験と技術 より
シミュレーション向上のための実験計画
放射改変では、世界から関心を集める研究プロジェクトがあります。ハーバード大学のフランク・コイチュ教授とキース教授が進めているスコーペックス(SCoPEx)プロジェクトです。プロジェクトの名前を日本語に訳せば、「成層圏制御下摂動実験」になります。ビル・ゲイツ氏からも研究資金を受けています。
このプロジェクトは長い間議論されてきました。2014年にイギリス王立協会の紀要(学術誌)で、キース教授らが実験計画を論文として公表し、ハーバードのプロジェクトチームは徐々に準備を進めてきました。研究の目的は、非常に微量のエアロゾルを成層圏で実際に散布し、その物理的・化学的なふるまいを観測することです。非常に小規模というならば、例えば成層圏を模した環境を地上に作って実験することはできないか、と思う人がいるかもしれません。しかし、キース教授らによれば、地上の実験室で成層圏をまねると。常に、実験装置の壁があり、この壁が実験に対して悪さをするので、壁がない成層圏で実験が必要とのことです。この実験により、エアロゾルの振る舞いがより正確に分かり、気候モデルのシミュレーションを向上することができるというのがキース教授らの説明です。
小規模といっても一体どれほどの物質を散布するのでしょうか。およそ100グラムから2キログラムと言われています。これがどれだけ少ないかというと、仮に硫酸エアロゾルを使った場合、一般的な民間航空機が1分間に排出する硫黄の量より少ないとのことです。いかにこの実験の投入量が小さいか理解していただけるでしょうか。
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スコーペックス・プロジェクトは、明確に気候科学の向上、特に放射改変のリスクの理解に重きを置いているのが特徴です。この実験が成功に終わったら(少なくとも自然科学の意味で)放射改変の実現に一歩近づくというわけではありません。第5章で紹介したグレートバリアリーフの雲白化実験は、噴霧器の性能を確かめものでした。放射改変について賛否の意見が割れることから、効果より副作用やリスクを最初に研究することは合点がいきます。こうした意味でもスコーペックス・プロジェクトは先進事例といえます。
この研究プロジェクトは研究代表者の1人であるデビット・キース教授が非常に気候工学に対して強い主張をすることや、世界で最初の成層圏エアロゾル注入の実験ということでひじょうに関心を集めています。同時に、批判的な意見をもっている人が一定数いることは間違いありません。
こうした状況を踏まえて、スコーペックス・プロジェクトは非常に慎重に研究が進められており、またガバナンスのあり方にもかなり気を付けています。これについては次章で詳しく解説します。