じじぃの「カオス・地球_259_人類の終着点・AIの進化・ブラック・ジャック」

ブラック・ジャック」新作発表 手塚治虫の名作がAIで復活(2023年11月20日)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=n811iLguO10

ブラック・ジャック」 AIで挑む手塚治虫の世界


「ぱいどん」 AIで挑む手塚治虫の世界


生成AI活用の「ブラック・ジャック」新作完成、仲介AIつくりプロンプトを成形

2023.11.21 日経クロステック(xTECH)
「TEZUKA2023」プロジェクトチームは2023年11月20日、クリエーターが生成AI(人工知能)を活用して制作した漫画「ブラック・ジャック」の新作「TEZUKA2023 ブラック・ジャック 機械の心臓―Heartbeat MarkⅡ」が完成したと発表した。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/16318/

朝日新書 人類の終着点―戦争、AI、ヒューマニティの未来

【目次】
はじめに
1 戦争、ニヒリズム、耐えがたい不平等を超えて
 エマニュエル・トッド 現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている
 フランシス・フクヤマ 「歴史の終わり」から35年後 デモクラシーの現在地

2 「テクノロジー」は、世界をいかに変革するか?

 スティーブ・ロー 技術という「暴走列車」の終着駅はどこか?
 メレディス・ウィテカー×安宅和人×手塚眞 鼎談 進化し続けるAIは、人類の「福音」か「黙示録」か
3 支配者はだれか?私たちはどう生きるか?
 マルクス・ガブリエル 戦争とテクノロジーの彼岸 「人間性」の哲学
 岩間陽子×中島隆博 対談

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『人類の終着点―戦争、AI、ヒューマニティの未来』

トッド、フクヤマ、ロー、ウィテカー、ガブリエル/著 朝日新書 2024年発行

2 「テクノロジー」は、世界をいかに変革するか? より

メレディス・ウィテカー×安宅和人×手塚眞 鼎談 進化し続けるAIは、人類の「福音」か「黙示録」か

【「漫画の神様」を現代によみがえらせることができるか?】
――では、ここで話したようなことを別の側面からも見ていきましょう。ここでお話を伺いたのは、手塚眞さんです。手塚さんのお父様は「日本の現代漫画の父」であり、「漫画の神様」という異名を持つ手塚治虫さんです。
手塚治虫さんは、700タイトル、計15万ページの漫画を描き、アニメ作品を含め、国内外に大きな影響を与えました。代表作の1つが、『ブラック・ジャック』です。医師免許持つ手塚治虫が、主人公のブラック・ジャックに理想の医師像を託して、生命の尊さ、そして人間の尊厳を描きました。1989年に60歳で手塚治虫さんが亡くなってから、この『ブラック・ジャック』の新作を、AIとともに共同制作するプロジェクトが進められています。「TEZUKA2023」と名付けられたそのプロジェクトの総合ディレクターを務めていらっしゃいますのが、手塚眞さん。このAIとの共同制作はどのように進められたのですか。
   
手塚:私はAIの研究家ではありませんので、今日はアカデミックな話はできません。ただ私には、2000年代前半の頃から、多数のAI研究者といろいろ意見を交換をする機会がありました。その時に議題に上がったのが、「何とか、日本の漫画をAIで作れないだろうか」ということでした。
実は漫画は、世界中にあります。けれども、日本の漫画が、質的にも量的にも一番優れているんじゃないかな、と私は思っております。そして、日本の現代文化を代表するものだとも思っています。
ですから、この漫画文化を世界に紹介し、未来に残していくことを考えた際に、AIが関係してくるとさらなる発展も見えるのではないか、と考えるようになりました。そのような経緯もあり、AI研究者の方々と一緒に漫画の研究をし始めるようになりました。
ただ、実際には「AIが漫画を学習する」ということは、非常に難しい。漫画というのは簡単に見えますが、非常に抽象性が高く、情報量も多いからです。なので、簡単に学習することはできない。
そこで、2020年頃にこのプロジェクトが立ち上がりまして、そのとき最初に私たちが行ったことは、「漫画をいくつかの情報に分析してデータ化する」ということでした。
まずは、漫画の中からストーリーを抜き出しました。これは人間の手が必要になる作業です。これによって、たくさんの漫画からストーリーを抽出しました。
このときに使われたのが、手塚治虫の漫画です。手塚治虫は、作品数だけで700タイトルを超えると言われております。このデータの多さが、AIの学習に非常に有利になります。そして、漫画の質自体も大変高い。手塚治虫の漫画ままさに「教科書」であり、現代の漫画の見本となっている部分があります。そういった意味でも、クオリティが非常に高いものをまず学習してもらおうとしました。
さらに言うと、私自身がこの手塚治虫の作品の著作権者です。ですから、著作権的にも問題がないということもありました。それでこの共同研究を行うことができました。
まずAIに考えてもらったのは、ストーリーの部分です。2020年頃は、AIが辻褄の合うストーリーを作り出すのは大変難しかった。これに関しても、私たちは「AIが提示したいくつかのキーワードを拾い出して、新たにストーリーを組む」ということを人間の手によって行いました。
   
【AIは「人間の顔」を認識することはできるのか?】
手塚:またそれとは別に、手塚治虫のキャラクターの絵も学習させ、あらたなキャラクターを作り出そうと試みました。そのときに、1つ面白いことがありました。
小説などを作るAIもあるように、ストーリーの形は何となくできるんですが、漫画のキャラクターは、AIが学習するうえで「これは人の顔である」とはなかなか見えないというのです。私たちはイラストを見れば、即座に「これは漫画のキャラクターだ」とわからせるのですが、AIには「ただの白と黒の模様」に過ぎません。なので、この部分はなかなかうまくいきませんでした。
そこで作ったのが、人間の写実的な顔を学習したAIに対して、「転移学習」という形でさらに手塚治虫のキャラクターの顔を学習させるという方法です。その結果はずいぶん良いものでした。こういう手順を一つ一つ踏んでいった結果、AIは手塚治虫の描いたような漫画の顔をいくつも作り出すことができました。
次のページ(画像参照、「ぱいどん」)に写真を掲載した漫画の登場人物の顔は、AIが生成したものです。これは手塚治虫が描いたものではありませんが、手塚治虫が描いたようなタッチで新しい主人公を生成することができました。そして、それを使って人間が漫画を作ったのです。
急速にAIが進歩してきた2023年、さらにその先を目指して、『ブラック・ジャック』をAIで生成することに挑戦しました。これも基本的には、今までの作り方と同じです。まず物語をAIで生成します。そのために『ブラック・ジャック』の200話を超える物語を文章化して学習させました。そして、それを学習させる際にも、物語構造というものを分析して学習させています。ただのひと続きの文章ではなく、「どういう構造によってこの物語が成立しているか」をかなり細かく検証したうえで、データ化してAIに与えました。そして、キャラクターの絵のほうには、いろいろな新しい画像生成AIもあります。このあたりは格段に進歩いたしましたので、手塚治虫そっくりの絵を作り出すことは、以前ほど問題ではなくなっています。
ただ、もう1つの課題がありました。それは、ページ作りに関する問題です。手塚治虫の漫画が持っている大きな特徴は「ページをどうデザインして作るか」というところにもあります。一つ一つのコマの大きさ、形……。これらは、手塚治虫の発想に従って作られているので、すべてが違っています。一定の大きさのコマが並んでいるわけではありません。ですから、これは非常に学習が難しいのです。ストーリーに応じたページのデザインは、簡単に学習できるものではありません。そもそもデータ化が非常に難しいのです。
私の本業は映画監督です。なので、私の普段の仕事は「演出」なのです。この演出というのは、一番データ化しにくい部分です。言葉でいろいろとスタッフや俳優に指示を出しますが、その言葉を並べたところで一定の法則はなく、データにはなりません。それと同じで、手塚治虫も自分の漫画を演出しているのです。そして、この演出の部分は非常にデータ化しにくい。だから、そのままの手塚治虫の漫画を生成するということは、非常に難しいというのが現状です。
なので、私たちが目指しているのは、作り出された物語、そして作り出されたキャラクターを合成することで、新しい『ブラック・ジャック』を作ろうと試みています。